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「…くまのパディントン…」
明らかに、絵本だ。しかも結構新しい。どうしてこんなところに?
手にとってめくれば、当たり前だが英語で。
「…でもこれくらい文章量少ないと読みやすいですね、やっぱり…」
ぱらぱらとめくっていけば、鮮やかな色の絵。

「あれ、日本?」
いきなり呼びかけられ、驚いて振り返ると、イギリスさんの姿!

「びっくりした…どうかされたんですか?」
「いや、資料をな。…あ。」
視線はまっすぐに、私が持っていた絵本に向けられていて。
「あ、すみません勝手に…」
「ああ、いや、もともと日本にあげるつもりだったんだ。」
よかったらやる、と言われ、はあ。と瞬く。私に、絵本。

「…言葉、を、覚えるなら…それくらいから始めたほうが、勉強になるだろう、と思って。」
でもまあいらないなら戻しといてくれれば…視線をそらして言う彼に、いいえ、いただきます、と答える。
…きっと、きっと。私がここにくるまで、たくさん考えてくれたんだろう。私が少しでも馴染みやすいように。
…優しい人だ。

「ありがとうございます。」
微笑んでそう言えば、彼はおう、と照れた表情で答えた。

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