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「…なんか、冷たい飲み物でも作ってやるか。」

暑そうだし。俺ものど渇いてるし。うん。
決まり、とうなずいて、家の中に入った。

「はぁ…あっつ…」
収穫を終えてどさ、とソファに座ったスペインの目の前にグラスを突き出す。
「わ!何?」
「…いらないなら俺がもらうけど。」
揺らすと、からからと氷のぶつかる音。いる!と手が伸びてくるから渡して、自分の分をに口をつけた。
ごくごくと、豪快に一気に飲み干すのを横目でながめる。
「っあー…たまらんわ…ありがとな」
笑顔を向けられておう、ととうなずいた。
「野菜の出来は?」
「どれもこれも上々!」
幸せそうだ。庭いじりが楽しくて仕方なかったらしい。
「夕食に使って!」
「おう。」
野菜の入った籠に手を伸ばして、おすすめはなーと楽しそうに話す彼を後ろから眺めて、で。と小さく呟く。
「仕事は?」
「うっ……はい、ちゃんとします…」
あ。背中が小さくなった。しばらくそのままいじけた後、あーもうやるってちゃんとー…とぐたりとソファに寝転ぶ。
グラスは、と見ればテーブルの上。もう飲み終わったらしい。空のグラスの中の氷が音を立てる。
「さっさとやってこいよ。夕飯うまいもん作ってやるから。」
そう言ってやる。今しなかったらまた怒られるんだから。俺別に関係ないけど、…徹夜とか、あんまりしてほしくないし。
「お?期待してええ?」
「当たり前だちくしょー。」
言い返すと、やったらがんばってこよーかなーと起きあがった。
仕事部屋に向かい始めたその後姿にまったく世話のかかる、と苦笑したら、何故かくるっとUターン。
「何だよ?」
何故か戻ってきたスペインを見上げると、んー、ちょっと元気もらってこーかな、と。と何やら笑顔。
「は?」
眉をひそめると、ぽん、と肩に手をかけられ。
え。と一瞬固まった間に、ちゅ、とリップ音つきで、頬にキスされた。
「……っ!!!」
一気に体温が上がる。慌てて、肩にかかった手を振り払って。
「ロマーノトマトみたいに真っ赤やで?」
悪戯が成功した悪がきみたいな顔してスペインが笑う!
「…っうっせぇ仕事しろこのやろー!」
怒鳴るとうひゃあと言って逃げていった。
ばたんとドアの閉まる音を聞きながら、ああちくしょーもーと手に顔を埋めてため息。
「…夕飯つくろ」
何か作業してる方が、余計なこと考えないですむし。手の中の氷が溶けて薄くなったそれを飲み干して、キッチンへ歩き出した。

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