.



「…まだましだな。」

「何が。」
不機嫌丸出しの声でロマーノが問うと、おまえとイタリア、なんてペアになってなくて、だ。と返事。
待ち伏せしていたはずが、一瞬のミスで、ばれて。
逃げる際にとっさに二手に分かれた、その別れ方が。

スペイン、ヴェネチアーノと。
…よりによってじゃがいもと俺…。
ああもう腹が立つ!嫌いなんだよこいつは!

「…よし。イタリア兄」
「なんだよ!」
どうせ俺に引っ込んでろとか言うんだろ!だいたいみんなそんなだ!
…足手まといなのはわかってるけど。
…スペインなら。うまく、フォローしてくれるのに。

「あれ、狙えるか」
「…、は?」
一瞬、なんて言われたのかわからなく、なった。
「あれだ、あの看板」
それをどう聞き違えたのか、じゃがいもが指さすから、その先を見る。
「あー…まあ、たぶん」
この距離なら、大丈夫だろ…ってそうじゃなくて!

「何で俺に?」
「ここに狙撃手はおまえしかいないだろう。」
何を当たり前のことをみたいな顔して言うなちくしょー!
「だって、外したら!」
「外さないんだろう?」
さら、と言われ、言葉が出なくて、瞬く。

「外さないんじゃなくて、撃たない。ただそれだけなんだろう?」
兄ちゃんの銃は一発必中だよ。そうイタリアが言っていたぞ。
…たしかに、それは。俺のポリシーだけれど。
「イタリアが信じているなら、俺も信じる。」
それだけだ。…って。さらっと言うから。
なんだか、むかつくのかなんなのかでもやっとしたので、とりあえずその足蹴り飛ばして、銃を構えた。

「当てりゃいいんだろうが!」
「、ああ。」
それだけ聞けば、後は集中するだけ。



(このあとぎゃあぎゃあうるさいから敵が集まってきたりで大騒ぎ。)




戻る

















































.

ドアを開くと、カウンターにはイタリアの姿。

「あ。フランス兄ちゃんおはよー!」
「おはよう。日本来てるか?」
ずっと借りていた本を持ってきたんだけど。
まあ日本は朝来るの早いから、依頼入ってなきゃいるだろうな。
「二階にいるよ?」
ほら、やっぱり。ありがとな、と声をかけ、とんとんとん、と階段を上がる。

休憩室をのぞいてもいないから、応接室か?と首を傾げて。

こここん、とリズムをつけてノック。返事を待たずにドアを開き。
「日本、これ…」
ばっちりと、目があった。

一瞬後、おっじゃましました〜とドアを閉める。
「ちょ、待てこらなんか勘違いしてるだろてめぇ!」
「見てない見てない。」
イギリスが日本押し倒してるとこなんて、とからかうように言ってやるとやっぱ勘違いしてるじゃねーか!と背中の向こうのドアの向こうからイギリスの怒鳴り声。

勘違いなんかしてないさ。どうせイギリスがつまずいてソファに座ってた日本の上に倒れ込んだ、とかだろ?
けどこんなからかう機会滅多にないんだからとことん遊んでからにしないと、なあ。
だんだんとたたく音も聞こえるけれど、ついでに楽しいので鍵に手を伸ばして、鍵をかけてしまう。壊れてて中からじゃ開かないんだよなあ。知ってるけど。

とりあえずみんなに言いふらしてやろ、と笑った。



戻る
















































.
…そろそろ寝ようかって言いながら、彼が僕の部屋まで来て頭を撫でてくれるのは、僕に心当たりがなければ。…フランスさんが不安になってる証拠。

「…フランスさん」
「ん?」
「いいんですか?」
ベッドサイドのランプを消そうとしている彼に声をかける。昼のことだ。彼に来客があったのは。
すると彼は、こまったように笑って。
「気になる?」
「…いいえ。…って言ったら嘘になりますかね。」
見上げると、ゆっくりベッドに腰掛ける。
「…昔の話だ。」
あの人とは昔から馬が合わなくて。家飛び出して。…帰ってこいと言われても、今更、だし。
…少し迷いの含んだ、声だ。気づいてないかもだけど。
「…行ってきてもいいですよ?」
声をかけると、彼はけど、と言った。
へたするとこの街へ帰ってこれなくなるかもしれない。それが気になるのだろう。

「僕は大丈夫ですよ。」
「…しかし、」
「そのかわり。」
三つ、約束してください。そう言って、にっこり笑ってみせる。
「1、一人で行こうとしない。イギリスさんとか日本さんとかだれかと行ってください。2、僕に遠慮しないでください。自分のしたいようにしてください。3、」
息を吸って、声が震えたりしないように。
「いってらっしゃい、って言わせてくださいね。」
黙って行かないでくださいよ、絶対。と言えば、彼は目を丸くして。
「カナダ…」
「それだけ守っていただけたら、後はあなたの好きにしてください。」
ね?と言うと、彼はしばらく目を閉じて。

「…3、は守れないかも」
「え、」
「だって、一緒に行くのに行ってらっしゃい、は変だろ?」
「………へ?」
ぱちぱちと思わず瞬いて彼を見つめると、さっさと行ってつっぱねてくるから、付いてきて。お願いします。と真剣な声。

「…僕のこと、気にしなくても、」
「カナダが隣にいてくれた方が勇気がわくから。…ダメか?」
そう言われて、あわてて首を横に振った。まさか!ダメなんじゃない。ただちょっと、びっくりして。

「じゃあ、よろしく。俺のかわいいバディ。」
久しぶりに二人旅だなと笑う彼に、こちらこそ、と微笑んだ。


戻る
















































.
「めんどくせー…」
「ロマーノ!」

怒られた。
むっとしながら、ぶつぶつと歩く。
仕事だ。仕事っていうのはわかっているけれど。…めんどうくさい…。

「木数えて回れってなんだそれ!」
「しゃーないやん。重要やで?」
植物のこと調べるのは。と言いながら木を見上げるスペインに、こんな細かい仕事オーストリアとかじゃがいもとかの方が得意だろ、と言いながら後ろをついてまわる。
「とっとと終わらせて帰ろうぜ」
「やったら手伝ってや、ロマーノ…」
木の種類を書類に書き込む彼を後ろから覗き込む。

「違うだろ」
「ん?」
「これ。あすなろ。」
ぺち、と木肌に触れる。さっき書き込んだ木、だ。
「え、マジで?あ、ほんまや…」
間違えた、と書き直す彼を見ながらしっかりしろよ、とためいき。
そして、スペインがにやにやしているのに気づいてなんだよ、と眉を寄せる。

「やっぱロマーノが適任やって、これ。」
「は?」
「うちのギルドで一番植物好きやん。」
こんな木の違いなんかオーストリアとか絶対見分けられへんで?という声。
「ロマーノじゃないと、きっと間違いだらけやったやろうなあ。」
さすがロマーノやな。なんてのんびりした言葉。
…俺じゃないと、ダメだ、なんて。
さらりと言うその言葉に、…泣きそうになっているのに気づかれないように、早く終わらせろちくしょーとその背中を蹴りつけた。




戻る













































.

「もういいかい?」
節を付けて言うと、遠くからまあだだよー!の声。まだかあ。じゃあもうちょっと。

「何やってるんだ?カナダ。」
不思議そうな声に振り向くと、フランスさんの姿。
「先帰るって、ギルド出たのに…」
こんな街の真ん中で。言われて、苦笑。
「子供たちに捕まりまして…」
カナダだー!お仕事は?終わったの?じゃあ遊ぼー遊ぼー!
わあわあ、と大人数で騒がれて、その勢いに流され、一緒にかくれんぼ。ちなみに、だるまさんが転んだが終わってからの第2ラウンド、だ。

「子供って強いですね…」
元気だし、勢いすごいし。
ため息をつくと、そりゃあな、と苦笑い。
「とくにこの街の子供らはなあ…」
小さい頃から、イタリアさんやロマーノさんとかも巻き込んで遊んでいたからだろうか。ギルドの全員を遊び仲間だと思っているようなのだ。
元気でやかましい彼らをどうにかできるのは、オーストリアさんとイギリスさんだけだ。
だから、仕事中は怒られるとわかっているから、その間は見かけてもがんばってねー!って声かけてくれるだけなんだけど、仕事後は容赦ない。彼らが満足するまで離してはくれないのだ。

「はあ…ま、がんばれ」
じゃあお兄さんは見つかる前に逃げよっかなあとくるりと背を向けた彼に、ずるい、と声を上げる前に。

「あー!フランスだあ!」
後ろからかかった声に、振り返ると。
目をきらきらさせた子供たちの姿!

「…遅かったか…」
ばたばた駆けてくる彼らの姿に、ため息をついた彼にご愁傷様です、とつぶやいた。



(子供たちに一番人気はドイツ(なんだかんだいって真剣につきあってくれる)、二番フランス(いろんなことして見せてくれる)、三番イタリア(一緒になって遊ぶ側)みたいな。)




戻る