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アルバムをめくれば、蘇る思い出。

「うわこれ、何?」
エリが上げた声に、どれ?とみんなでのぞきこむ。
「あー…」
「これですか。」

集合写真だ。披露宴の一幕として撮ったもの。連写された写真。
イタリアくんが段差につまづいて、ドイツさんが巻き込まれて、そこからドミノ式にみんな転んでしまって、ぽかんとした後大爆笑になった、そこまでばっちり写された写真。

「なんというか…昔からこうだったんですねえ。」
ついこの間も似たことありませんでしたっけ?ケイに言われて、あったな、とイギリスさんが笑う。
この間は、ロマーノくんがカナダさん巻き込んで転びかけて、ドイツさんが両方助けて、そこで一悶着あったんでしたっけ。

「…でもママもパパも、幸せそう。」
満面の笑顔で、顔を見合わせている。
「そうですねえ。」
心の底から幸せでないと、できない笑顔だとそう思う。
「ま。一番幸せなのは今だけどな。」
イギリスさんの一言に、顔を上げた子供たちの頭を彼は、くしゃ、と撫でて。

「…ほんとですか?」
「本当はママともうちょっと二人きりがいいなとか思ってるんじゃないの?」
「おまえらな…」
からかうような声に、眉を寄せる彼にくすくす笑った。



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アルバムをめくれば、蘇る思い出。


「パパやりすぎ。」
子供たちの揃った声に、そう思うよね!と立ち上がると隣からえー。とあがる声。
「ただの愛情表現じゃないか。」
「それにしてもやりすぎ。」
「うん。」
見ているのは一枚の写真。披露宴で、フランスさんが僕にキスしてる、写真。しかも、深いの!
ほんとに恥ずかしかったんですからね!と主張しても、うちの旦那様は恥ずかしがるカナもかわいいよなあなんて言い出す始末!もう!

「パパ、人が嫌がることしちゃいけないんだよ。」
「さすがにこれはほんとにやりすぎ。」
「キスなんていつものことだろ?」
肩をすくめる彼にそういう問題じゃありません!と言おうとしたら、そのまえにそうじゃなくて、と重なる声。

「キスじゃなくてこっち。」
二人が指すのは、写真に直接は写っていない、体の向こう側。…僕の腰あたりに、フランスさんの手が写ってる。
「?なに?」
「さて。この手は何してるんでしょうね。」
手?手は、腰に回って、白い布を持ち上げている。
そうまるで、スカートをめくりあげているように……って!

「ふ、フランスさんっ!?」
「バレたか。」
笑い事じゃないですよ!怒鳴ったら、一瞬でやめたって。さすがにやりすぎかと思って。と全然反省してない表情!
「この時点でもうやりすぎ。」
「そうよパパ。」
「そうか?」
セーフだって、と笑う彼に向き直る。

「…フランスさん、ちょっとそこに直ってください。」
淡々と、お説教タイムの開始を告げて、旦那様を冷たい目で見た。

「…あー…カナダさん怒ってマスカ?」
「いいから。早く。」



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アルバムをめくれば、蘇る思い出。


「お母様泣いてます。」
その声に、はい?と顔を上げると、うわほんとだ、とマックスの声。

「何々。」
のぞき込むと、そこには、一枚の写真。
「あー…。」
「え、え、私泣きましたっけ?」
それは、一つの写真。泣きじゃくってる私にオーストリアさんが慌ててる。ってだれこんなの撮ったの!
…ウェディングドレス…ってことは、結婚式の写真よね?
泣いた覚え…ないんだけど…。

「泣いてましたよ。大泣きしてました。」
「えええええっ!?」
泣いたっけ、そんな覚えは全くない、けど…
「私がピアノ弾いた後ですよ。」
「え?あ、ああ!」
思い出した。そういえばぼろ泣きした!
「えっ父さんが泣かしたんだ!」
「…その言い方は何か違うと思うんですけど…」
「事実だろ?」
「…事実ですが。」
「いやその別に、オーストリアさんのせいじゃ…」
ないとは言い切れないんだけど。だって結婚式であんな、優しい曲弾いてこれからよろしくお願いしますってそれは泣くしかないと思うんですけど!

「でも、お母様幸せそうですね。」
泣いていてもとても幸せそうだというベアトリクスに、そりゃあ幸せだもの。と彼女の頭を撫でる。
「オーストリアさんと一緒にいられて、あなたたちに出会えて。これ以上の幸せがある?」

ね?と言うと、三人はどこか似た、照れた表情で笑った。



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アルバムをめくれば、蘇る思い出。


「わあ!ママ綺麗!」
「本当に。天使みたいだ。」
「ありがと、マリア、ガヴィ」
三人が話しているのを見つけて、足を向ける。囲んでいるのは…なんだ、写真か?

「何を見ているんだ?」
「あ、ドイツ。ほらこれ、懐かしくない?」
イタリアが見せてくるのは、やはり写真だ。
白いドレスに身を包んだイタリアを、俺が抱き上げている。

「懐かしいな。結婚式の写真か。」
「そう!覚えてる?」
「当たり前だろう。」
覚えている。忘れるわけがない。
「母さん綺麗だった?」
ガブリエルの言葉に、んん、と少しだけ悩んでから、素直にうなずいた。家族相手に誤魔化したって仕方がない、か。
「とても綺麗だった。…が、心臓が止まるかと思った。」
派手に転けたり、いろいろ落としかけたり。まったく…いくつ心臓があっても足りなそうだ。

「ヴェー…ごめん…」
この、抱き上げたのもそうだ。イタリアが段差につまずきそうになるから、慌てて抱き上げたのだ。こいつには日本の結婚式のときの前科があるからな!

「まったく…おまえは危なっかしすぎる。少しは気をつけろ」
「大丈夫だよ〜」
「どこがだ!」
「だってドイツがいるもん。」
だったら、大丈夫でしょう?うれしそうににこにこ笑うから思わず、う、と言葉に詰まる。
「それに、今はガヴィもマリアも一緒だもん。絶対大丈夫!」
ね!というイタリアに、困ったように、どこか嬉しそうに顔を見合わせる子供たち。
「うーん…」
「そうじゃなくてさ、母さん…」
助けるのは当たり前だ。みんなこいつが大好きだから。
だから、頼ってくれるのもとても嬉しい、んだが。そういう話ではなくて。えー助けてくれないの?なんて言うイタリアに弱ったのか、助けを求める2対の瞳。

ため息をひとつ。笑っているイタリアの頭に軽くげんこつを落とした。
「いたっ」
「そういう問題ではない!あまり心配をかけるなと言っているんだ!」
「ヴェー…気をつけます」
よし。…まあ、そうは言っても、まだまだ気苦労は絶えないのだろうけれど。




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アルバムをめくれば、蘇る思い出。


白いウェディングドレス姿の俺と、タキシード姿のスペインが並んで写る写真。
普通の結婚式の、写真、だ。

「普通だね。」
「普通やな。」
ううむ。と悩む二人に、問いかける。

「普通で何が不満だ。」
「だって父さんが母さんにちょっかい出してない写真って珍しくない?」
…ううむ。反論できないのが悔しい。
というか、写真自体が少ないんだけど。撮るときに限って抱き上げたりキスしたりしてくるんだ、こいつは。だから、ぶれたり、俺が怒鳴ってたり。まともに残せる写真が少ないのだ。
だから、こんな、肩を抱く、くらいしかしていない写真は珍しい。
照れるわーなんて馬鹿な声が隣から聞こえるから足を踏んでおく。

「痛い…」
「結婚式なんて大イベントじゃない。何かしててもおかしくないのに。」
…いやまあ。したんだけどな。誓いのキスでディープキス、とか。でもわざわざ子供たちに言うことじゃないので黙っておく。
「何でなん?父さん。」
ルキーノの言葉に、んーとスペインが答える。
「んー…ほんまはお姫様だっこしよかなーと思ったんやけど。」
言われて思い出す。そういや直前に馬鹿弟たちがしてたな。それでか?
「階段やったから。」
「へ?あ、ほんまや。」
確かにこの写真撮ったのは、階段だった、けど。
「ロマーノ暴れて、もし足踏み外したら危ないやろ?おなかにはルキーノもおったし。」
普通のとこやったら絶対大丈夫やけど。そういう彼に、意外と気は回るんだよなあこいつ、とちょっと感心。
「へー…」
「あ、そっか。お兄ちゃんもういるんだっけ。」
「そうやで?お、これルキーノやん」
「え、この赤ちゃん!?」
「俺!?」
「そうだぞ。昔は小さかったからなあ」
「ほんまになあ。」


1ページ1ページ、めくれば蘇る、思い出。新しくわかること。


ほんとは、さっきの写真撮ったとき、なんにもしないんだなあとちょっとしょんぼりしたのは、スペインには一生内緒だ。



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仲のいいご姉妹ですねって言われたの〜

ねー。にこにこ笑う二人にそうか、と呟く。
よかったね、2人とも。ガブリエルの声。

二人で買い物に行った先でそう言われたらしい。うれしいなーと笑うイタリア。
イタリアはとても幼く見えるし、マリアは、イタリアより大人びた服を好むから、大人に見えるし。
よく似た姉妹、にも確かに見える。

かわいらしい二人の様子に少しなごんで。幸せそうなのはいいことだ。
「マリア、かわいい妹さんですねーって言われたよね。」
「ママも、綺麗なお姉さんですねって言われたよねえ。」
お互いを見るその顔は、そっくり、だ。顔も、表情も、姿勢さえも。
似たもの親子、だなと、今更ながらに思って。

「あの褒めてくれたお兄さんたち、食事でも一緒にって言ってたけど、親子だって知ったらどうするんだろうね?」
「ねえ。」
「ちょっと待て!」
それはナンパと言うんじゃないのか、と思わず声を荒げた。






妹さんですかって、言われた。

ぼそり、とそう言ったロマーノに、はあ。とつぶやく。
どうやら、ルキーノの出かけた先で、店員さんににっこり、と、そう言われたらしい。

まあ身長も逆転して、スーツやったらまだしも、ロマーノはワンピースで、ルキーノは仕事帰りにロマーノ見つけて荷物持ち、やからスーツやし。そりゃあ、兄妹に見えたっておかしくないだろう。

「…で?」
「なんか負けた気がする…っ!」
…何に負けてん。何に。
それがさっぱりわからん。
そう思うのに、その場にいたルキーノはそうは思わないらしい。
「ふふん、勝った〜かあさんに勝った〜」
「あああちくしょー!」
…なんか盛り上がってるなあ。

呆れて二人を眺めながら。
小さく呟く。
「似たもの親子やなあ…。」
目の前で言い争う2人は、同じ顔で同じ表情をしていた。








お兄さんですかって言われた。

そう、言われてああ。とつぶやく。
「エリの、ですか。」
彼はこっくりとうなずいて。
夕食の買い出しに、エリと、荷物持ちでイギリスさんが家を出たのは少し前のこと。

ご婦人が落とした荷物を拾ったそのときに、言われたのだという。
まあ、確かに。イギリスさんの外見では、エリと同じくらいの年にしか見えないだろう。

「私も、ケイといるとたまに言われますよ。」
「…なんて返したらいいのか、困るな。」
…確かに。
親子です、と言ったら、おいくつなんですかって聞かれそうだし。ええまあ、といつもはごまかしてしまっていたけれど。
「それで、どうしてうれしそうなんですか?」
頬が緩んで仕方ないといった表情の彼に尋ねる。

「…かわいい妹さんですねって。」
「…なるほど。」
それは、うれしい。

だって、自分の子供が誉められることは、まるで自分のことのようにうれしい!
やっと分かった原因に、つい、私まで頬が緩んだ。







お兄さんですかって、言われたんだけど。

聞きたいことがある、と言われてなんですか?と返したらこの言葉。はあ。とつぶやいて。
「リリーってカナ似だよな…?」
「…すみませんフランスさん、なんの話かわからないです。」

説明を求めると、ああ、悪い、と一言。
どうやら、リリーと出かけたときにそう言われたらしい。
「似てないと思うんだけどなあ…」
フランスさんの不思議そうな声。
「そうですか?似てると思いますけど。」
「えー?」
例えば輪郭とか。髪の色とか、ふとした仕草とか。フランスさんそっくりだなあと思うところはたくさんあるのだ。
兄妹のうちでも、特にリリーはフランスさんによく似てると、僕は思う。
やっぱり男の子だからかなあ。

「…似てる?」
「親子ですから」
笑うと、そーいう顔やっぱカナの方が似てると思うんだけどな、と首を傾げていた。






お姉さんですかって、言われたんです!

うきうきしたハンガリーの言葉に、なるほど、と微笑む。

ハンガリーは若く見えるし、マックスはハンガリーによく似ている。2人で買い物をしていたら、兄弟に間違えられてもおかしくないだろう。
下手すると、ハンガリーの方が若く見られるかもしれない。マックスは身長も肩幅もあるから。
…まあでも、それはないか。マックスは、家族の前だとどこか甘えたな部分があるから。子供っぽい、と言った方が正しいかもしれないけれど。

しかしそれでも、成人男性と、少し上くらいの、成人女性。
親子だ、と言う方がきっと、驚かれる。

「私もまだまだ捨てたもんじゃないですね〜。」
年若く見られたのがよっぽどうれしいらしい。うきうきした彼女に、まあ幸せそうだからいいですかね。と苦笑して。

その様子を、ソファの背もたれに腕を引っ掛けながら、呆れた表情でマックスが眺めて。


「…年考えたらお姉さんっていうよりおば」
「それ以上言ったらタダじゃ置かないわよマックス。」
一気に絶対零度まで冷え込んだ声に、なんでもありませんお母様。と、マックスは慌てて頭を下げた。






妹さんですかって、言われたんですけど。
そう言ったら、しばらく何も言わない時間のあと。

「…。」
ぷす。
「あっ、あー!今笑いました!?」
ひどいですよスーさん!僕本気でショックなんですからね!
怒鳴る僕を目の端に、スーさんはつぼにはまったのか、口元を押さえ、ふるふると肩を震わせる。

「もおお!」
「…ん。怒んなぃ」
頭を撫でられる。そうやって子供みたいに扱わないでください!
「自分でもわかってるんですよう…アリシアの方が背も高いし大人っぽいしかっこいいし…。」

ほんとうに。成長するにつれてスーさんに似てきた彼女は、とても美人だ。
身長だって僕より高いし。
でもね、だからって「妹さんですか?」って僕のほうが言われるのってやっぱりなんか納得いかない!

「僕そんなに子供っぽいですかね…」
「ん…めんごい。」
ありがとうございます。スーさんにそう、はは、と笑って。
はああ、とため息をついた。







ご姉妹ですか?って言われたんやし。

飴をなめながら、言うポーランドに、へえ。と呟く。

まあ、よく似たこの親子は、確かに年の離れた姉妹にも見えるかも。
髪型とか仕草とか表情とか、あらゆるところがそっくりだから。
ただまあ、レジーナの方が子供に見えるのは、そりゃあ子供、だから、なんだけど。
親子、というよりは確かに、並んで歩いてると姉妹、か。

っていうかポー…頼むからそんなミニスカで出かけないでよもう…
だいぶ諦めたけど。この子がそういうお願い聞いてくれたことないのはわかってるし。
「多分、俺より店員の人の方が若かったけど、かわいいですねって!」
そんな格好するから幼く見られるんだよもう…。
まあそれがうれしいんだから止まらないんだろうけど。


「でなー、かわいいですね、一本ずつどうぞって。」
「2人にひとつずつ、おまけで飴くれたんだ。ポー、レジーナ、お礼は言った?」
「ちゃんと言ったし!」
なー。と顔を見合わせて、首をかしげる、その仕草の角度まで一緒だ!
くすくすと笑っていたら、目の前につきだされる、ピンク色の棒付きキャンディ。

「ん?」
「もう一本もらってきた。」
「え、僕に?」
こくん、とうなずく2人に、ありがとう。と笑って受け取った。