寂然法門百首 85

2023.11.6

 


 

 


世皆不牢固如水沫泡焔

結ぶかとみれば消えゆく水の泡のしばし玉ゐる世とは知らずや

半紙

【題出典】『法華経』随喜功徳品

【題意】 世は皆、牢固ならざること、水の沫・泡・焔の如し。

世はみな固く不変ではないのは、水泡や陽炎のようなものだ。

【歌の通釈】
結んだかと見るとすぐに消えてしまう水の泡が、しばらく玉として置くような、はかない世だとは知らないのか。

【考】
公任の維摩十喩を詠んだ「ここに消えかしこに結ぶ水の泡うき世にすめる身にこそありけれ」(公任集・二八九)をはじめ、水泡による無常の歌は古くから詠まれている。ただし、前歌の「はなめく世」と同様に「玉ゐる世」と、はかないが一瞬の輝きを放つ世を詠む点が特徴である。

(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)

 

 

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