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会議室の机に資料を並べ終えて、ほっと息をついたそのとき。
「にほーん!」
呼ぶ声に振り返ろうとすると、体に衝撃!

「わ!」
「日本!久しぶり!」
「こらイタリア。抱きつくな。日本が困ってるだろう。」
はあい、と離れていく声にも、諌める声にも聞き覚えがあって、ありすぎて思わず笑った。
「イタリアくん、ドイツさん!」
久しぶりに見る2人の、…いや、この世界では「初めて」、か。けれど、私と2人の関係は変わらないようだ。にこにこと明るいイタリアくんの笑顔とはしゃぐ彼を引き止めるドイツさんのやりとりは、いつもと、私が知っている2人と同じで、笑った。

「日本今、イギリスのとこいるんだよね?」
俺の家と近いね、というイタリアくんの声にうなずく。私の家よりはずっと、近い。
「ええ。」
「うーん…でもイギリスかあ…近いけど行きたくない…」
へにょんと眉を下げる彼に相変わらず苦手なんですね、と苦笑。
「ん〜イギリス苦手ー…」
「日本は、大丈夫なのか?」
私よりずっと大きいドイツさんを見上げる。心配そうな瞳。相変わらず優しい人だ。

「ええ。平気ですよ。」
「そうだよ!ごはんとか!」
「それは対策済みです。」
即答して、顔を見合わせて笑う。さすが日本!それほどでも。そんな会話をかわして。


それから2人のにぎやかな話を聞いて、他愛のない話をして。
その中で、ふとイタリアくんが、でもさ日本、と切り出した。

「イギリスと一緒なんてイヤじゃない?」
「いいえ?楽しいですよ。」
イギリスさんでよかったと心の底から思います。他の人ではなく、イギリスさんでよかった、と。柔らかく、微笑む。
と、2人の奇妙なものを見る表情!
「…日本変。」
「悪いが俺もそう思う。」
…失礼な。



ではまた、とまた会う約束をして、2人と別れて、部屋のドアを開ける。
と、ドアががたん、と何かにぶつかって止まった。
「?」
向こうをのぞくと、しゃがみこんだイギリスさんの姿!
「すみません!大丈夫ですか!?」
「へ、へいきだ、気にするな!」
とは言われても、顔を上げた彼の額は赤くなってしまっていて!
しゃがんで手を伸ばすと、彼はぱっと立ち上がった。

「それより!おまえを探してたんだ運ぶの手伝ってくれ日本。」
反論は許さないとばかりに言われ、私がうなずくのも待たずに歩き出した彼の背中を慌てて追う。


ずかずかと前を行く彼の耳は、少し赤く見えた。


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