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※受けさんたちが(本家設定のままで)実は女の子だった!というお話ですので、苦手な方はご注意ください




実は、私、女なんです。
なんて。
お前が前触れなく言うから、思わずカレンダーを確認してしまった。

「今日は四月一日じゃないですよ。」
平然と言われて、あ、ああ。と何とか返す。
「…冗談、だよな?」
おそるおそる見た日本は、笑いもせず、ただお茶菓子の用意をする手を止めない。
「ほんとう、ですよ。」
さらり、と、まるで今日はいい天気ですね、と言うような口調で、日本は言う。

だから、わからなくなった。その言葉を信じていいのか、どうか。

「…そんな、話。」
「なんなら、ご覧になります?」
この着物の、した。そう言われて慌てて首を横に振る。
そうしてから、惜しいことをしたと気がついた。いやまあでも今はそれどころでなくて。

「…本当、なのか。」
確認すると、はい、と日本はさらっとうなずいた。

…そんな話、聞いたこともない。
最初に会ったときは、その小ささに、子供かと思ったのは、事実だが。
ずっと、彼は、いや彼女は、そんなそぶりを見せたことはなくて。
そう、彼、ああ違う彼女、と、ずっと一緒にいた中国も、日本のことは「弟」、と。そう言っていたはずだ。
「…中国は知らないのか?」
「知りませんよ?国のみなさんは、誰も。言ったのは、あなたが初めてですから。」
まあ国民の皆さんには隠しようがないので、何人かには言いましたけど、とか続く言葉が、頭を素通りする。その前のセリフの衝撃が強すぎて。

誰も。そう言ったのか。誰も、知らない、と。
思わず、息を呑んだ。

それに気づいたのか、日本は、やっと、今日初めて、俺を見た。
美しい、夜を閉じ込めたような瞳が、こちらを向いて、す、と細められる。
どくん、と心臓が鳴った。
「…誰も、知りませんよ。知っているのは、世界中であなただけ。」
「……、どう、して。」
俺に、教えたんだ。そう続くはずの言葉は、喉から外に出ない。
のどがからからに渇く。呼吸が浅くなる。
「どうして?どうしてだと、思いますか?」
わからない。出ない言葉の代わりに、首を横に振る。
目は離さない、離せない。黒曜石の輝きから。
「…あなたとなら、本気になってもいい、と思ったんですよ。」

ねえ、イギリスさん。私、あなたが好きなんです。

にこ、と笑った日本の、本日二度目の爆弾発言に、脳の処理能力がおっつかなくなって、眩暈がした。





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実は、僕、女なんです。
なんて。
お前が真剣に言うから、へ?なんて、自分で聞いても間抜けな声が出た。

「え…へ?は?」
「だから…っ、僕、女なんですっ!」
…いやいやいや。だって、そんな。

幼い頃から、カナダのことはよく知っている。知っている、はずだ。
その記憶の中に、まかり間違ってもカナダが女だ、なんてものはない。一つもだ!

「…やっぱり気づいてなかった…。」
「いや、だって。そんな、…は?」
がらがらと、俺の中のカナダ、が崩れていく音がした。
冗談、と思うには、カナダが真剣すぎて。
そんな真剣な表情で嘘をつけるほど、か…彼女は器用じゃない。それも、崩れたカナダの、一部だったら、わからないけれど。

不安気に見てくる視線をとりあえず自分の目を自分の手で塞ぐことでシャットアウトして、はああと深いため息をつく。
「…それ、イギリスとアメリカは…?」
「…知ってます。」

ああ、そうかよ。どうりで、カナダに対するガードがきついと思ったら。なんとなく納得するが、納得できない部分もあって、ちら、と指の隙間からカナダを見る。

…あれ。あれ?

思わず、顔を覆っていた手を、カナダに向かって伸ばしていた。
「…フランスさん?」

どうしたんですか、そう、流暢にフランス語を操る唇は、こんなに赤くてみずみずしかっただろうか。
指先に触れる金髪は、こんなにきらきらと輝いていただろうか。
近くまで寄った俺を見上げる、青い瞳は、こんなに吸い寄せられるような魔力を、持っていただろうか。

我に返ったのは、唇を奪って、真っ赤になったカナダを腕の中に抱きかかえた後だった。





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実は、俺、女なんだ。
なんて。
お前がへら、と笑って言うから、危うく手に持ったカップを落としかけた。

「…っ、ふざけたことを言うな、イタリア。」
何とか落とさなかったカップを机に置きながら、たしなめるように言う。
すると、予想外にまっすぐな瞳がのぞきこんできた。
「ふざけてないよ。嘘だと思うなら、オーストリアさんかハンガリーさんに聞いて。」
イタリアは、人の名前を出してまで嘘をつくような人間ではない。
まして、それが保護者代わりの、厳しいオーストリアの名前だ。信用度は格段に上がる。
……嘘では、ないらしい。信じられないが。
「…おまえ、そんな話、一言も。」
「あんまり言わないほうがいいって、オーストリアさんが。」
「それにしても!」

俺たちは、恋人、という関係のはずだ。
そうなってから、そんなに長くは無いが、短くも無い時間が過ぎている。
なのに、どうして、今更。

そう、口走りそうになって開いた口は、
結局何の音も発しなかった。

気づいてしまったから、だ。
ごめんね、と笑うイタリアの腕が、細かく、震えていることに。

「…それで?」
できるだけ優しい声を出して、そう尋ねる。
「ふえ?」
きょとんとしたイタリアに、手を伸ばす。
びくっと震えたのに、一瞬ためらうが、それでも、抱き寄せた。
細い腰。華奢な体。
…どうして、今まで気づかなかったんだろう。
「だから、どうした?」
「…どう、って、」
「俺が、別れる、なんてと言うとでも思ったか?」
その単語を発した途端、ぎゅ、と目をつむったイタリアに、やっぱりか、と苦笑する。

言いたくて、言えなくて。
ずっとずっと抱え込んで、ここまで来てしまって。
ばれたら、嫌われるんじゃないか。
そんな不安を抱えて、それでも、言おう、と思ってくれたのだろう。

むに、と、頬を引っ張って、イタリア、と呼んだ。
「ど、ドイツ、痛い。」
「…俺がその程度で別れる男だ、なんて疑った罰だ。」
その程度で、おまえを放す訳ないだろう。そう告げると、ひゅ、と息を飲んだイタリアが、じわあ、と涙を浮かべて抱きついてくるのを、優しく抱きしめた。


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アンケートリクより、「男だと思ってたのに実は女だった」

なんパターンか思いついたので詰め合わせでした〜
日本があまりに強い女の子になってしまって、加はかわいらしい感じにしあがったけど、一応ここ独伊サイト!とシメは伊でした〜。
最初は、加の代わりに墺洪で、「女だと思ってたのに実は男だった」を書くつもりだったんですが、明らかに洪墺になってしまったのでやめました。

他のパターンも、要望があれば書くので、言って下さいね!
リクエストありがとうございました!







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※注 全年齢向けとは言い難い表現がありますのでご注意ください。


夜中の来客に、誰だよちくしょー!とドアを開けて、閉めようとしたのに、それより前に足を挟み込まれた。ひっかかって閉まらないドア。
「ひどいわ〜、何で閉めんの?」
へらへら笑って顔を出したのはスペインで、スペインが来た、ということ自体はいいのだが、ドアを閉めてスペインを見なかったことにしたかった理由は。
「まぁ…そんなとこもかわいいんやけど。」
なあ、アモーレ、なんて、キスをしてくるスペインが、ものすごい酒臭いからだ!


酔っ払ったスペインは、本気で手に負えない。ひょい、と抱え上げられた俺は、ベッドに寝かされて、上からスペインがのしかかってくる。
「ロマーノ、かわいい愛しいロマーノ。なんでこんな綺麗なんやろ?」
なあなんで?なんて言いながら、キスをしてくるスペインを、必死に押し返す。
「ふざけんな!俺は眠いんだよ帰れ!」
「イヤや、帰れへん。ずっと、ずーっとロマーノと一緒におる。」
ええやろ?と笑われて、かああ、と頬が熱くなる。
そりゃあ、言葉は、うれしい。
言葉は。

「んなこと…できるわけねーだろーが!」
俺たちは国だから。ずっと、なんて、俺たちがどれだけ望んでも、できない。そんなこと、わかっているから、スペインも普段は言わない。後がつらくなるから。なのに、酔ったスペインは、何度でも言う。…だから、手に負えない。
顔を逸らすと、そんなことつらそーな顔せんといて、と頬を両手で包まれた。
熱すぎる体温と、この酒臭ささえなければ、素直にうれしいんだけど。
「俺らは、そりゃ、ずっと一緒にはいられへん。国やしな。…けどな、ロマーノ。心は一緒におることはできるやろ?」
オリーブの瞳が、優しく細められる。
「心、って、」
呟くと、うなずかれた。
顔を近づけて、額をあわせる。
「俺の心は、永遠にロマーノのもんや。いらんって言っても返品不可やで?」
俺の心かっさらったまま返してくれへんのはロマーノなんやから。なんて、ああくそ!だから酒の匂い邪魔!

「スペイン…」
「ああでも、こんな綺麗な体ほかの奴に触られんの、嫌やな。」
指先が、頬から、首を通って、胸、腰、太股を撫でる。
思わず、ぞくぞくと感じてしまって。
「は…」
「…感じる?」
耳元で囁かれて、慌ててスペインの顔から耳を遠ざける。
くく、と笑い声が、熱くなった耳に響く。
「ロマーノ、痕つけてええ?俺の、って、綺麗な体に、俺の、って印、つけてええ?」
「!だ、「あかん?」
ぎしり、とベッドが鳴る。閉じた両足を割るように、膝を入れられて、心臓がどくどく音を立て出す。
「ダメ、なん?」
そんな熱い声で聞かれて、ダメ、なんて言えるわけがない!
「…っ好きにしろ!」
顔を逸らすと、ありがと、と、近づいてくる。首に、スペインの髪があたって、くすぐったい。
そのうちに、ちり、と鋭い痛みが走って。
す、と羽織っただけのシャツを脱がされて、あ、このままするのか、とどきんとして。はだけた胸元に、口が寄せられて。
ぎゅ、と目を閉じる。



……………。



「…ぐう。」
穏やかな寝息。
「…〜、〜っ〜〜っ!」
声にならない叫び声を上げて、自分の上で眠るスペインを蹴り上げた。

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3000hitリク 朱火様からのリクエストで、「酔っ払い西に口説かれるロマ」でした。
なんか、すごいかわいそうなかんじになってしまいました…ごめんロマ

こんなかんじですが、いかがでしょうか?
リクエストありがとうございました!