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ドアを開けると、いつもどおりの光景。
すたすた歩いて、ベッドに倒れ込む。
ここに来るのも久しぶりだ。…まぁ、サボりまくってたツケが帰ってきた感じだから、仕方なかったのだけれど。
そして来てみればスペインはまだ仕事中で、『ごめんな〜シエスタして待っといて』とすまなそうに言うからしょーがねーな、と寝室にやってきたのだ。
シーツに顔を埋める。…スペインの匂い。何だかほっとして、寝よ、ともそもそ服を脱ぎ出す。
肌に触れる、冷たいシーツの感触。

『大丈夫。すぐあったかくなる。…ロマーノの熱で。』

びく、と体が震えた。思い出しちゃいけない記憶を思い出して、しまった。

『ロマーノ、…シたい。あかん?』
耳元で囁かれると、ぞくぞくしてしまう。そのまま弱い耳を舐められることも、よくある。ぐちゅり、と水音がして。いたたまれなくて。

慌てて首を横に振った。寝ようと思っていたのに。こんなんじゃ。…でも。
自分の体を見下ろす。
『…立ってる。一人でせえへんかったん?』
シた。シたけど、何度達しても、もの足りなくてくすぶった感情を持てあましたまま、寝てしまうことが多かった。
は、と息を吐く。
記憶だけなら、どうにかなる。けれど。
『…ロマーノ、』
匂いがする。スペインの。体を抱き込まれてるときのような。それが、もう、だめだった。

ぐちぐちと、自身を上下に扱く。
「…はっ…」
『気持ちええ?』
頭の中で声がする。首を横に振る。気持ちいいのは気持ちいい。…でも、足りなくて。
そっと、後ろに先走りで濡れた手を伸ばしてみる。
収縮する入り口に触れて、いつも怖くて入れられないそこが、けれど、熱い、と小さく笑うスペインを思い出したら、指がする、と中に入った。
「あっ…!スペイ、ン…!」
入ってしまえば、後はスペインの指の動きを真似るように、指が動いた。弱いところを攻め立てるように。耳に、卑猥な水音
「…スペイン…っ」
呼ぶけれど、違う。指の長さが、太さが。指を増やしても、欲しい感覚じゃない。その違和感に、焦れて腰を揺らした。

それでも、体は正直で、得られる快楽にどんどん高まっていって、弱い先の方に爪を立てると、ひぁん、と声が出た。
もう少し、あとちょっと。だんだん何も考えられなくなっていく頭を振って、スペイン、と呼んだ。
『ロマーノ』
うっすらと目を開ける。けれど、スペインがいるわけもなくて。
ぐちぐち、と音に高ぶっていく体がもう少しなのに、でも自分の指じゃ足りなくて、泣きそうになってしまう。

そのとき。視界の端に、ドアが見えた。開いた、ドア。その向こうに……足。
…ま、さか、そんな。
こわごわと顔を上げていく、と。
見開かれた、オリーブの瞳と、目があった。

見られた…!

ざあっと全身が羞恥で震える。
その感覚が、最後の一押しになって、甲高い声を上げて達してしまった。


何も言えなかった。言えるわけがなかった!こんな、だって、見られ、て、スペインの家でシてる俺が悪いのかもしれないけど、だって!
顔をシーツに埋めたままぐるぐる考えていると、ぐい、と腕を引かれた。

自分の吐き出したもので濡れた手に、ねっとりと、湿った感覚。
慌てて顔を上げると、スペインが、指を一本一本丁寧になめあげていて。
ぞくん、と背中がしびれた。
「…ええもん見たなぁ…我慢できひんかったん?」
抱き寄せられて、スペインの体温に泣きそうになった。恥ずかしい。でも同時に、足りなかった部分がうめられていく。体温、声。匂いだけじゃ足りなかったスペインを、もっと感じたくてしがみつく。
「…もう立ってる。」
指摘されて、腰をすり付けるように動かしていた自分に気がついた。かっと体が熱くなるけれど、その感覚さえ快楽に変わってしまって。

「ロマーノ?」
「…も、スペイン、して、欲しい。」
くすぶっていた熱が、会えなかった間に蓄積されたそれが、一気に体を熱くした。
足りないところを、うめてほしい。一人じゃ、できないから。二人じゃないと、スペインじゃ、ないと。
「スペインが、いい。シて。」
恥ずかしいけれど、我慢できなくて、顔を見上げてそう言うと、スペインはごくり、とのどを鳴らした。


指で中をえぐられ、声が漏れた。気持ちいい。自分では届かなかったところを、的確に刺激される。
「…今日はやけに素直やね…そんなに欲しかった?」
「…るせーよ、ちくしょ、あっ、そこ…!」
首を振る。気持ちいい。よすぎて、もうどうしていいかわからなかった。久しぶりだから?そういう気分だから?…スペイン、だから。
「…スペイン…っ!」
欲しい。スペインが、欲しかった。どうしても。足りなくて。奥が、うずく。
「欲しい…っ」
欲しいんだ。スペイン。そう涙の浮かんだ瞳で見上げた。
一瞬、スペインの顔から表情が消えた。
抱きしめられて、ずるり、とあてがわれて、中に入ってくる。あまりの快楽に、声が出る。つらい。気持ちいい。弱い部分を擦りあげられて、涙が出た。
「…っ、ロマーノ…!」
呼ばれて、スペイン、と呼んだ。熱に浮かれた声。自分の声とは思えない、それに余計に煽られる。
奥まで穿たれて、しがみついた。キスして、と言えば、深い口づけ。苦しいほどに与えられる、足りなかった存在をむさぼる。

ず、と早く強く擦られると、それだけで、イってしまった。びくびくと震える体を、気遣うように動きを緩やかにするスペインに、もっと、とねだる。
「っ、ロマ、」
「もっと、…足りな、あああっ」
言った途端に律動が早くなって、的確に奥を捉えるそれに、背中を反らした。入れられればそれにあわせて広がり、引き出されれば嫌だとばかりにしめつける、中の動きの制御なんか、すごいうねる、なんて言われて羞恥を感じてもどうにかなんてできそうになかった。

快楽を追い求めて高まっていく体。ロマーノ、もう、なんて切羽詰まった声が聞こえてしまえば、我慢なんてできるわけもなくて。
一気に駆け上がる快楽に、意識を手放した。


スペインが上機嫌だ。
「気持ち悪いぞ、このやろ…」
「何言うてもええで〜今日は許したる。」

もうほんまかわいかった。ありえへんくらいかわいかった。そう、スペインはにこにこしていて、ここで何か言い返しても、むしかえされてもっかいしよ、なんて言われたら冗談じゃなかったので、無言で通す。というか、もう言い返す気力はなかった。あえぎすぎでのどは痛いし腰にも鈍痛が走っているし泣きすぎでか頭は痛いし。

悪いのは、あんなに求めた俺か、調子に乗って意識を飛ばした俺を起こして何度も何度も何度もしたスペインか。

…明らかな気がしたが、まぁ、許してやろう。今は気分がいいから、何だっていい。スペインがいてくれるなら。
「…スペイン」
名前を呼んだ。
なんや?と返ってくる返事と、頭をなでる感覚を楽しみたかっただけなのだけれど、ついでなので、腹が減ったぞ、ちくしょーと言った。

夕食は、トマトソースのピザとパスタで決定だ。

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※性描写のある文章につき、ご注意ください。
あと人名呼びしてます





ちゅ、と降ってくる口付けに何も言えなくなるのは、いつものこと。
なんだかいつもそれで誤魔化されている気分になってしまうが、好きなんだから仕方ない。

「ロマーノ、…ロヴィーノ。」
低く呼ばれて、ぞわり、と背筋が震える。「こう呼ばれんの好き?」
小さく、うなずく。イタリアの片割れの『ロマーノ』ではなく、ただ一つの存在である『ロヴィーノ』。
とくに、スペイン…アントーニョに、そう、呼ばれるの、は、ツラい。ツラい、というか、弱い。

認めて欲しいただ一人に、自分の名前を呼ばれるのは、本当に、ダメだ。反則だ。

「ロヴィーノ、顔上げて」
名前を呼ばれると、何でもしてしまいそうになる。いつも、おかしくなってしまう。ぐちゃぐちゃになって悶えて乱れて、最後には理性も何も失って卑猥なことを叫んで記憶を失ってしまう。
それが、怖い。自分が自分でなくなる感覚。何度経験しても、慣れない感覚。

ぎゅ、と目を閉じて顔を上げると、額にキスされた。
「怖がらんでも大丈夫やで?」
ああ、ちくしょー。変なところで勘のいいやつ。普段もこうだったら苦労しねーのに…

ちょっと悔しくなって睨みあげると、頭をぐりぐりなでられた。
それから、抱きしめられる。強く、強く。

「好きや、ロヴィーノ、めっちゃ好き。世界一、好き。愛してる。」
恋人にTe amo.と熱く囁かれて、うれしくないやつなんかいるわけないだろ!
真っ赤になって、頭をスペインに押し付ける。
「…俺も、だ、ちくしょー。」
囁くような声しか出ないのは、仕方がない。これで精一杯だ。
「うん。知ってる。…やから、全部俺に任せて?」
する、と、手が伸ばされた。耳の後ろをなでられる。
俺がここが弱いとわかっていてこんなことをするのだから、ずるい。
何もいえなくなってしまうと、熱情に火がついてしまうと知っている、くせに!

「ん…っ」
「こんなとこ弱いなんて、猫みたいやなぁ…」
くすくす、と笑われて、睨みつける。
すると、かわいい〜とキスが降ってきた。それから、ベッドに組み敷かれる。
スペインは上に乗ったままシャツを脱いだ。引き締まった体が現れる。
期待に、思わず喉が鳴った。

「好きやで、ロヴィーノ」
熱の籠もった、低い声。
ああ、だめだ。それだけでイってしまいそう!
「…ペイン、」
かすれた声が、想像していたよりずっと熱を帯びていて、うろたえてしまう。
スペインは、す、と頬に手を当てて。
顔が触れるほど近くに寄せられて。

「あかんわ反則そんな期待されたら答えるしかないやん」
一気にそう言って、貪るように、深く口づけを交わした。




「んあああっ!」
スペインのを勢いよく入れられた瞬間、何も考えられなくなった。腹にかかる、粘る液体。全身に力が入って、ぶる、と震える。
ゆっくりと弛緩した体を撫でられ、んう、と声が漏れる。

「…は、入れただけ、やで?」
「ち、くしょ…」
わかっている。けれど、耐えられなかった。久しぶりの大きさ、感覚。
イったばかりなのに快楽を貪ろうと、中が収縮するのが止められない。

「あ、あ…アン、トーニョ…っ」
ぐちゅり、腰を揺らして早く、と急かす。「エロ…」
はぁ、と息をついて、抜けるほど自身を引いて、一気に奥まで貫かれた!
声が止まらない。気持ちいい。
「や、あぁっ!アントーニョっ!」
「は…ロ、ヴィーノ…っ」

ぐちゃぐちゃと音が響く中、名前を呼んで、呼ばれて。腕を回して、抱きしめられて、噛みつくようにキスを交わして。

もっと欲しい、このまま、混ざり合って一つになれたらいいのに。思いながら、舌を絡め、中を締める
「っ、ロ、ヴィ」
余裕のない声に、ゾクゾクと背中が震えて。

ずん、と何度も深く貫かれて、涙を流しながらもっとと中を締める。欲しい。もっと欲しい。いくらでも。どれだけもらっても足りない。もっともっともっと!

「あ、あっあ、アントーニョっ!」
声が上擦る。もう無理だ。イきそう、と訴える
「っ俺も…限界…っ」
そう言った途端に激しく動かされて、目の前が真っ白になった。自分の口から、甲高い声がもれる。

低い声とともに、中に吐き出されるそれを、感じたところで、意識が遠のいた。




「気持ちよかった?」
「んなこと聞くんじゃねーよこのやろーっ!!」
がす、と頭突きを食らわすのは、終わった後の恒例行事。

「いたた…もー…終わったとこなんやからもうちょいムードとか…」
「うるせー!だいたいおまえがあんなこといっつも聞くから…!」
「やって〜…いっつも気持ちよくしてやろ、って思ってんのに、自分のことで一杯になってまうから…」
情けないな、俺ーと笑うスペインにかあ、と顔が熱くなる。

なぁ、ロマーノ、どうなん?
そう尋ねられ、くる、と背を向ける。
「スペインの馬鹿やろー」
ひどいわーとか言う声にかぶせるように、そ、そんなの!と怒鳴る。

「き、きもち、いいに、決まってんだろうが、ちくしょー!」
言わなくてもわかれ!と叫ぶと、一瞬の間のあと、後ろから強く抱きしめられた。
「ロマーノ、ごめん」
いきなり謝られて、は?と思っていると、後ろから押しつけられる、腰の、あたり、に、何か…
「もっかいつきあって。」
「!!ふ、ふざけん」
「ロヴィーノ。」

こういうときに限って名前呼ぶなんて、欲しい、なんて、熱のこもった声で言うなんて、ああくそ!

このまま流されるのは何だか悔しかったから、振り向いて抱きついたスペインの体を、ぎぎぎ、と爪でひっかいてやった。


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