寂然法門百首 65
2022.5.8
聞名欲往生
音に聞く君がりいつか生(いき)の松待つらんものを心づくしに
半紙
【題出典】『無量寿経』下
【題意】 聞名欲往生
名を聞きて往生せんと欲えば
【歌の通釈】
噂に聞くあなたのところ(阿弥陀仏の浄土)にいつ行けるのだろうか。筑紫の生の松で(西方浄土)で私を待っているだろうに、心を尽くしながら。
【考】
遠く西の筑紫でも待ちかねている恋人に、遙か遠く西方浄土で袖を濡らして待ちわびている阿弥陀仏を重ねることにより、阿弥陀仏の慈悲が情趣ゆたかに表現されている。善光寺如来(阿弥陀如来)の御歌として『風雅集』に入る「待ちかねてなげくと告げよみな人にいつをいつとていそがざるらん」(釈教。二〇二四)は、まさに阿弥陀が衆生を待ちかねていると詠んでものであり、影響関係を考えたい。
(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)