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「フランスさんの方が上手ですよ…。」
そううつむいて言えば、そんなことないと思うけどな、と言われて、ぎゅ、と握り締めたワイシャツに気付いてそれにほら、洗濯物も残ってるし、と声を上げた。

「…そうだな。」
仕事の邪魔しちゃいけないな。悪い。少し残念そうな声に、心がぎゅう、と締め付けられるのを感じながら、いえ、と首を横に振る。
「じゃあ、お詫びに手伝うことにしよう。」
いつの間にか近づいてきていたフランスさんに、ワイシャツを奪われて、え、でも、とためらったらいいから、ほら、と頭を撫でられた。

…こういうとこ、すごいよなあ…。
人にさらっと気を回せるところが、本当にすごいなあと思う。
腕まくりして、残っていた洗濯物に手を伸ばす姿をぼーっと見てしまって、いやだから僕の仕事なんだってば、とはっとして慌てて隣に並んだ。
ばたばた、と洗濯物の波が揺れる。
フランスさんの隣でハンカチを干しながら、ちら、と見る。楽しそうな横顔。
ぱっと目があって、慌てて前に向き直った。
ふわりと香る清潔なにおい。暖かい日差し。…フランスさんと二人。
「そういえばフランスさん、お仕事は?」
「終わらせてきた。」
こんな風にカナダと一緒に過ごせるなんて、がんばって朝早く行った甲斐あったよ。
なんてセリフに曖昧に笑う。彼のそれはいつでも本気だけれど、誰に対しても一緒だから、対応に困る。
…特別になりたい、なんて言えなくて。
ため息は洗濯物を揺らす風に紛らせて、ぱん、とタオルを引っ張った。

「…なんかこうやって布団干してると、。」
「はい?」
横を見れば、楽しそうな顔!
「新婚さんみたいだな。」


思わず、シャツに顔を埋めそうになった。
…さらっと心臓がとまりそうなこと言わないでくださいよ、もう…。


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