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ふわふわと頭を撫でる優しい温度を感じた。

ゆっくり目を開けると、目の前に青。
「おはよう。よく寝てたな。」
彼の声だ。…寝起きなのか少し低い、かっこいい声。
でも、寝てた…寝てた?僕が?でも、さっきまで。
「僕夕飯の後かたづけ、してましたよね…?」
あ。なんか声がうまく出ない。舌足らずな発音に首を傾げると、吹き出すような笑い声。そんなおかしなこと言ったつもりは、ないんだけど…

「カナダ…どんな夢見てたんだ?」
一晩ぐっすり眠り込んでたけど。…って…僕寝てた、の?
じゃあさっきの、は。
「…夢。」
つぶやくけれど、それにしてはとても、とても長くて鮮明な夢だった。…いろんなことがあって、泣いて笑って、それで。
…彼が好きで好きで、仕方なくて。

「…フランスさん、」
「ん?」
どうした?聞かれて、けれど答えることもできなくて。
胸が一杯になる。息をするのも苦しいくらいに。彼への思いで一杯になって、それを伝えたいのに、言葉にしたいのに、出てこない。代わりに一筋、涙が流れた。

「何泣いてるの。」
困ったような笑顔。涙を拭う指。その暖かさに思わず抱きついて。
「…フランス、さん、」
声が上擦った。泣きそうな声だ、ああでも、もう泣いてるんだけど。
「なあに?」
子供に対するような、彼の声。いや、彼は結構僕を子供扱いするけど。いつものことだけど。
でも今はなんだかそれがうれしくて、きゅう、と力を入れてる。よしよし、と頭を撫でられ、少しだけ胸が楽になった。

だから、彼を見上げて。その愛しい愛しいサファイアに。
愛の言葉を囁こうと、息を吸った。


『胸一杯のこの気持ちを』End!




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