元凶はスチャラカなオートキャンプブームだ!!

 なんだよ、1回で終わりだと思って、安心して書きたい放題書いたら、また今月も書けだって?
 言っちゃ悪いけどさ、最近の俺って、けっこう忙しいんだよな。某大手ゲーム会社の仕事だとか、ノンフィクションの企画とかあってさ、こんなザラ紙に原稿書いてる暇なんてねぇんだよ。えっ? そのわりに、前のほうで楽しそうにツーリングしてるじゃねぇかって。あぁ、ありゃ気晴らしだからいいの。何、それなら、ここでも気晴らししろって? わぁったよ。書きゃいいんでしょ書きゃ。
 でだ、俺は、今月はキャンプブームに怒ってる。いや、今月だけではなくて、この数年、ず〜っと、クソくだらねえキャンプブームに怒ってるんだ。
 だってそうだろ。昔は、キャンプするやつなんて、山登りか貧乏旅行する奴ぐらいで、日本中いろんなところで勝手に、静かにキャンプできたもんだ。それが、今や、ちょっとめぼしい所はクソ高いオートキャンプ場になっちまうし、それにつられて普通のキャンプ場も幕営料は上がっちまうし……。それに、キャンプなんて、「陽が暮れたからぼちぼちキャンプでもすっぺか」なんてノリで、その場の思いつきでするもんなのに、事前に電話予約しなけりゃ泊まれないなんて理不尽なことになってるし、挙げ句、マナーのマの字もしらんウスラバカが、わんさか押しかけてやりたい放題。これじゃ、どこぞの難民キャンプだ(そんなこと言ったら難民キャンプに失礼だな)。
 アウトドアの雑誌なんかもやってる関係で、仕方なくオートキャンプの取材に行ったりもするんだが、話しを聞くと、???????な奴らばかり。奥多摩のほうの薄暗い谷間のジメジメしたこ汚いキャンプ場で、掃き溜めに鶴みたいに、新品の輸入物オートキャンプ用具一式をしつらえて、ワイングラスなんかカチリとやっているカップルがいたんで、話しを聞いてみたんだが、
「けっこう、二人でオートキャンプするの?」
 女のほうが、得意顔で、
「ええ、もうキャリア5年なのよ」
「キャリア? なんだかわかんないけど、まあいいや。ところで、今まで、どんなところへ行ったの?」
「○○キャンプ場とか、××パークとか、△△サイトとか……。有名なところは、ほとんど行ったわよ」
「いや、キャンプ場の話しじゃなくて、キャンプをベースにして、どんなところへ行ったり、どんなことして楽しんでいるのかなあと、思って聞いたんだけど」
「えっ、キャンプに行ったらキャンプするでしょ」
「だから、トレッキングとか、釣りとかMTBとか、カヤッキングとか遊びがあるでしょ」
「そんなことしないわ。こうしてテント張って、美味しい野外料理作って、くつろぐだけ」
 なんて、オツに構えて、間近で林間学校のガキどもが上げる花火の煙を吸いながら、なんの工夫もないバーベキューにワインで、自分たちだけの世界に浸っているのだ。
 べつに、楽しみ方は人それぞれだから、どうでもいいけどね。それにしても、ガイドブックに乗ってるキャンプ場巡って、いつもおんなじバーベキューにワインていうんじゃ、それこそバカの一つ覚えっていうもんだ。
 キャンプなんて、他に目的があって、それを効率よくこなすためにするもんだと思うがな。あるいは、宿代がもったいない、その分長く旅をしていたいからキャンプとか、俺なんかは、予算節約と人口密度の高い劣悪な山小屋の住環境が嫌で、重いの我慢してテント背負って山登りするんだけど……。
 といったわけでだ、我々は、せっかくフットワークのいい、オートバイという乗り物に乗っているんだから、キャンプするなら、環境も人心も最低のオートキャンプ場なぞ行かずに、独自にキャンプサイト探して、本来の自然と一体となったキャンプをしようと、提案したいわけだ。

 

俄かアウトドアライターのハウツーなんて無視しろ!!

 東北の秀峰早池峰山を間近に拝む○○高原。俺の気に入りのキャンプサイトの一つだ。北上山地のまるでモンゴルの草原を思わせるような広大な高原の一角で、ダートロードが一本だけ貫通している。見渡す限りの広大な草原が、どこでも自由なキャンプサイトだ。そのかわり水場もトイレも炊事場もなんにもない。キャンプをしたければ、すべての装備をしっかり用意しなくちゃならない。
 夏場の最盛期でも、視界の彼方に2、3張りのテントがちらほら見えるだけで、丘陵を渡る風の音しか聞こえない。
 一人、のんびりうたた寝なんぞこいていると、オートバイのエンジンの音。
「あの〜すいません、ここでキャンプできるんですか?」
 なんか、気の弱そうなライダーが声をかけてくる。
「へ?」
「ここって、キャンプ場なんですか?」
「さあ、キャンプ場じゃないと思うけど、いいんじゃない」
「あのぅ、水とか、トイレは?」
「水は下の沢から汲めるし、トイレは、そこらでキジ打ち(山ヤの隠語。ウンコすること)すりゃいいんじゃないの」
「そうですかぁ」
 彼、不安そうな顔で周囲を眺めていると思ったら、アクセル吹かして行ってしまった。あとで、麓を通りかかると、狭っちいキャンプ場の隅っこに彼のオートバイが止めてあった。
 もったいないよな、ブームに乗っかって、にわかにアウトドアライターを名乗りだしたド素人が書いたハウツー本なんか読んじまってるおかげで、あれしちゃいけません、これしちゃいけません、何がなければいけませんなんて、頭でっかちで、目の前の最高のシチュエーションも目に入らないんだから……。
 そりゃ、国立公園や国定公園でキャンプ指定地以外でのキャンプ禁止地域とか、私有地に勝手に入り込んでテント張るのは問題だろうけど、とりあえず、そんな規制を外れたところなら、基本的にキャンプはOKなのだ。
 要は、キャンプをしたら、撤収するときにテントを張る前の元の状態に戻しておけばいいだけ。それを原状復帰って言うんだけど、例えば、たき火をしたら(山火事なんか出さないように、火の管理をしっかりするのは当たり前)、灰の処置などをしっかりして跡をきれいにしておけばいいのだ。最近、直火(地面でするたき火)はいけませんなんてほざくエコロジスト気取りのバカがはびこってきているけど、たき火なしのキャンプなんて、それこそ、なんとかを入れないコーヒーみたいなもんで、味気ないことこの上ない。きっと奴らは、満足に焚き付けができないんで、悔しまぎれに、人の楽しみにイチャモンつけようってわけなんだろうな。
 怒ってばかりいてもはじまらんな。
 そこで、最後になったけど、俺なりの、気持ちのいいキャンプサイトの条件を上げておこう。
 まずは、クソバカキャンパーがいないこと。これ絶対条件。首都圏のオートキャンプ場は、その見本市みたいなところだから、ぜ〜ったい避けるべし。
 それから、地面が乾いていること。砂地とか短い草の密生した草原がベストだな。
 さらに、風通し、日当たりがいいこと。夏の暑い最中なら、風通しのいい林の中なんかがベスト。
 あとは、当たり前のことだけど、川の中州、流れの側、崖下、崖上みたいな天候の悪化によって危険になる場所を避けること。北海道の山なら、羆の生態をよく知っておくこと(食料は高い木の枝にデポするとか)などだな。
 ま、自由なキャンプをしようと思ったら、少しは知恵を使えってわけだ。


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