寂然法門百首 59
2022.1.20
受持仏語作礼而去
ちりぢりに鷲の高嶺をおりぞゆく御法の花をいへづとにして
半紙
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【題出典】『法華経』勧発品
【題意】 仏の語を受持して礼を作して去れり。仏の言葉を受持し、礼をして去る。
【歌の通釈】
散り散りに霊鷲山を下りてゆく。御法の花をみやげとして。
【考】
霊鷲山での釈迦の八年間にわたる『法華経』の説法が終わり、聴衆たちが帰っていく場面である。(中略)『法華経』のフィナーレを情趣的に詠む歌はこの後多く見られる。
(以上、『寂然法門百首全釈』山本章博著 による。)
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★釈教歌というのは、仏教の教えを詠んだものとされますが、経典の言葉を、単純に和歌に「変換」するだけのものではありません。日本人にその教えがすっと入ってくるようにという工夫があるようです。この「寂然法門百首」では、経典そのものにはない「季節感」や「情趣」などを交えて「変換」することに意を尽くしているそうです。
★ここでも「御法の花」という比喩が、この山を下りる人々の満たされた心のありかたを、情感豊かなものにしています。