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「仲、いいんですね…カナダさんと。」



そうぽろ、とこぼれた言葉に、え、と言った彼よりも私が驚いた。
何を言っているんだろう…!
何でもないんですすみません、気にしないでください!そう言おうと口を開く前に。
「カナダ…?ああ、そりゃあ、家族だからな。」
柔らかく、彼は微笑んだ。
…恋人に向ける、というよりは、弟か息子か、手のかかる保護対象を見るような、そんなまなざし。

「…かぞく。」
「ああ。あ、話したっけ?あいつは、俺の弟の一人で、」
「ああ、いえ。伺ったことはないですが、…話としては聞いています。」
イギリスさんと、アメリカさんと、カナダさんと。…三人で暮らしたころの話は、聞いたことがある。…元の世界で、イギリスさんから。

「そっか。…まあ、そういうわけでさ、あいつは俺の弟なんだ。もういい年なのはわかってるんだけど、どっか抜けてて…なんか放っておけなくなるんだよなあ…。カナダもそれわかってるのか甘えてくるし…」
兄バカって言うんだろうな、こういうの。そう苦笑するイギリスさんに、す、と気持ちが軽くなるのを感じた。
「…いいえ、いいと思いますよ。家族を思いやる気持ちは。」

そう、笑顔で答える。作らない笑顔。…なんだ、そうか。…あの笑顔は、弟に。…家族、に向けたものだったんだ。なんだ。
…深く考えてしまうのは、私の悪い癖、だ。ちゃんと聞けば、こんなに簡単に解消してしまう悩み事なのに!

「イギリスさんは家族想いの優しい人ですね。」
そう笑って言ったら、かっと赤くなった後で、べ、別に嬉しくなんかないんだからな!と叫んだのがおかしくって、くすくすと笑った。


途端、する、と手の中に、何かがいつの間にか乗っているのに気付いた。
……あ。
「?日本?」
「いえ、なんでもないです。それじゃあ、私はこれで。」
そう言って部屋を出、手の平を開くと、そこには、確かに鍵の欠片があった。



『鍵の欠片』を手に入れた!



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