俺のウマメシ道楽

 世はアメリカンブーム、ビンテージカスタムブームで、ツーリングなんていうと地味で汗臭くて超カッコ悪いなんて風潮だけど、こうなると、根っからのツーリングフリークで、超天邪鬼の俺としては、「よっしゃあ、いよいよ俺の時代だ」なんて、うれしくなってしまうわけだ。
 みんながツーリングしなければ、どこへ行ったって、鬱陶しいピースサインなんてしなくて済むし、キャンプ場も空いてて気持ちいいからな。誰にも干渉されずに、自分オリジナルな旅をするには、最高の時代だゼ。あとは、クソくだらねえアウトドアブームも早く消滅して、みんな、シコシコとおウチ周辺で遊ぶようになれば、完璧なんだがなぁ。
 もうすでにツーリング病にはまっている俺の同類さんは仕方ないけど、もしツーリング未経験で、このページを見て、「これからツーリングしてみようかな?」なんて考えてしまった奴がいたら、悪いこと言わん、そういう料簡おこすのはやめときな。ぜ〜ったい後悔するから。そんな人は、このページは見なかったことにして、早く忘れること。
 てなわけで、このページは、全国158?人のツーリングジャンキーだけに、同病の俺がお届けするきわめてマイナー、ラジカル、ファナティックでディープな禁断のページなのだ。
 というわけで、いきなり飯だ。
 日本人なら、飯をちゃんと炊いて食わねばいけない。それも、できれば、食管法の網を巧みに潜り抜けた、日本の農業のあり方を深く愁いる意識の高い農家が育てた有機農法米が、なんたって正統なのだ。もちろん、ツーリングにだって、米持参で、あるいはご当地の銘米を仕入れて、炊かねばならんのだ。
 俺の友達のロックミュージシャンなんて、オートバイで全国各地のライブハウス回ってるんだけど、革の振り分けバックには、常に1升の玄米と圧力鍋がブチこんであって、3食正しく玄米を炊いている。
 今回は、編集のケンチが、「すんませ〜ん、有機米みつからなかったので、これなんすけど」と、キララ○○○の2kg詰めを持ってやってきた。まあ、それは、材料調達を人任せにした俺の責任でもあるし、一応ブランド米だから許してやることにしよう。だが、欲を言えば、キララのように冷害に強いタイプの米は、炊く前にじっくり水につけておければいいが、キャンプのときのように、といでいきなり炊くといった掟やぶりをすると、ちょっと強めになってしまうのが難点だ。
 ここのタイトルに、『俺のウマメシ道楽』などとあるが、飯炊きは道楽などではない。日本人としての当然の義務であり、これこそが日本人としてのアイデンティティーではないか!! こんな安易なタイトルをつけたケンチは、そこに正座して、反省セイ!!

 

ウマメシにはウマ水が必要

 うまい飯を炊くには、もちろんうまい水が必要だ。日本酒だって、ウイスキーだって、いい水がなけりゃうまい酒にはならんからな。
 東京のクソまずい水道水なんか使うのはもちろん論外、最近は浄水器もいろいろ出てきて、たしかに水道水の臭みなんかをうまく取り除くようになったが、大地がもたらす滋味、ミネラルのもたらすまろやかさがまったくない。市販のナチュラルミネラルウォーターも、長い間ポリボトルに入れられているうちに、気になる風味がついていたりする。やっぱり、自然の湧き水を使うに限る。ほんとにうまい飯を食いたいと思ったら、それしかないな。
 というわけで、過日、O誌マイナーツーリング部隊のケンチ、盛長カメラ、俺の三人は、東京近郊の湧き水を求めて、東名高速を南下したというわけだ。
 そして、辿り着いたのは、伊勢原市は大山の西の肩にあたるヤビツ峠。
 ここに幻の名水があると聞きつけて、XJR1200Rをカッ飛ばしてやってきたのだが……。
 すっかり舗装された峠道の脇にたしかにコンコンと湧き出る泉が。だが、土曜日ともあって、なんと黒山の人だかりではないか。『次の人が待っています。一人18lまで水を汲んだら順番をお譲りください』なんて、立看板も……。「どこが幻じゃ!!」なんて、少々ムカついたが、これも、「近場で名水を探せ」と、人頼みした俺の責任だ。
 ようやく、順番が回ってきて、おもむろに手にすくって飲む。山の湧水らしくキンと張り詰めるように冷たく、どこか岩と緑の混じった少し硬くて透明な味がする。『幻』ではなかったが、水そのものはいい。よし、これで、満足のいくウマメシが炊けるはずだ……。

 

ウマメシ炊き手順

@
「野外で飯を炊くならやっぱり飯盒だね」なんて言う奴がいるが、飯盒なんかなくたって飯は炊ける。今回、俺はごくありきたりのコッヘルで炊く。他には、ストーブと重しにする手ごろな石があればいい。

A
まずは米をとぐ。みんな、ウチでといだことあるよな? キャンプでは、ふやかしている時間なんかないから、ここはしっかりとぐ。川の側なんかでやるときは、とぎ汁は、流れから少なくとも5mは離して捨てる。そんな当たり前のことはわかってるよな。

B
水加減は、米の上に人差指の第一関節くらいまで。もし大ナベでたくさん炊くなら、掌をつけて、ちょうど掌が隠れるくらいだ。ま、ここらへんは目分量で、多少増減してもたいした影響はない。

C
はじめは、中火よりやや強いくらいで火にかける。そして、ポイントは、ナベの上に重しを載せることだ。要するに、簡易圧力ナベにするってわけだな。重しは、そこらに転がっている石ころでいい。ここは、景気良く重い石を載せる。

D
少し吹きこぼれてきたら、火を細めて、蒸気だけが立ち上るようにする。吹きこぼれた露がかかると火傷するから、グローブ必着なのはいうまでもない。あとは、じっと我慢して待つだけだ。

E
10分くらいすると、蒸気の出方が弱まってくる。そして、もうしばらくすると、ナベの底の水がなくなって焦げるジジジという音とともに、香ばしい香りが……。そしたら、すかさず火を止める。後はしばらくそのままにして蒸らすだけ。たったこれだけのこと。どうだ、簡単だろ。

F
どうだ、カニの穴もしっかりついたウマメシが炊けただろ。後は、おもむろに、日本人に生まれたしあわせを噛みしめればいいのダ!!

 

ボテトチップス活用術

 ウマメシが炊けたら、やっぱり、おかずにもそれなりに凝らねばならない。普通のツーリングなら、どっか市場によって買い出ししたり、地元の農家でとれたて野菜を分けてもらったりしているところだが、今回は、あわただしく出てきてしまったので、仕込みができなかった。
 当地は山奥で、スーパーもない。そこで、小さなコンビニをみつけたので、ポテトチップスとコンソメスープ、ウインナーを調達した。これで、ポテトスープを作ろうってわけだ。
 水を沸かし、コンソメを適量、ウインナーをテキトーに切って入れる。そこにポテトチップスをドサッとブッこめばいい。ポテトにはもともと火が通っているから、たちまち出来上がり。これも飯炊きと同じくらい超簡単だ。そのわりに、適度な油分があって、味はじっくり煮込んだポトフといった感じだ。近所で宴会していたオヤジたちが、「いい香りだな、味見させてくれ」と来たので食わせてやったが、誰もポテトチップスが材料だなんて気づかなかった。
 ほかにも、玉ねぎスライスとポテチップス炒めなんてのもけっこういける。知ってたかな? 全国158?人ツーリングフリークスの諸君。意外な材料で本格メニューというのは、他にもいろいろあるが、それは、今度また機会があったら紹介しよう。案外、コンビニ食材料理バトルなんてのも面白いかもな。
 というわけで、唐突にはじまった俺の?ツーリングページだが、超マイナーなので、次はないかもしれない。この先のディープなツーリング世界は、全国158?人ツーリングフリークスの諸君の声援しだいなので、そこんとこよろしく。

 じゃあな、また会う日まで……。

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