お布施 2

最低山極悪寺 珍宝院釈法伝

 寺院経済の実態から、お布施の最低額を積算してみる。

 まず、モデルにする寺院は、最小規模のものとする。具体的には、個人住宅に20〜30畳の本堂ないしは集会所が加わったような規模である。簡単な炊事場とトイレくらいは付いているものとする。この程度の寺院でも、年間の維持費は約300万円ほどになる。内訳は、本山への上納金、光熱水費、交通費、営繕費、事務費、などである。

 次に住職の年収は500万円程度とする。年収500万円というのは、おおむね、給与所得者の平均所得だろう。某氏に尋ねたところ、大型のコンクリートミキサー車のドライバーが、この程度の年収になるらしい。これに、住職を補佐する者1名(浄土真宗の場合は妻=坊守の場合が多いだろうが、他宗の場合は、小僧?)の年収を200万円程度とする。地域格差もあるだろうが、夫婦共稼ぎで700万円はそれほど法外な額ではないはずだ。

 以上を合計すると、最小規模の寺院で、住職他1名が平均的な所得を得る場合、年間、約1000万円が必要だということになる。

   必要収入   = 寺院維持費 + 住職所得  + 他1名の所得

  1000万円  = 300万円 + 500万円 + 200万円

 さて、この1000万円を負担する檀家数だが、浄土真宗の場合、適正檀家数は、およそ150軒程度である。200軒になると、法事が土曜日曜祭日に行われることが多いので、住職が法事をこなすのに精一杯で、良好な寺檀関係は期待できない。単純計算すれば、檀家1軒あたり、年間約7万円の負担ということになる。もちろん、これには、宗派や寺が臨時に行う寄付は含まれていない。

 ここで、150軒程度の檀家がある場合、住職は、どのくらいお参りに行くかを考えてみる。一つの家庭で世代交代が起こるのは、20年から30年に1度である。つまり、約25年間に2回の葬式が発生する。檀家数150軒の場合、年間の葬式の回数は、25軒で2回だから、12件である。年忌は、33年間に16回あるので、年間約90件になる。祥月命日は、年間300件だが、その内、90件は年忌になるので、210件である。これに、盆参りが150件と彼岸が、春秋で300件。以上が、お参りの内訳になる。

 仮に、寺院収入の全収入が、お参りによるお布施だとすれば、およそ次のような金額で、寺院収入は約1000万円になる。

葬式   20万円 X 12 = 240万円

年忌    3万円 X 90 = 270万円

盆     1万円 X 150 = 150万円

彼岸   0.5万円X 300 = 150万円(寺への志として)

祥月    1万円 X210 = 210万円

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合計              1020万円

 これは、あくまでも、最小のモデルである。実際には、この数字を元に、それぞれの地域の事情や、寺院規模、檀家数、各家庭が行う仏事の回数などを勘案してもらわなければならない。また、経済的な事情から、上記の金額を払えない家庭も、150軒の内、1割程度はあることを考えると、実際のお布施の額は、これより高くなるだろう。それでも、檀家1軒あたり、年間12万円程度が上限だろう。

 まあ、このようなモデルでも、無いよりはあった方が良いだろうということで、書いてみた次第である。