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ぱんぱん、とタオルを干す。…いい天気だ。もう太陽はだいぶ高くあがってしまっているけれど。…ちょっと、寝坊しただけ。うん、ちょっと。
フランスさんはもう仕事に行ってしまったみたいでいなかった。…今日早いって言ってたもんなあ…それでも用意してある朝食にちょっと申し訳ない気分になった。


洗濯物の清潔なにおいが広がる。ふわり、風になびいて、考えてたこともその風に流された。
いいなあ。乾いたら飛び込みたいなあ。そんな風に思って笑いながら、干していく。今日はちょっと量が多いから急がなきゃ。そう思うけれど、なんだかのんびり、してしまいそう。本当にいい天気!

ついつい、小さく、メロディを口ずさむ。らら、ら、と声にしてから、何だっけこれ、と記憶を探った。
…ああ、そうだ。フランスさんのとこの古いラブソングだ。洗濯物干すときに、フランスさんがよく歌ってた。懐かしい歌。彼が歌っていた後ろ姿を、あ、そうか。つい昨日も見たから。懐かしいなって。

移ってるなあ。そう思って苦笑。らら、ら。記憶としては曖昧なのに、耳が覚えているのだろう。こんな歌詞だったっけ、とか思いながら、口が勝手に正確に歌っていく感じ。ふわふわした甘い歌を、歌って。
Yシャツを綺麗に干して、ら、らら、と最後のフレーズを歌い終わる。
後ろから、ぱちぱち、と拍手の音が聞こえた。えっ!?と思って慌てて振り返ると、笑ったフランスさんがそこにはいて!
「え、え!」
「歌、上手いんだな。知らなかった。」
にこやかな笑顔に、聞かれてた、と気付いて顔が一気に熱くなる。
「い、やあの、そんな…」
上手なんかじゃ全然ない。音痴、ではないと思うんだけど、くらいで。フランスさんの方がずっと上手だ。なのに彼は、楽しそうに人差し指を立てて。
「もう一曲聞きたいなあ。」
「え、ええ…?」


そんな、頼むって、と言われても…


「…一曲だけですよ?」
「フランスさんの方が上手ですよ…」