静岡甘味トライアングルで食い倒れ!

全国ウン十万人の『ツーリングどんどん』ファンのみんな、久しぶり! それから、ここでお初にお目にかかるみんな、よろしくな! 前回、山梨の山奥にご利益万点の水晶を掘りに行ってから、1年近くのご無沙汰だ。

水晶のご利益は、右肘骨折という生憎の結果に終わって(水晶のおかげで、その程度で済んだという見方もあるが……)、その後音沙汰ないので、あれで『ツーリングどんどん』は消滅したと思ったかもしれんが、俺もなかなかしぶとい奴なんでな、お生憎。

というわけで、今回は、心機一転巻きなおしの意味で、「厄払いツーリングでどんどん復活!」と気勢を上げて、またまたバイクに跨ることになった(それにしても、我ながら"ご利益" とか"厄払い"とか、他力本願な奴だ)。

目指すは、静岡県袋井市に本山を構える法多(はった)山尊永寺。ここには、「ダンゴブーム」なんぞのはるか以前、300年も前から続く由緒正しい「厄除けダンゴ」様がいらっしゃる。無類のダンゴマニアを自称する俺としては、これを知っては食わないわけにはいかない。それに静岡といえばお茶の産地。ダンゴに本場の甘露な新茶となれば、これは千里の道を乗り越えても行く価値があるというもんだ。

そんなわけで、地図を広げながらツーリングコースを検討していると、俺の甘党アンテナがピピンッと反応した。遠州灘の一角、海亀の産卵地として知られる浜岡町に、名物『亀まんじゅう』を発見したのだ。

袋井の『厄除けダンゴ』に、浜岡の『亀まんじゅう』、そしてかねてから発見済みのお茶と健康のテーマパーク『グリンピア牧之原』を結ぶ、名づけて『静岡甘味トライアングル』、この世紀末にふさわしいツーリングルートではないか!

まずは厄除けダンゴ目指して尊永寺へ。東京から200kmあまり、俺と、これまた無類の甘党の盛長カメラマンは、ときに土砂降りに見舞われる気まぐれな天気もものともせず、東名高速をひた走った。掛川ICを降りると、盛長カメラマンが、「法多山こちら」の看板を発見した。どうやら、法多山尊永寺は、東海地方では結構な名刹であるらしい。

沿道には随所に看板が掲げられていて、道に迷う心配はない。尊永寺に近づくにしたがって、日ごろの行いの良い俺に天が見方して、雨が上がった。

山奥にあって、苔むした参道をたどるしみじみとした寺を想像していたが、尊永寺は、コンクリート作りの近代的な?寺だった。

胸突き八丁の急な石段が自慢だったらしいが、昨年9月の集中豪雨で、見事に参道ごと流されてしまったとか……ここまで来て、『厄除けダンゴ』のご利益に、ふと疑問を感じる俺たちであった。

ダンゴは、参道の途中にある「ダンゴ組合」なるものが販売していた。直接カウンターへ行くと、「表の自動販売機でダンゴ券を買ってきてチョ」と、割烹着のおばちゃんがにべもなく言う。その券売機まで行くと、傍らに「ダンゴ一家の厄除けダンゴ」というイラストが……。「真ん中三つは三兄弟、端の二つは父さん母さん」と、思わず流行りのリズムで歌いたくなるような詞までご丁寧につけられている。ひぇ〜! 厄除けダンゴよ、おまえもか。300年の歴史を誇る厄除けダンゴまでが、流行りのコマーシャリズムに乗っていようとは……。どんどん復活ツーリングの幕開けは、なんとも情けないのであった。

 

ダンゴ概論

俺はべつに『ダンゴ三兄弟』を目の敵にするつもりはない。いやそれどころか、日本の正しい伝統食品であるダンゴに再び日の目を見るさせたその効果を積極的に評価している。だが、「ダンゴはやっぱ三個串刺しで、三兄弟でなければダメだ」と、老舗がこぞって三本刺しのダンゴに走ったり、本来平等であるべきはずの個々のダンゴに「一番上は長男で、二番目は次男……」などと、あたかも優劣をつけるがごとき風潮が許せないのである。

ものの本によれば、室町時代に茶の湯とともに確立された串刺しダンゴは、四個刺しが正統であったという。その食し方にも作法があって、お茶の前にまず一つ、いちばん上からいただく。そして、じっくりとその甘味を堪能してから、一煎目の甘露なお茶をいただく。次に二つ目を食し、これはまだ口中に餡子の残滓が残っているうちに、二煎目のやや苦味の出てきたお茶をいただく。そして、三個目は、まだ半分あまりが咀嚼されずに口中に残っているうちに、お茶を注ぎ込み、これを口中で一緒に味わって、飲み下す。最後に、四個目をいただいて、これはダンゴのみの純粋な味を賞味して飲みこみ、三煎目の苦味の効いたお茶で、口中をすすいで、さっぱりと甘味を拭い去るのである。それが、三個刺しの「ダンゴ三兄弟」では、お茶とダンゴのぐちゃぐちゃ状態飲み下しで終わってしまい、いかにも後味が悪いではないか……。ダンゴと茶道(さどうではない「ちゃどう」)のこの麗しい関係を俺は大切にしたいのだ。

まあ、そんなことはどうでもいい。要は味が問題だ。「ダンゴ三兄弟」に迎合していようと、お役所仕事のように「ダンゴ券を買ってくれなきゃあかんでにゃあもう」とおばちゃんがぶつくさたれようと、厄除けダンゴは美味いから、ここまで来たかいがあったというものだ。しかも、「厄除けダンゴは生物ですので、その日のうちにご賞味ください」と、翌日のお土産にすることを峻厳と拒否して、暗に「食いたけりゃ、ここまで来い」と匂わすところなんぞは、やはり、老舗ならではなのである。

俺たち甘味コンビは、そんなわけで五本並列串刺しのやや邪道な厄除けダンゴに満足して、次なる目標の『亀まんじゅう』へと向かった。

遠州灘沿いの国道をひた走って、原発で有名な浜岡町へ。ここは、海亀の産卵地としても有名で、『亀まんじゅう』は、まさにご当地自慢の銘菓なのである。600円也の最小まんじゅうでも20.5cm×14.5cmもある。最大の2500円也では30.5cm×24.0cmと特大だ。とてもそんな大きさのものは食いきれないので、俺たちは、お手軽な『小亀まんじゅう』を買いこんだ。これだって、10cm×15cmくらいはあって、ボリューム万点だ。こいつは、脱酸素材入りパックで、20日は楽に持ち、しかも全国どこでも電話注文受け付けだ。その日限りの厄除けダンゴの対極にあって、こいつはこいつで、「自然がいちばん、添加物反対!」のオーガニックブームに決然と背を向けている姿勢に好感が持てる。

天気は回復したが、今度は猛烈な風に翻弄されながら、次の目的地『グリンピア牧之原』へ向かう。緩やかな起伏が続き、ビッグバイクで流すには絶好のワインディング。道の両側にはお茶畑が広がっていて、時折、すがすがしい新茶の香りに包まれる。茶摘み体験もできる『グリンピア牧之原』は、まさにお茶のデパートだった。ここで、本来は今回のツーリングは終了の予定だったのだが、あまりにもいい天気に、新茶と『亀まんじゅう』持参で、富士山を間近に拝みに行こうと衆議一決(といっても二人だけだけど)、我々は、富士山麓を目指したのであった。

 

 

[マシンインプレッション]

XJR1300
このマシンでいちばん好印象だったのは、シートの形状と材質そしてポジション総体。とにかく自然で疲れない。1200のときより逆に一回り小さく感じられるボディは、足付き性もとりまわしも軽い。エンジンはもちろんトルクフルで、キャンプ道具をフルに詰んでしかもタンデムといったシチュエーションでも、まったくストレスを感じないだろう。

CB400
新たにVTECが与えられたCBは、レーシーな性格づけが際立つのかと思いきや、案外、低速トルクもあって扱いやすい。ポジションも自然で、俺の身長(179cm)なら両足べったりで取りまわしも非常に楽。全体的に素直な性格のマシンなので、ツーリングユースにもぴったりだ。

 

 

「厄除けダンゴ インプレ」

こいつは、上新粉を練ったダンゴにつぶし餡という、ダンゴとしては正統派中の正統派である。小ぶりの五個のダンゴそれぞれに串が刺してある。モチモチとした食感に、味も香りも喉越しもあっさりのつぶし餡、これを緋毛氈敷きの縁台でいただけば、「ああ、俺って、日本人に生まれて良かったぁ〜」という時間が味わえる。

 

「亀まんじゅう インプレ」

どこからどう見ても亀そのものの造形。「味より形ダ!」というストレート勝負が気持ちいいではないか。ビスケットのように硬く香ばしい皮に包まれた餡子は、いかにも日保ちしそうなカラカラに乾いた漉し餡。口に入れると、たちまち吸い取り紙のように口中の水分を吸収する。これは、ぜひとも大量のほうじ茶を用意してから食したい。

 

「法多山尊永寺」

 遠州三山の一つに数えられる名刹。観音様がご本尊で、ご利益は厄除け全般。7月9、10日の「厄除けほおずき市」でも有名。「厄除けダンゴ」は、参道の途中にある。法多山尊永寺(0538-43-3601)

 

「亀まんじゅう」

毎年遠州灘に産卵にやってくる海亀にちなんで、地元の老舗「かめや本店」がリリースする銘菓である。300円の「小亀」から特大「親亀」2500円まで、縁起ものの「鶴亀セット」もある。かめや本店(0537-86-2125)

 

「グリンピア牧之原」

茶どころ静岡らしく、お茶摘みから製茶まで体験できるお茶と健康のテーマパーク。売店では、採れたての新茶や茶菓子がそろえられている。レストランの名物は、なんでもかんでもお茶を混入したお茶づくし。火曜定休。滑作園(0548-27-2995)

 

[燃費データ]

全走行距離:597.0km

XJR1300:15.4km/l

CB400:20.6km/l

 


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