寂然法門百首 93

2025.5.23


 


 

 

 

 

浄名居士

むろの道ふみあやまてば諫(いさ)めつゝ咎みえにくき翁知りけり

 
半紙

 

【題出典】一般に通行した固有名詞であり、出典を特定せず。
 
浄名居士(維摩居士)


【歌の通釈】

無漏(小乗)の道を踏み誤ったので、いましめながら、欠点の見えにくい維摩翁を知ったのだよ。

 

【註】「むろの道」:ここでは小乗仏教のことを言う。「無漏」:煩悩のない状態。「浄名居士」:「浄名」とは「維摩経」の主人公維摩のこと。在家の修道者であるので居士と呼ぶ。「方等」:狭い小乗に対して、大乗が広大であるところから、「大方等」という言い方が出てきた。五時の中では、般若経、法華経、涅槃経を除いた大乗経典を説いた時を指す。

 

【考】方等時。小乗を叱り付け、大乗に導く段階である。小乗の段階でつまづく時、それを諫めながらその非の打ち所のない維摩翁に出会った喜びを詠む。

(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)


 

 

 

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