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ん、と眉をひそめ、目を開ける。
目の前の色の濃い肌に、ぱちりと瞬いて。
「…近い」
「やってロマーノあったかいねんもん」
頭上から聞こえる声。見上げると、薄暗い中で見ると深い緑に見える、瞳。

「おはよ」
「…はよ…」
「珍しいなあ。ロマーノちっちゃい頃から早起きやのに。」
今日は俺の勝ち。なんてうれしそうな馬鹿に眉をひそめる。
「…まぐれだろ…」

言いながら、考える。…あれ。あれ?スペインの言葉、なんか引っかかった。何だ?
…『ちっちゃい頃から』?

じっと見上げると、どしたん?と首を傾げる彼。
「…なあ、俺がおまえと最初に会ったのって、」
「?オーストリアの家やな。」
さらっと言われて、ぱちり、と瞬く。だってさっきまで、いたのは。…あれ?俺、今寝てる、ってことは?

「…さっきまでの、あれ、夢…?」
…夢か。そうか。そりゃあそうだよな…ほかの世界、とかあり得ないよな…
なんだかほっとしたような、ちょっと残念なような、気分になる。
「何?怖い夢でも見た?」
「…いや。」
怖くは、なかった。…そうだな、今まで見てきた夢の中では。こいつ、出てきて、告白、されて。うん。いい夢、だ。
「…ええ夢やったみたいやな?」
「まあな。」
言って、あくびをひとつ。

すると、もっかい寝る?と言いながら額にキス。子供みたいな扱いが不満だけれど、でも二度寝、はとても魅力的な選択肢だった。一緒に寝るのは、単純に好きだ。あったかいし。
「ん…寝る…」
そう答えると、背中をぽんぽんとたたかれた。ああもうだから子供扱いするな!でも、口も目ももう開くのが億劫で。
「俺ももうちょい寝よかな…後で畑の世話するから手伝ってな」
「飯…」
「はいはい作らさせていただきます。」
その返事を聞いて気が済んだので、その暖かい体に擦りよった。たくましい腕に抱き込まれて、意識が溶けていく。


「おやすみ、ロマーノ。大好きやで」
俺も、と返した声は夢の中。



『もう少しだけ夢の中で』End!


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