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気配をできるだけ消して、本に目を落とすイギリスさんに近寄る。
それから、する、と手をのばして、その首に抱きついて、膝に乗り上げる。
「え、に、日本!?」
「イギリスさんは、私に欲なんかないとお思いみたいですけど。」
私だって、欲しいと思うことはあるんですよ、とゆったりと微笑んで見せる。
わざとらしく腰をすりつけて見ると、目の前でごくり、と喉が鳴った。
可愛らしい。くす、と笑って、その無防備な首に軽く歯を当ててみる。

「に、日本、」
舌で筋をなぞるように、下へ。びく、と手をおいた彼の肩が揺れた。
もう一押し、と思いながら、硬い髪の毛をどかし、耳を露わにして、口付ける。
Please.そう囁くと、彼はさっきより大きく体を揺らせて、耳が真っ赤に染まった。
これで、もう。そう思っていると、小さな声がした。
「…る、のか。」
聞き取れなくて顔を一端離して聞き返す。
耳以上に赤くなった顔。エメラルドが、瞬いて消えて現れ。
「妬いて、るのか?俺が、セーシェルと一緒にいたことに…」
まさか図星を当てられるなんて予想もしていなくて、かっと全身が熱くなった。
ぱっと顔をそらすが、イギリスさんに赤くなったのに気づかれたらしく、なあ、そうなのか?本当にそうなのか?とうれしそうに聞き返される。
「だから、俺が欲しくなった?」
「ち、違います!」
「説得力ない。顔真っ赤だぞ?」
「そ、それは、」
「こんなことしなくても、俺が誰のものか、なんて、日本が一番よく知ってるだろ?」
耳元で熱く囁かれた。いつのまにか、腰に手が回って、逃げられないようにされている。
それでも逃げようとじたばたしていると、日本、かわいい、なんて、それはさっき自分が彼に思っていたことで、ああもう!途中までうまくいってたのに!

「日本。」
呼ばれて、ちら、と見返すと、にっこり笑ったイギリスさんに、抱きしめられて、そのまま上下体を入れ替えられてしまった。この人、細身に見えるが結構力があるのだ。
ぎし、とソファに押し倒されて、笑う彼の顔を見上げる。

「あんなに積極的に誘われたら、期待に応えるしかないだろ。」
頬をなでる手が、そのまま着物のあわせに触れる。
そのまま、抱いてもいいか。なんて聞かないでくださいよもう察してください!というかわかってるくせに楽しそうに聞かないでください意地悪!
「日本。」
急かされて、ええいもう仕方が無い!と腹をくくる。
「…あなたが私のものだって、わからせてください。」
ぎゅ、と抱きついてそう言ったら、一瞬かちんと彼が固まったのがわかって、ざまあみろと思った。


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アンケートリクより「誘いうけな日本」でした。
やってやられてやりかえして、最終的に日本の方が強いけど、ほぼシーソーゲームな英日が大好きです。そんな感じが出てるといいな。

遅くなりましたが、少しでも気に入っていただけたらうれしいです
ありがとうございました!










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好きだったの。世界で一番。
そう、言うイタリアの顔がひどく愛おしげで。
見ていられなくなった。

神聖ローマ、という名前に聞き覚えはあった。歴史書で。…それ以外にも、聞いたことはあった。だれから聞いたのかは、覚えていないけれど。なんだか懐かしい気もした。
「ちょっと怖かったけど、でも優しくて。いろんなこと教えてくれて。」

あれが、恋だったのかなってわかったのは、ずっと後のことだったけど。
そう言う彼に、そうか、と返す。ちょっと怒っているように言ってしまうのは、…大人気ない、か。わかっている。いらついているのは、俺が悪い。わかっている。わかってはいるのだ。見苦しい嫉妬。それを抱くのは勝手だが、イタリアに向けてはいけない。
……でも恋人の前で他の男の話を、それも初恋の相手の話をするイタリアも悪い、と、思う、んだが。

「それでね、」
「イタリア、もういい。」
思わず遮った。これ以上聞いてなんかいられなかった。怒鳴り散らしてしまいそうだった。イタリアを傷つけたくはない。

ヴェ、と瞬いたイタリアは、しばらくじいい、とこっちをみた後、楽しそうに笑って抱きついてきた。
「ヴェ〜」
「な、何だ。」
予想外の反応に眉を寄せるが、イタリアは楽しそうだ。わくわくした顔。ど、どうした、と思わず戸惑った声を上げた。
「ドイツ、やきもち?」
「!」
かっと頬が染まった。な、な、と言うと彼は、えへへ〜ドイツかわいい、と首に腕を回してくる。

「ハンガリーさんの言ってたとおりだ〜」
「は!?」
いきなりでてきた名前に驚いていると、イタリアは、あの子の話してみなさい。そうしたら、わかりやすくやきもちやくから。それだけ、イタちゃんのこと好きってことだから。そう言ってた、というので、ひく、と頬をひきつらせた。
あいつ余計なことを…!
そう思っていると、イタリアはにこにこ笑い、大丈夫だよ、と言った。
「…何が。」
「俺が今好きなのは、ドイツだから。」
だいすき。と抱きつかれた。
それだけで、凝り固まっていた気持ちが溶けていく。穏やかに、優しく。…愛おしく。

強く強く腕の中に抱きしめると、痛いよ、と言われたけれど、ゆるめることなんかできそうになかった。
「…俺のだ、イタリア。」
「…うん。」
すりよってくるイタリアが愛しくて、離せそうになかった。


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アンケートリクより「神羅に嫉妬する独」でした。
こ、こんなかんじかな?でも嫉妬してるさきも自分だったりする、かもしれないからちょっとおもしろいっていう。
伊はきっと、好きなのかなあって不安になってハンガリーさんに相談したんですよ。

遅くなりましたが、少しでも気に入っていただけたらうれしいです。
リクエストありがとうございました!








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いいな、と思った、プレート型のネックレス。
名前入れるわ、と売っていた女の子は笑った。
「これ、恋人と交換すると、永遠に一緒にいられるねんで」
「へえ。」
お兄さんなら、かわいい恋人がいるんでしょ、と彼女に言われて、苦笑した。
残念ながらアレはまったくもってかわいくはない。
どう?と言われて、気に入ってはいたのだけれど、いや、と首を横に振った。
別に金がなかったとかそういうわけじゃない。
…ただ、恋人と、というのができなかっただけ。
だってあいつの名前を刻んでもらうわけには、いかないし。

二人とも、男なんだから。

がちゃん、と何のノックもせずに開けた。
出て行った最初の頃は、ちゃんとチャイムを鳴らしていたのだが、いらんやろ、と怒られたのだ。家族やねんから。おらへんでも、勝手に入ってればええし。まだつきあう前のことだ。だから、家族という表現は嫌だったけれど、でも嬉しかった。
それから、平然と入ることにしている。

ただいまは、まだ言えたことないけれど。

入ってみると、人の気配がしなかった。
スペイン?と呼んでも、答えはない。
「…留守か。」
呟くが気にはしない。
ソファに飛び込んで、寝ころんで待つことにした。


道にあった露天で、プレートネックレスが売っていた。綺麗やなぁ。そう言って、手に取ると、綺麗で細やかなな細工がしてあった。…ロマーノが好きそうだ。
「これ、名前入れて、恋人と交換すると、永遠に一緒にいられるねんで。」
「そうなん?」
へえ、と売り子の女の子の言葉を聞いて、恋人におみやげにどう?と言われ、そやね、二つちょうだい、と笑った。
「名前、なんていれる?」
そう言われて告げたのは。

「…それでええの?」
怪訝そうな表情に、スペインは笑ってうなずいた。


「ただいまーって、あ、ロマーノ。」
声がした。顔を上げると、買い物帰りなのか袋を持ったスペインの姿。
「よう」
そう言って、うまそうなもんあったか、と声をかける。
「みんなうまそうやで?」
ええできや。とスペインは笑う。へえ、と下ろした袋の中をのぞきこむと、そこには確かにおいしそうな食材がたくさん入っていた。…今日は、夕飯作ってやってもいいかも。思いながら、小さく笑う。

「あ、そや。ロマーノ、お土産。」
無造作に投げられたそれを受け取る。
「何だよ…っ!おまえ、これ!」
驚いた。ここにくる途中見つけたやつだった。
「恋人と交換すると、永遠に一緒にいられるねんて」
知ってるよ馬鹿!
慌てて、裏を向ける。まさか、本当に名前を刻んでもらってるんじゃ、
そして目に飛び込んできたのは、こいつの国の言葉でスペイン、で、もっとダメだろーが!と怒鳴った。

「大丈夫大丈夫。思い出の場所やねんって言っといたから。ばれてないばれてない」
へらへら笑うスペインが持ったもうひとつに手を伸ばした。
それには、ローマ=イタリアの文字。
「やって、永遠に一緒におれるおまじないやったら、こっちの方がええやん。」
永遠に一緒に。その言葉に、思わずくらくらする頭を押さえた。
そのとき、まだ文字が入れてあるのに気がついた。さ、と読んで、か、と顔が熱くなる。

あ、気づいた。と思った。ロマーノの顔が真っ赤になったからだ。
「す、ぺいん、これ。」
「間違ってないやろ?」
にこにこ笑うと、ちくしょ、と小さく呟いた。
もうひとつ、入れてもらった言葉。
帰るべき場所、と、そう入れてもらった。
「俺の帰るところは、ロマーノの隣やし、ロマーノの帰るところは、俺の隣、やろ?
ロマーノ。だから、ただいまって言って。おかえりって言うから。何があっても。絶対に。」

ロマーノが、それを言わない理由は、なんとなくわかっていた。言えないのだ。いつか失うことが怖いから。この子は、いつもそうだった。与えられたものを、素直に受け取ることすらできない、不器用な子供。大きくなった、今でも。
居場所を与えられることが怖いのだろう。帰ってくる、安心できる場所。それが、自分の隣であればいいのにと、ずっと思っていた。なのに、ロマーノは頑なにそれを拒んで。受け入れたら、その場所がなくなる、とばかりに。

抱き寄せる。細い体。けれど、幼い頃に比べればずっと大きくなった。
「ロマーノ。」
もう一度、家族になりたい、というのは、願ってはいけないことなんだろうか。今度は、子供や弟ではなく、ずっと一緒にいる伴侶として。
口に出すのは、少し怖かった。だから、言わない。でも、気持ちが伝わるように、抱きしめた。強く。

言ってもいいのか、と思った。怖かった。だって、俺はここを出て、ずっと前に。だから、もうこの家の子ではなくて。
でも、スペインが言った。俺の帰るところは、スペインの隣だって。抱きしめられながら、もらった自分のネックレスを見る。帰るべき場所、そう、刻んであった。スペインの名前とともに。
…これって、プロポーズとか、そういうことなんだろうか?ちょっと思ったけれど、聞くのも怖くて、それに、今はこの幸せをかみしめていたくて、頭を肩にすりつけた。
スペイン。小さく呼んでみる。何?と言うスペインの顔なんて見れなくて、肩に額をつけたまま、何度か口を開いて、閉じて、そして。

「…た、だいま。」
「…ん。おかえり。」


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アンケートリクより「ロマが幸せな話。両サイドから」でした。

プロポーズ、ではないです。だって親分そういうつもりじゃないので。一緒にいてほしいってだけなのですよ!
…まあ、近い未来であるのは事実でしょうが。

遅くなりましたが、こんな感じでいかがでしょうか?少しでも気に入っていただけたらうれしいです。
ありがとうございました!