*遊郭パロです。人名表記です ロマーノ→花魁スペイン→客です。 なのにロマーノ男です。 どんと来い!という豪気な方は、どうぞ 「…アントーニョ、抱いてくれよ。」 しゅる、と着物を肩から半分落とした。 「…ロヴィーノ、そういうのは無しやって言うたやろ?」 困ったような表情に、最後なんだろ、と言ってやる。 顔が、凍り付いた。 「知らないとでも思ってたのか?」 思わず苦笑する。 「今日で、最後なんだろ。通ってくるの」 口軽すぎるんだよ、ばあか。そう笑って、着物をバサリと肩から落とす。体をさらす。彼の目が、大きく見開かれた。 …こんな風に、誰かを誘うなんて、初めてだ。 「最後に、一度だけでいい。だから、」 抱いて。 言葉の最後は、初めての口づけに飲み込まれた 「あ…っ、や、だぁ…!」 「痛い?」 首を横に振る。痛くはない。というか、もともと多少のことには耐性がある。痛いのあんま好きじゃないけど。 けど。でも。これは、ひどい。なんて。 「ひぁっ」 「ここ気持ちええ?」 弱いところを何度も何度もさすられて。 ひどい男だと思った。なんてひどい男なんだろう。 最後なのに、こんなに優しく、慈しむように愛撫を繰り返すなんて。こんな風にされたら、忘れられなくなるのに! 記憶を抱いたまま、ほかの奴に抱かれろというんだろうか。こいつは。 「あ、あっ、あ!」 「ロヴィーノ。」 優しい声に名前を呼ばれて、唇を重ねられて、涙が出そうになった。壊れ物に触れるかのように体を這う手。こんなに優しくされたのは初めてだ。行為に溺れる、なんて、今まであり得なかったのに。 「ふぁ、アン、トーニョ…っ」 腕を伸ばして、彼に抱きつく。頭がくらくらする。まだ軽く愛撫されているだけなのに、すぐにイってしまいそうだ。 「ロヴィーノ、めっちゃ綺麗…」 首を横に振る。綺麗なんかじゃない。汚れてる。なのに、彼は、ほんまに綺麗やで、と囁いて。 「あ、あっやっ…ひあ!」 ぐちゅ、と自身を握り込まれて、いやいやと首を横に振る 「嫌?」 「ダメ、もう、イきそう…ひっ!?」 達しそうだと訴えたら、ぱくりとくわえ込まれた。大慌てで頭を引きはがそうと手を伸ばした瞬間、ずず、と吸い上げられる。 限界なんかとっくに越していた体が、そんな強い刺激に耐えられるわけがない。 「や、あああっ!」 高い声を上げて、達してしまった。 体を弛緩させていると、ごくん、と音。 「っ!?」 ばっと見ると、アントーニョは口に手を当てて眉をしかめていた。 「苦…」 「当たり前だ馬鹿そんなもん飲むな!」 「けど、ロヴィーノの味や」 うれしそうに言われて、かああ、と顔が火照った。 けれど、やられっぱなしは性に合わない。 体を起こして、どないしたん?なんてきょとんとしているアントーニョの腰のあたりにかがみ込んで、唇を彼の自身に寄せた。「え、ロヴィ、っ!」 立ち上がったそれは、完全に口に含むのが難しいくらいに大きい。 けれど、舌でなめあげてから、くわえ込んだ。 口の中に広がる苦み。嫌いで嫌いで仕方なかった行為のはずなのに、アントーニョのだと思うと、嫌じゃなかった。 頭上からもれる押し殺した声が、聞こえる。感じてくれてる証拠で、うれしい。 手も使って硬くなったそれを愛撫していると、する、と腰を撫でられた。 「っ!」 手が這っていく。向かう先が、わかってしまって、期待に震えた。 つつ、と秘部の入り口を撫でられる。 それだけで崩れ落ちそうになった。 必死で、すがりつくように愛撫を続けると、つぷ、と中に入ってくるのがわかる。探るように、壁を広げられて。 「ん…ふ…っ」 鼻にかかった声が出てしまう。 だんだん、くわえているのさえ苦しくなってきて、一度口を離した。 途端に弱いところを探り当てられる。 「あああっ」 「ん、ここ?」 「や、やめ、そんな、あ、あ、あっ」 ぐりぐりと責め立てられ、首を振る。気持ちよすぎる。後ろだけでイってしまいそうだ! 「あ、アントーニョ、も、もう…!」 「イきそう?」 縦に振ると、彼は笑った。ええよ。そう言って、自身に手を伸ばされ、嫌だ、と首を横に振る。 「ロヴィーノ?」 「…っ、一緒、がいい。」 もう、入れて、と目の前にあるアントーニョのを舐めると、わかった、と低い熱に浮かされた声がした。 「あ、あ、あ…っ!」 ずりずりと、ゆっくりと入ってくる。視界がちかちかする。強すぎる快楽が怖くて、彼にしがみついた。 「ロ、ヴィーノ…痛くない?つらくない?」 こくこくうなずいたが、半分嘘だ。痛くはない。けれど、つらい。 気持ちよければいいほど、幸せなら幸せなほど、つらい。 これが、最後、だから。 動くで、と声がした。最初はゆっくり、奥まで入れて、入り口まで抜かれて。 だんだんと速くなってくる、それに受け止めることしかできなくなる。 突き上げられる度に口が開きそうになって、唇を噛んだ。 言えるはずのないことばがもれてしまいそうだったからだ。 行かないで。置いていかないで。俺も連れて行って。離れたくない。一人にしないで。 …好き、だ。世界で一番好きだ。 「ロヴィーノ…っ」 名前を呼ばれ、言えない言葉の代わりに、涙がこぼれた。 ぼろぼろぼろぼろ。あふれて止まらなくなる。 「ア、ントーニョ、」 なんとか名前を呼ぶと、唇を重ねられる。情熱的な口づけに、まるで俺が欲しいと言わんばかりのそれに、また涙があふれた。 それから、強く深く何度も求められて、ついには意識が飛んだ。 目を覚ますと、部屋にはすっかり朝の日差しが差し込んでいた。 部屋を見回すと、彼の姿はもうなく。 朝一番にお出になられました。そう妹分に言われ、そうか、と返す自分の声があまりに平然としていて、自分でも驚いた。 涙は出なかった。 昨日の晩、あの夢の夜に、一生分泣き尽くしてしまったようだった。 「おまえに身請けの話が来た。」 主人にそう言われ、思わずはあ?と変な声を上げてしまった。 「…冗談?」 「本当の話だ。…しかも、」 相手は殿様だという。んなばかな。そんなお偉方を相手にした覚えなどない。 「…本当に俺か?」 こくり、とうなずかれて、もの好きなやつもいるもんだな…と小さくぼやく。 「愛想もない床入りもしたがらないで有名な俺を、身請け?もの好き、てか狂ってるな」 「…わかってると思うが」 「選択権なんか、別に望んじゃいねーよ、ちくしょーが」 むしろ、会ってみたくもあった。そんな変人になら。小さく笑って、立ち上がる。 そして、ふと気がついた。 表面だけじゃない笑みを浮かべたのなんか、あいつがいたころ以来だ。 「…潮時、かな」 過去にふたをして、未来を見る時がきた、ということかもしれない。 来るはずのない人を待つのには、もう疲れた。 身なりを整え、障子の前に立つ。 この向こうに、例の変人がいる。 どんな変態おやじか、と思って、障子に手をかけ、 ようとした途端に障子がすぱんと開いて突然の出来事に対応しきれず倒れ込んだら、しっかり抱き留められた。 謝ろうと口を開く前に、何故かぎゅうう、と抱きしめられた。 何だ!?と思っていると、耳元で、声。 「ロヴィーノ」 息が、止まった。 だって。だって、そんな。あれから、来なかったから、ああもう来ないんだって。諦めなきゃいけないんだってそう思って。 けど諦めきれなくて、どうしても忘れられなくて、それでもって。思っていたのに、なんで。 「なんでおまえがここにいるんだよ、アントーニョっ…!」 顔を上げる。泣きそうに微笑んでいるのは、間違いなくアントーニョで。 「迎えに来てん」 「迎え…って、」 そう言われてはっとした。そうだ、俺は、身請けに来た奴に会いに来たはずで。 そう思っていたら、アントーニョの着物が目に入った。 俺でも知っているような、このあたりの城主の家紋の入った、羽織。 「!?ま、まさか身請けに来た殿様って、」 「俺やで?」 あっさり言われて、声が出なくなった。 「ほんまは継ぐ気なかったんやけど、ロヴィーノ引き取ろう思ったら、金いるし、それに、楽させたりたいなぁって思って。」 家出していた家というか城に戻り、年老いた父親の代わりに城主の位についたのだという。 「それで、準備整ったから、迎えに来てん。」 ごめんな、もうちょっと早よ来るつもりやったんやけど。 彼の言葉を、頭が処理できない。 つまり、ということは?いったいどういうことだ? 混乱したまま見上げると、だからな、と頬を撫でられた。 「ロヴィーノは、これからずうっと俺と一緒に暮らすんや。」 涙が、こぼれた。 あの夜以来何があっても流れなかった涙が、ぼろぼろと溢れ出す。 「ロヴィーノ」 呼ばれて、背中に腕を回して抱きついた。 こんな、こと、こんな素晴らしいことがあり得るなんて! 「…アン、トーニョ…!」 すり寄っても消えない。爪を立てても目は覚めない。 これは夢じゃない。ゆめなんかよりずっとずっといい現実だ! 「俺のとこおいで。な、ロヴィーノ。」 そう言われて、うなずいた。 何度も何度も、うなずいた。 戻る |