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オーストリアさんとお買い物に出て、青くてきれいな、(持っていたそれとは違うものだけど)マグカップも買って。
楽器店の前で少し待っていてもらえますか?と言われて、店の外で待っていると、遠くから名前を呼ぶ声が聞こえた。

「ハンガリーさん!」
最初は聞き間違いかなって思ったんだけど、やっぱり聞こえて。見渡すと、おーい、と大きく手を振る姿!

「イタちゃん!」
満面の笑顔を浮かべる茶色の頭に手を振り返す。
走ってきてこんにちは!と大きな声で挨拶してくれる彼は、よく知る姿のまま、で。
「久しぶり!ハンガリーさんに会えてとってもうれしいよ!元気だった?」
「もちろん!イタちゃんも元気そうね?」
「えへへー。今ドイツから逃げてきたとこー。」
「また?後が怖いわよー?」
はぐー。と手を伸ばしてくる彼とハグを交わして、頬ではなく額にキスをしてあげた。
えへへ。と笑う彼の顔を見ていると、やっぱり元気になってくる。

「今日はどうしたの?」
「オーストリアさんとお買い物。」
後ろを振り返ると、お店の人と話し込む彼の姿。
あー、そっか、今オーストリアさんのとこにいるんだっけ、と聞かれてうなずいた。
「オーストリアさんかあ…大丈夫?」
「何が?」
「えーと……厳しくない?」
…ああ。なるほど。怒られてたのはこっちでも一緒なんだ。
「平気よ?優しいもの。」
本当に。…優しくて素敵な人、だ。
「…そう?」
本当?と首をかしげる彼が、本当に不審そうなのに噴き出した。
「イタちゃんは遊んでたから怒られたんじゃないの〜?」
「う…そーかな…。」
「今も逃げてきたとこ、なんでしょう?」
「…うー…。」
困ったような笑顔に、くすくす笑う。


「…よかった。」
「え?」
「ハンガリーさん幸せそうだから。」
心配してたんだ。そう言って、…こういうときに浮かべるのは、男の人って感じの笑顔なのよねえ。かっこいい。

「ありがと。」
心配してくれて。にこ、と笑ってみせると、ハンガリーと後ろから呼ぶ声。
「!オーストリアさん、終わりました?」
「ええ。…行きますよ。」
「え、」
なぜか少し、機嫌悪そうに歩いていってしまう彼に、わわ、とあわてて。
「じゃ、じゃあイタちゃん、また、」
「…オーストリアさん、嫉妬してたのかな…?」
「えっ!?」
「俺がハンガリーさんと楽しそうに話してたから、さ。」

振り返ると、楽しそうなイタちゃんの顔!
「じゃあ、ハンガリーさん、また!」
そう言って走っていく彼に、え、え、し、嫉妬?と慌てることしかできなくて。
「ハンガリー?」
置いていきますよ。そう遠くから呼ぶ声に、とりあえずはい!と答えて走り出した。


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