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「お待たせしました、スーさん!」
走ってきたフィンランドの姿に、その髪に手を伸ばすスウェーデン。
走ったせいか、髪留めに絡んだ髪をほどいて。
「あ、ありがとうございます」
微笑んだフィンランドにうなずいて、そっとその手を掴んで歩き出した。
それに遅れないように着いていきながら、はにかんで笑う。
今日は二人きりでデートだ。


「行ったですよ。」
小さな声にこくんとうなずく少女。
曲がり角に隠れてこそこそ両親の後をつけているのは、シーランドとアリシアだ。
「では大追跡開始です!」
おー。と拳を小さく突き上げたシーランドは、誰を?とすぐ近くで囁かれた声にびくりと震えて。
「わ!…ぁ。」
大声を出しかけた彼の口をふさぎ、気付かれるだろ!と焦った顔を見せた人物に、シーランドはぱちり、と瞬いて。

「…マックス?」
「よ。」
ひらひらと手を振る後ろに、ルキーノの姿もある。
「こんなとこで何してるの?」
もっともなアリシアの質問に、だって近くまできたから家寄ってみようと思ったら、なんか楽しいことしてるからつけてきた。とあっさり。
「で?誰の大追跡?」
「パパと、ママです!」
「スウェーデンさんとフィンランドさん…?あ、ほんまや。」
さっきまで見ていた先に二人の姿を見つけたルキーノが呟く。
「何でまた。」
「だって…。」
「ちょ!追いかけな角曲がるで!」
ルキーノの声にはっとして、慌てて二人の後を追いかけた。

だって、朝からふたりともこそこそしていたんだ。ちょっとでかけてくるね、と二人わざわざ時間をずらして出て行って。
だから、何をしにいくのか突き止めようって、アリシアと決めたんだ。だから。

「…あ、お店から出て来た。」
「ほんとです…。」
こそこそばれないようについていく。二人がいてよかったと少し思う。悪戯のプロ(?)である二人は、隠れるタイミングとか完璧で。
パパとママは全然気付いていない。

「それにしても、いいのがあってよかったですね。」
「…ん。こっちがシーランド、こっちがアリシア?」
「はい!あ、何かマーク付けておかないと忘れちゃいますね…。」
声と、ごそごそと何かしているのが、見える。
「…何してるんですかねー…。」
「さあ…お、こっち見た。」
こそこそ隠れながら、見る。あ。小さくアリシアが呟いた。
…その手に握られているのは、マグカップだ。
今使っているのは、四人ともばらばらのマグカップだから、4人おそろいなマリアの家がうらやましいとアリシアが言ったのは、つい昨日の夜のこと。
「…あ…。」
「愛されてるな。」
にや。と笑ったマックスの言葉に、当たり前です!と返して。

「今日は、わがまま言っちゃってすみませんでした。仕事忙しいのに…」
「…ん。」
首を横に振るパパに、にこっと満面の笑顔になったママ。そうか、ばらばらに出て行ったのは、仕事が終わってなかったから、なんだ。
「今までは僕のわがままばっかり聞いてもらったんで、今からはスーさんのわがまま聞きますから!」
何でも言ってくださいね!とにっこり笑ったママに、思わずあ。と呟く。
「何?」
ルキーノの声が聞こえるけれど、答える余裕なく慌てて顔をそむけようとしても遅く。

「?スーさ、んんっ!?」
「…うっわ熱烈なちゅー…。」
「…いつもこう…。」


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