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さら、と、触り心地のいい細い髪に指を絡める。
膝の上に頭を乗せて、おだやかな寝息を立てているのは、ロマーノだ。さっきまで、起きていたのだけれど。
「…お疲れ様。」

朝、押しかけてきて、おまえ今日動くな全部俺がやるっ!!って宣言したとおり、彼は全部してくれた。朝食作って、洗濯して、昼食作って、買い物行って、豪華なディナーまで。
まあ、料理以外で不器用なのは相変わらず(こんなんで、イタちゃんと二人暮し大丈夫なんかなあと心配になる。)なので、まあお手伝いはええやろーと言って、料理以外はほとんど俺がやったり、ロマーノに気づかれないようにやりなおしたりしたけど。
それでも、ロマーノはがんばった。もう、百点花丸あげたいくらいに。
あんなに努力とか、嫌いだった子が。

今日は俺の誕生日だからって。

「…かあええ。」
本当にかわいい。もうぎゅーって抱きしめて離したくないくらいに!
でも、起こすのは忍びないので、頭を撫でるだけにとどめる。
プレゼント、なんて思いつかなかった、から。
そう、ロマーノが言って、こうやって家事を全部してくれるようになったのは、何年前の誕生日だっただろう?

朝からやってきて、起きろー!俺が朝飯作ってやったんだから早く食べろっ!とたたき起こされて、にぎやかな一日が始まって。
一生懸命なロマーノの、その全部が自分のためだけに向けられる一日は、もう本当に幸福だ。
失敗しても、それでもがんばる姿が、彼の精一杯のありがとう、と、愛してるだと、知っているから。

「…かあーええ。」
大好きやで、ロマーノ。そう囁いて、髪を撫でる。疲れ果てて眠ってしまった彼は、小さくんう、と声を上げるだけだけど。

また今年もがんばろう。来年、またこうやって、ロマーノと幸せな一日が過ごせるように。
そう、小さく決意して、愛しい彼の額に、キスを落とした。

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※現代パロです。ご注意を




「いえっ…ぐしゅん!」
百年の恋も冷めるくしゃみというのはこーいうのを言うのだろうなあと思った。
「うー…寒。」
「…ばっっっかじゃねーの?」
ひどいわーと言われようが何しようが、どうかんがえても自業自得だ。
「…やってロマーノが、」
「……お、れ、が?」
ぎろり、と睨みつける。いえいえ何でもないです…そう返ってきた返事に、わざとらしくため息。
スペインが悪い。俺は悪くない。だって、あいつが約束忘れて、合コンなんか行くから。いくら数合わせだからって、馬鹿じゃないのか。
で、怒って、謝るスペインを閉め出して鍵かけて。
…日が暮れるまで外で開けるの待ってるなんて、誰が思う?

うーこたつ最高とか言ってもぐりこむスペイン。こいつにしたらおかしいくらい白かった頬が、やっと赤みを帯びてきてほっとため息。
「ロマーノまだ怒っとる?」
しかしスペインはため息を別の意味に取ったらしい。ふん、と鼻で笑って(だってまだ怒ってるのは本当だ)、こたつの上のみかんに手を伸ばす。甘そうなのを選んでむいて、さすがにまるごとはでかいので三等分くらいにわけて、口に運んで。

ちら、と見たら、スペインが馬鹿みたいに口を開けて待っていた。
ちょっと見つめて、その顔があんまりに馬鹿みたいで、なんかおかしくなってきて、大声を出して笑う。
「ちょ、そこまで笑うことないやんか!」
「だ、だっておまえ、っく、くくく…っ!」
あー腹いてえと笑いながら、自分が食べようとしていたみかんを、文句を言おうとしたスペインの口の中に放り込む。
びっくりした顔がまたおもしろくて。
しまいには寝転がって笑い出した俺の隣に、のそのそやってきたスペイン。笑いすぎで溢れた涙を、拭って、額にキスをしてきた。
驚いて、息が詰まった。
「…ごめんな。」
しゅん、とした彼の謝罪に、仕方ないから許してやるか、とため息をついた。
「…条件つきなら許してやってもいいぞ、ちくしょー」
「条件?」


「これおもしろい?」
「そこそこ。…こいつら最近よく見るな。」
「そうやね。…はい、ロマーノ、あーん。」
視線はテレビのまま、言われてつい口を開けたら、入ってくるみかん。
あーんじゃねえよ、俺はみかんの皮むけって言っただけだろうが、だいたいなんだよこの体勢。後ろから抱っこするみたいにしやがって馬鹿。
「熱い」
「そやな、こたつ切ろか」
「そうじゃねえよば」
「はいあーん」
むぐ。
口をみかんで塞がれた。…しょうがないから、みかん一個食べ終わるまでは我慢してやることにした。


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