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「ロマーノ!一緒に入ろー!」
がちゃんと風呂場のドアを開けたら、勝手に開けんなこのやろー!と顔面に何か固くてそこそこ重いもの(たぶんシャンプー)が飛んで来た。

ふざけんな何でおまえと入らないといけないんだええやんかあ昔はいっつも一緒やったしそれとこれとは話が別だこのやろー!
と、なんだかんだあったが、最終的にロマーノのお許しをもぎとって、現在わしゃわしゃとロマーノの髪の毛洗い中。

「なごむわー。ロマーノちっちゃいころはよくこうやって一緒に入ったやんなあ。」
どんなに忙しくても一緒にお風呂に入る。遠くに行っているとき以外は、ずっとそうしてきた。
ロマーノは泡が目にしみるだの水が冷たいだのなかなかわがままの多い子だけれど、慣れれば、大人しくちょこーんと座っているのがもうかわいくて。
「…いつの話だこのやろー…。」
どんだけ昔のことだと思ってやがる、と呆れた口調で言われた。
「あ、そうやんな。最近は終わったあととか一緒にはい(がす)…痛い…。」
余計なことは言うな、らしい。殴られたところをさすって、乱暴はあかんねんで、と言ってから、わしゃわしゃと泡を立てる。

ロマーノの髪は、キレイだ。というか、ロマーノという存在がキレイだ。幼いころは、かわええ、だったそれが、成長していくにつれて本当に、もうこの世界に他にいないほどに美しくなった。ちょっと物憂げに考え事とかしていると、まるでこの世のものとは思えなくて、声をかけるのもためらってしまう。

考え事をしながら髪を洗っていたら、びく、とロマーノの体が震えた。
しまった、何かしてしまったか、と慌てて謝ろうとして。
「…は、あ…。」
少々ロマーノの様子がおかしいのに気がついた。
上気した頬。荒い息。
…まるで、情事の最中のような。
何で?と思っていたら、目に入ったのは、自分が今触れている頭。
特徴あるくせ毛が、指の下にあるのを見つけて。
いつもなら、それに触るなと頭突きをいただくから、避けていたのだけれど、考え事をしていたせいで触れてしまっていたようだ。
手を動かすと、またびくん、と跳ねる体。
…ふーん?
「どないしたんロマーノ?」
平静を装って尋ねて、な、んでもねーよ、ちくしょーという強がりな言葉が返ってきて、小さく笑う。
別に苛めるつもりはまったくないんだけれど。でも。
…しゃーないやんな。ロマーノが色っぽいのが悪い。
責任転嫁して、ばれないように微笑んで、わざと、けれどそれがばれないように、そっとくるんに触れて、反応を楽しんだ。

それを知る由もないロマーノは、耐えるのに必死だった。
馬鹿スペイン…!どこ触ってやがる!
そう声を上げようと思ったのだ。最初は。
けれど、口を開いたら、とんでもない声が出そうで、怖くて、止めることすらできなくて。
体が震える。声が漏れそうになる。それを必死で押さえることしかできなくて、されるがまま。くるんに与えられる刺激に、ただ感じることしかできなくて。
「流すでー。」
のんきな声がそう告げて、やっと解放される、と息をつく。
目を閉じると、頭の上からざああとシャワーをかけられる。流れていく泡。
シャワーをどけ、よし終わりーと声を上げた後で、なあ、ロマーノ。と呼ばれた。何だよ、と閉じていた目を開く。
ものすごくやなこと考えてる笑顔。
「これ、感じるん?」
「え、ちょ…っ!」
ざあああ、とシャワーがまた頭に向けられる。頭というか、頭の一部というか、くるんに…!
「ひっ…!」
「あ、やっぱ感じるんや。」
「や、やめろ、馬鹿…っ!」
水圧が、指とか、舌とかとは違う快楽をもたらす、嫌だ、と逃げようとしたら、ぐい、と腰を引き戻された。そのまま、シャワーが下に下りていく。

「っ離せ、スペイン…っあ!」
「胸もあかんの?」
くすくすと楽しそうな笑い声が後ろからする。
けれどそれどころじゃなかった。
「や、ん…っんん…!」
突起を撫でるみたいに、上下に振られて、嫌だと首を横に振る。我慢していたおかげで、すっかり敏感になってしまった体。それには、シャワーのかすかな刺激も強すぎて。
「す、すぺいん。」
やめて欲しくて声を出したはずなのに、意外と甘えるような声が出てしまって、慌てて口を閉じる。そうしたら、何、もっと?と楽しそうに言われて、違う、と首を横に振るのに、シャワーは下に下がりだして、スペインの手をつかんで止めようとしても、快楽で力の抜けた手ではどうにもできなくて。
「あっ、んぁ…!」
自身にシャワーが、水圧が。その感覚に、止めるはずだった手でスペインにすがりついた。

かわええなあ。思いながら、すがりついてくるロマーノを見る。
眉の寄せられた表情は、それでも、快楽に酔いしれるそれで、耐えられないのか腰が揺れている。
根元から先端まで、上下に動かしてやれば、また、くねくねと腰が踊る。やばい。エロい。こっちがやられてしまいそうだ。
思わずつばを飲み込むと、すぺいん、と呼ばれた。甘えるような、こういうことしているときしか聞けない声。なに?とできるだけ優しく尋ねる。
「…ち、直接触れ、このやろー…。」
シャワーの水音に負けそうなほど小声。しかも命令口調。それでももう愛しくて仕方がなくて、シャワーをさっさと止め、自分の膝の上に向かい合わせになるようにロマーノを抱き上げた。
一気に近づいた距離。すぐ近くで目があって、自然と唇を重ねる。
しっかりと首に絡められる腕。こういうとこ、ロマーノは甘え上手だと思う。無意識なんだろうけど。言葉にするのとかは苦手なくせに。指摘したら離れていくのをわかっていたから、言いはしないけど。
柔らかい口内を堪能しながら、下に手を伸ばす。水でない液体で濡れた自身に触れると、すり寄せるように腰が動いた。これも無意識だ。指摘して恥ずかしがらせるのもまたいいんだけれど、うっすらと目を開けたら見えた、うっとりと感じている表情があまりに可愛かったので、やめておく。
ゆっくりと、上下に扱いて、くぐもった声を上げさせてから、手のスピードを上げて追い立てる。
「ん、んんっ!んあ…!」
苦しかったのか、首を横に振って唇が離された。は、と息を吐く彼の額にキスをして、あ、あ、と上がり始めた声を楽しむ。
「あ、あっ、や、スペイン…!」
イってええよ。そう声をかけ、耳に噛み付くと、大きく体が震えた。
びゅくびゅくと、吐き出されるそれで、手が濡れる。
「…は…!」
「かわええ。」
そう言って、ぼす、としなだれかかってくる体を支え、後ろに手を伸ばす。
入り口をつつくと、期待するように収縮するのが、愛しくて。ぎゅう、としがみついてくる濡れた頭にキスをして、負担をかけないようにそっと、指を入れる。
熱い中を探るように愛撫すれば、弱いところにあてようと、腰が揺れた。
「…もっと奥?」
目の前の耳に囁いてやれば、かっと耳が赤くなった。文句の代わりに、首にまわった手にこもる力がとても強くなる。言うな、馬鹿。だろうか。
苦笑して、中が柔らかくなったのを確認してから、指を増やす。
ロマーノは気づいていないだろうが、耳に直接囁くような位置に顔があるから、エロい声が聞こえっぱなしで、もっと聞きたくて、弱いところを攻め立てる。
「ん、あ!あ、ああっ、や、ん…っ!」
すぺいん、…そんな、甘ったるい、熱い声で呼ばないで欲しい。途切れそうな理性を必死でつなぎとめているのに。容赦なく崩そうとする声に、情けなく息を吐いて、何?と尋ねる。
「…。」
またぎゅう、と腕に力がこもった。言えないことらしい。けれど、教えてくれないとわからない。ロマーノ?とうながして、入り口あたりを集中していじる。焦らせば、すぐ我慢できなくなるのは知っているから。だって、こっちだって結構ぎりぎりなのだ。
「んんっ…だ、から…」
ほら。腕の力を緩めて口を開いたロマーノに、ん?と尋ねてやる。うつむいたロマーノの顔を少しのぞきこむ。
「…ぁ、じ、らすな…、も、う、」
大丈夫だから。ぎゅ、と目を閉じて、快楽に耐えるように眉を寄せて、それで、そんなことを言うから。
理性の糸なんか、一発で焼け切れた。

「ん、あ、あ…っ!や、」
「ほら、ロマーノ。力抜いてみ?」
いやいやと首を横に振る。だって、力抜いたら、は、入ってくる。
座ったスペインの上にまたがるように、挿入され(かけ)て、ずるずると入ってくる感覚がやけにリアルで、嫌だ。怖い。
「怖くない。いつも入ってるから。」
ほら。そう、足を開かされる。ぐぐ、と入ってくるそれに、ひゃあ!と思わず声を上げる。快楽に、足から力が抜けていく。それで、余計に入って、もう、やだ、怖い!
「大丈夫やって。ゆっくりでええから。」
それなのに、スペインは結構強引で、問答無用で足を開こうとするから、いやだと声を上げた。そうしたら、しゃーないなあ、と自身を握りこまれる。
「あっ!?」
ぐちぐちと先端をいじくられて、力が入るわけもなくて。ずず、と中を擦るように、入ってくる。
「や、ああ、あ…!」
目尻に浮いた涙を舐め取られる。ほら入ったやろ?なんて、言われたって、受け取ってしまう快楽を処理するのに必死な頭には入ってこない。
「ロマーノ。」
動くで。そう声をかけられ、待ったをかけようとした声は、勢いよく奥まで突き上げられて、意味のない声しか上げなかった。
「ひああ!や、ああああん、深、い…!」
「…は、ロマーノ…!」
愛してるで。誰より好きや。そう囁かれて、しがみついた。俺も好きだ。けど、言葉になんかできなくて、したくても、全部嬌声に変わってしまって。
だから、抱きついた。離さないように、強く。
「…、す、ぺい、ああああっ…!」
何とか呼んだ名前も、弱いところを容赦なく抉る律動に、気持ちよくなっていく体にはもう、発音もできなかった。
ぎゅうう、と中を締め付けて達すると、中で、熱が吐き出されたのがわかった。


「…ロマーノぉ。」
情けない声を上げても、目の前の扉は開かない。
終わった後、ちゃんと後始末もした後で(いや、後始末の最中も)、ロマーノは機嫌を損ねてしまったのか何にもしゃべらなくなって、まっずいかも。とか思っていたら、寝室に入れてもらえなくなりました。
うー。これは今日は無理かなあとか思いながら、それでも、ごめんって、なあ、と声をかけるが、返事はなく。
ため息をついて、扉が見えるように廊下に座り込む。ここは自分の家のはずなのだけれど。主である自分が自分の寝室に入れないってこれいかに。
…けどまあ。帰っていかないとこあたり、嫌われてはいないのだろうけれど。

「…ロマーノ、好きやで。」
そう言ってみる。無音。もう寝ているかもしれない。それでもまあいいか。と苦笑して、好きやで、ともう一度呟く。
「わがままで不器用で素直やなくて。でも、誰より家族思いでがんばり屋で、綺麗でかわいくて。そんなロマーノが、好きで、愛しくて、たまらないんやから。」
愛してる。誰より一番。ずっと、好きなんやで。なあ、ロマーノ。

そう、独り言のように呟くと、かちゃり、と小さな音がした。
お。と思っていると、開かずの扉が開き、は、恥ずかしいこと言ってるんじゃねーよ、ちくしょーと、赤くなった顔がのぞいて。
「…もう、しないか。風呂で、とか。そんな。」
赤くなったまま、こっちを見ないでそう言われて、機嫌を損ねるかも、とわかっていても、約束はできひんかも。と答えた。
「何で…!」
「やってロマーノかわいすぎるんやもん。」
我慢なんかできひんわーと困ったように笑うと、あ、とかう、とか言って、それから、抱きついてきた。
「ロマーノ?」
「…今日は、もう、やだからな。」
何にもしないなら、俺の隣で、寝ても、いい。
そんな許しの言葉をもらって。はあい。としめった頭にキスを落とした。


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38000キリ番リクで、『西ロマでお風呂でにゃんにゃん』でした。

ええと…すみません!思いっきり趣味に走りました!親分視点を入れたのがきっと諸悪の根源…
ちなみに、題名は可愛い子、です。西語。たぶん。

こ、こんなですが、少しでも気に入っていただけるとうれしいです。
ありがとうございました!