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「な…なんで、ですか?」 尋ねると、彼はそうですね、と少し考えて。 …独立、なんてそんな、唐突すぎて。 頭が回らない。どういうこと? 彼のそばにいることが、できなくなるって、こと? 「…あなたが十分すぎる実力を持っているから、ですかね。」 一人でもやっていけるだけの。…それはたしかに、その自信はあるけどでも。 唐突すぎる言葉に困り果てていると、それと。と一言。 「…違うんじゃないかと思ったんです」 「は、い?」 どきん、と心臓が収縮した。違うって、何、が…? 「私はあなたに後ろにいてほしいわけではなく、隣にいてほしいんです。パートナーとして。…友人として。」 友人。…かあ。ずきん、と心が痛む。 でも。それは、待ち望んだ言葉ではないにしても。…うれしい言葉だ。 「それには、属国なんていう扱いではおかしいでしょう?だから。」 だから、あなたに独立してもらおうと思いまして。 少し照れたような言葉に、瞬いて。 一度、深呼吸。 …私の願いは、彼のそばにいたい。ただ、それだけ。 なら、友人でも、…恋人、でも。変わらないでしょう? 「…ハンガリー?どうかしました?」 「…いきなりすぎて、びっくりしたんです。」 驚かさないでください。そう言った私の顔は、困ったように笑えて、いる? 「すみません…」 「いえ、ありがとうございます。」 そう言って、立ち上がったそのとき。 周りの音が消えて。 扉が閉まるような音が、した。 |