須貝りさクラシックバレエ公演「くるみ割り人形」(2007年)
「中野ブラザーズ60周年記念公演」の福岡版の制作が終わった後、Dance Studio NEW BALANCEのメンバーの方のご紹介で、初めてクラシックバレエ公演の制作を手掛けることになりました。
メインの演目は、クリスマスが近付くと必ず聞こえてくる組曲でも有名な私も大好きなバレエ「くるみ割り人形」。
「くるみ割り人形」とは
ロシアの大作曲家チャイコフスキーが作曲した、「白鳥の湖」「眠りの森の美女」と共に3大バレエのひとつとして世界中のバレエ団のメインのレパートリーになっている名作中の名作。ドイツ・ロマン派の作家E.T.A.ホフマンの原作をデュマ(父)脚色した童話「くるみ割り人形とネズミの王様」を元に、振付家としても高名なマリウス・プティパが台本を書き、帝政ロシア時代の1892年12月6日、ペテルブルグの帝室マリインスキー初演され脚光をあびます。以後、世界中のバレエ団のレパートリーとなり、演奏会用の組曲も発表され、クリスマスが近付くと必ずこのバレエのメロディーが聞こえてくるほど愛されるようになりました。
物語
第1幕
賑やかなスタウバウム家のクリスマスパーティー。少女クララは名付け親のドロッセルマイヤーから醜いくるみ割り人形を贈られます。クララは一目で気に入りますが、腕白な兄のフリッツが壊してしまいます。
パーティーもお開きになり、皆が寝静まった後もクララは人形のことが気になって仕方がありません。様子を見に居間へ忍んできたクララは、ネズミたちとくるみ割り人形に率いられた玩具の兵隊との戦争に巻き込まれてしまいます。
ネズミの王様に襲いかかられ危機一髪のくるみ割り人形をクララが救い、ネズミたちは退散します。すると、醜かったくるみ割り人形は美しい王子に姿を変え、助けてくれたお礼に雪の国、そしてお菓子の国へと誘います。
第2幕
お菓子の国に到着したクララと王子は、お菓子の精たちに迎えられ楽しい踊りのもてなしを受けます。
あっという間の夢のようなひとときも過ぎ、ふとクララが気付くと、淡い想いを寄せていた王子の姿は消え、そこには元のくるみ割り人形が…
チラシ・デザイン表面
デザインのイメージは、クリスマスらしさと登場する様々なキャラクターをカラフルに表現して欲しいということでした。
面白いことに、上演するバレエ団によって物語の解釈がこれほど変わる演目はありません。どの解釈で須貝バレエが上演するのかでモチーフもテイストも変わります。そこで須貝先生とディスカッションを重ね、原作となった「くるみ割り人形とネズミの王様」も読み、モチーフを決めていきました。
クリスマスらしさといえば、クララがドロッセルマイヤーがかけた魔法にかかってしまう瞬間、ほどんどのバレエ団でクリスマスツリーを巨大化することでクララが玩具サイズに小さくなる様子を表現しています。そこで、やっぱりクリスマスツリーは外せません!
ただ、クリスマスツリーを描いただけでは詰まらないので、小さくなったクララが遭遇するネズミの大群でツリーを作ってしまおう。ネズミの大群はくるみ割り人形を狙って集まり、ツリーのオーナメントには登場する様々なキャラクターを配置したら楽しくなると考えたのが、このデザイン。元になっている原作も読むとかなりのホラー。ちょっと見では気付かないけど、よく見るとネズミの大群なのでびっくりという仕掛けです。
そして魔法の雰囲気を、ちょうどディズニーの「シンデレラ」で、ヒロインが魔法でドレスを着るときの星屑のように、クララが訪れる雪の国の雪でイメージして、それを王子と乗った船の軌跡にしてみたという訳です。
真ん中の大時計は、もちろん魔法がかかる瞬間の深夜0時を指しています。
作りながらふと思ったのは、このようなデザイン、なんとなく私の生まれ育った福岡の伝統の夏のお祭り、博多祇園山笠の飾り山に構成が似ているということ。やっぱりこれは見て育ったからなのか…(^o^;)