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●原村「まさかロッジ」 昨年大好評だった「スノーシューイングオフ会」を今年も八ヶ岳を舞台に開催しました。 なかなか日時がフィックスできず、土壇場で決まったために、参加者は少なかったものの、台風一過のような胸のすく晴天に恵まれて、最高のフィールドを独占できて、申しわけないような一日でした。 初日、3月1日は、昨年もお世話になった原村のペンション「まさかロッジ」へ。午後、早い時間について、スノーシューの足慣らしに雪に覆われた目の前の樹林に踏み込んだものの、すぐに本降りの雨となり退散。麓では雨でも、稜線上は雪になっているはずで、フィールドでのお楽しみは明日にとっておき、早くから宴会態勢。
原村のペンションビレッジの北端にある「まさかロッジ」は、オーナーの鎌田さんがもう10数年前に廃業したペンションを買い取り、自らエントランスや廊下、風呂、テラスなどをバリアフリーに改造して、誰でも気軽に八ヶ岳の自然を楽しめるように開いた宿。 鎌田さんは、根っからの山屋で、八ヶ岳は庭のように知り尽くしています。宿主催のツアーも本格登山からトレッキング、野草テンプラハイキングと多彩でお薦め。去年のOBTオフ会の際に、鎌田さんもスノーシューを初体験して、すっかり気に入り、今年は、レンタル用のものまで用意して、自らツアーを率いたりしています。今回は、地区の運動会があって、その世話人をしているためトレッキングに参加できないと悔しそうでした。 貸しきり状態の宿で、夜は、薪ストーブのまわりから掘りごたつへと移動しながら、しみじみと宴会。夜半にはこのあたりでも雨が雪に変わり、静かに夜が更けていきます。このところ目が回るほど忙しかったので、なんだか、異次元にスリップしてしまったような気がします。 翌朝、早起きして準備を整えると、さっそく出発。一台の車に全員が乗り込んで、横岳ピラタスロープウェイへ。 今回初参加の梅木氏は、アウトドア全般のガイド経験があり、テレマークスキーのベテランで、ツリークライミングのインストラクターもしているアウトドア万能の人。ピラタスはテレマークのホームゲレンデで、よく通ったそうです。そんな頼もしい相棒がいて、今回はトレースが明瞭なコースなので、楽勝と思っていたのですが....。
●縞枯山直登!
山頂駅で降りた客は、8割がゲレンデスキー客、1割がクロカンで、後はスノーシューとテレマークスキーの客といったあんばい。ゲレンデスキーは、すぐ右手から始まるダウンヒルコースへ。その他の人はここで装備をつけて斜面の上を目指す。 ぼくたちもスノーシューをつけて、目的地の雨池を目指して歩き始めたものの....。せっかく昨夜のパウダースノーが積もった無垢の雪原が広がっているというのに、踏み固められたトレースを辿るのは面白くない。ふと見上げると、右手に縞枯山の全容がはっきり見える。途中まで開けた雪原があって、途中から樹林帯となり、さらにその先は頂上まで見晴らしの良さそうな雪原が広がっている。 「予定を変更して、縞枯山へ直登しましょう!」。天気は文句なしだし、風もたいして強くなく、何よりバージンスノーの雪原を行くことこそがスノーシューの醍醐味。もちろん、全員意見が一致して、トレースを外れる。 はじめは、疎らな樹林で、まさにスノーシュー天国。夏場では、7〜8メートルの高さがある針葉樹に囲まれて、展望が利かないこのあたりも、ほとんど雪に埋もれているおかげで、高度を上げるにつれて、どんどん展望が開けてくる。
さて、いよいよ樹林帯に突入。だんだん木の間隔が密になってきて、ルートを慎重に選ばないと、スノーシューでも行く手を阻まれてしまう。さらに、パウダースノーが吹き溜まりになっていて、梅木氏やぼくだと、大きなスノーシューをつけていても、腰のあたりまで潜って、ラッセルになってしまう。 しばらくは、二人でトップを交代しながら進んでいたものの、10メートルも進むと疲れて、なかなか距離を稼ぐことができない。ここで、ふと思い立ち、ぼくが履いていたいちばん大きいサイズのスノーシューを体重のもっとも軽い伊東さんに履いてもらい、試しにトップにたってもらう。 すると、彼女は、パウダースノーの上で、ほとんど足首くらいまでしか潜らず、すいすいと進んでいく。「伊東さんには、これからOBTのラッセル隊長をお願いしましょう」 と、彼女が切り開いたルートを後続がゾロゾロと続く。 そんな調子で、これなら頂上まで楽勝だと思ったその瞬間、「ウワッ!」と、背後で声がして、振り向くと、すぐ後ろにいた梅木氏が、首まで雪の中に埋まってしまっている。 なんとか脱出しようともがけばもがくほど、徐々に沈んでいく。針葉樹の枝に降り積もった雪が層を成していて、それを踏み抜くと、下は空洞になっている。そこにはまってしまうと、下手をすれば、木の根元近くまで落ちてしまう。 今回は、ハイキング気分で、ザイルもスノースコップも用意していないので、底まで落ちたら、救出する術がない。 なんとか、梅木氏を引っ張り出せたものの、その後、樹林帯が終わりかけてほっとしたところで、今度はぼくが同じ罠にはまってしまう。もう、縞枯山頂は目の前なのに、さすがにめげてしまい、引き返すことに。 縞枯山登頂がかなわなかったのは残念だけど、そもそもが思いつきで踏み込んだルートだし、樹林帯の罠を身を持って体験できたので良しとしましょう。そういえば、ずっとぼくたちのトレースを辿ってきた中高年パーティは、すれ違いに、頂上を目指して行きました。ちなみに、ラッセルを交代せずに、後からついていく人やパーティのことを山ヤ用語では、「ラッセル泥棒」といいます。次回は、ザイルとスノースコップ持参で、ガンガン行きましょうね、梅木さん。
さて、振り出しに戻った我々は、ピラタスローブウェイ山頂駅の横から、冬山登山道を辿って下山をはじめました。 ここでも、やっぱり踏み固められたトレースを辿るのはつまらないと、バージンスノーへ。軽快に下っていったのは良かったものの、また樹林帯に入り込み、やってしまいました....またも陥没。そのままトラバースして、ルートに復帰しようとトライするものの、このあたりは樹林が密で、ついに先へ進めず、軽々と下った道をエイコラと登るハメに。スノーシューは機動性が高いものの、それをいいことにやりすぎてしまうのは、考えものです。 ダウンヒルコースの縁を行く冬山登山コースは、踏み固められていて、スノーシューを履いていると、かえって歩きにくい。そこで、面倒なので、滑り台よろしく、尻セードで一気に下ります。ちょっと腹筋に力がいるけれど、思い切り仰け反って、足を持ち上げ、後はリュージュのようなつもりで....ただ、うまく止まれないのと、凸凹で尻が痛いのが難点。
最近、オフピステを滑るスノーボーダーは、アプローチをスノーシューを使って登り、下りをボードで楽しむそうです。尻セードもそれなりに面白いけれど、やっぱりダウンヒルは、スキーやスノーボードが楽しそうです。そういえば、去年は、カヤックを担いで登り、スノーカヤックにチャレンジしようなんて言ってましたっけ。 去年のスノーシューオフ会は、同じ北八ヶ岳でも、もう少し標高の低い場所で行いました。そのときは、動物の足跡いわゆるアニマルトラッキングもたくさんあり、動物の姿も見かけましたが、今回は、アニマルトラッキングはありませんでした。標高2000メートル以上の本格山岳とあって、このあたりに生息する動物は、冬眠していたのでしょう。 ダウンヒルコースを横切って、広大な雪原に出ると、背後には八ヶ岳の全山が、前方には、谷を挟んで南アルプスが見渡せます。いつのまにか、日が南アルプスの山入端のほうに傾きかけて、雪原が銀色に染まり、行き当たりばったりの、でも、全身雪まみれになって遊んだ充実の一日が終わりました。
―協力―
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