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「……。」

何も答えないでいたら、日本?と呼ばれた。いえ、何でもないです。そう答える前に、手袋をした手が、伸びてきて額にあてられる。
「!?」
「…熱、があるわけじゃないみたいだが…。」
手袋越しじゃわかりづらいな、そう呟いて、ぐい、と腕を引かれる。体勢をくずして慌てて机に手をついたところで、額をこつん、と当てられて。
「!!!!」
声にならない声を上げると、やっぱ熱いぞ、日本、と言われて、少しだけ離れたあたりで閉じていたまぶたがぱちりと開いて。
目と鼻の先、どころでない至近距離にかあああっとイギリスさんの頬も、私の頬も赤くなっていくのがわかって。
「っ!!悪い!」
「い、いえ…。」
すぐに離れて、うろ、と視線をうろつかせる。
握られた手が、触れた額が、熱い。
「……あー…だめだな、アメリカとかカナダと話した後だったから、つい昔あいつらにやってたみたいに…すまない。」
耳まで真っ赤にした彼の言葉に、ふるふる、と首を横に振る。
「…それで、その…体調は、大丈夫なのか?」
「は、はい。…大丈夫、です。」
ご心配をおかけしまして…そう続けると、いや、いい。と声。
「その…無理は、するなよ。」
別におまえが心配なわけじゃなくて、倒れられたりしたら俺が無理させたと思われるからであって、とか続く声を聞きながらこくこくとうなずいた。
「それじゃ、あの、私はこれで…。」
「お、おう。」
そう言って、部屋をぎくしゃくと出て、閉めたドアに背中をあずけて座り込んだ。
「……どうしてそうあなたは…っ!」
私の心をかき乱すのが上手なんだろう!ああもう心臓静まりませんよもう!
腕の中に顔を埋めて、いつのまにかまた手に握っていたそれに気付いたのはしばらく経った後のことだった。


『鍵の欠片』を手に入れた!



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