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パスタを茹でて、ソースを絡める。
野菜を炒めて、味付けして、ええとそれから!

「…イタリア?」
呼ばれて顔を上げると、そこにはぽかんとしたドイツの姿!

「おはよードイツ!」

一端火を止めて、おはようのハグとキス〜と、ドイツに抱きつく。
「あ、ああ…めずらしいな、早起きなんて」
ちゅ、と頬にしてくれたキスに口がいいなぁと思いながら、あのね、お弁当作ってるの、と笑顔で言う。
「弁当?」
「そう、ドイツの!」
「…俺の?」
うん〜とうなずいてみせる。
「今日フランス兄ちゃんのとこで会議でしょ、だから。」
そう言うと、ドイツはあ〜…と呟いて視線をうろつかせるので、もしかして迷惑だった?と不安になりながら尋ねる。

「いや…うれしいのは、うれしいんだが。」
「…が?」
ドイツが呆れながら何かを見まわしているのに気がついて、その視線を追う。

パスタや、魚、お肉、野菜、デザートのケーキやクッキー、フルーツの盛り合わせ。キッチンには並び切らなくなって、そこらじゅうの机や棚の上にまで並んだ、料理の乗った皿。…あれ?

「え、ええと、いろんなもの入れよう、と思って、作ってたんだけど…」
「…作りすぎだろう」
パーティーでもできそうだぞ、どうするんだ、この量、とため息とともに言われた。
「え、えへへ〜…ほんとだね…」
どうしよっか、と見上げると仕方ないな、とドイツが苦笑した。


ただいま、という声に、ドイツ〜!と叫んで出迎えて抱きつく。
イタリア、やっぱりいたのか。と諦めたような声で言われて、それでも抱きしめてくれてうれしくなる。

「イタリア…一回家に帰る、っていう約束は?」
「あっ、忘れてたいたたた痛い痛いドイツ頭ぐりぐりするのやめてっ!」
こめかみをぐーでぐりぐりされてごめんなさい!と慌てて謝る。
やれやれ、とため息をついて、中に入っていくドイツにひっついて一緒に行く。
「ねードイツ、お弁当どうだった?」
「あー…おいしかったぞ?」
「ほんと?よかった!」
けれど、何か疲れているように見えて、どうしたの?と聞くと、フランス兄ちゃんとかイギリスとかにからかわれまくったらしい。
「愛妻弁当だなんだと…」
普段もあれだけ仲がいいと会議が進んでいいんだが、とはぁあ、とドイツはため息。
「ん〜じゃあ、俺ドイツの奥さん?」
言ってみると、かっちん、とドイツは固まった。
「ば…馬鹿なことを言うな!」
怒られた。俺ほんとでもいいのになぁ、とちょっと残念に思う。

晩御飯に、朝作った野菜炒めとか(昼ご飯に食べたり、日持ちのするケーキなんかは日本とかに送ったりしたけど、まだ余ってた)を食べながら、またお弁当作ろうか?と聞いてみる。
今度は作りすぎないように。あと、ドイツの好きなものももっと作れるようにしておいて。

そう考えていたのに、ああ、いや、とそんなに乗り気じゃない返事が返ってきて、嫌なの!?と尋ねると、困ったような顔になった。
「…いや、あのな。」


長くなりそうな電話だと思った時点で、日本はかさかさ、と包みを開けた。…おいしそうなパウンドケーキが姿を現す。
「それで、ドイツさんはなんて言ったんですか?」
電話の向こうの、遙か遠くの友人に尋ねると、あのねー!と元気な声が返ってきた。
『朝起きたとき、俺が隣にいないのは寂しいから、たまにでいいって〜!』
ヴェ〜、と幸せそうな声にくすくす笑って、彼が作りすぎたと送ってきたパウンドケーキを一片食べる。
「…おいしいですね。」
『愛がつまってるから!』
明るい声に、おやおや、のろけられてしまいましたねと穏やかに笑った。


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1000hit記念リクエストより、賀茂様からのリクエストで、「独伊で、イタリアがドイツに愛妻弁当作る話」でした

きっとこのあと二人で早起きして二人でお弁当作ってるんだろうな、とか。なんだかそんな甘ったるい二人になってしまいましたが、少しでも気に入っていただけるとうれしいです。
リクエストありがとうございました!










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フランスさんは、昔から、滅多なことで自分が落ち込んでるとか、そういう負の感情を見せない人だったから。僕のそばにいるときはいつも、優しく微笑んでいてくれる人だったから。
はあ、とため息をつくことさえ珍しかった。

けれど、突然部屋に入ったときとか、こそ、と隠れながら見ていたときとかには、やっぱり、ため息をついて疲れた表情をすることもあって。
それを見たときには、いつもする習慣があった。

座っている彼の足をよじのぼって、その膝に座るのだ。
ただ、座るだけ。椅子の代わりに、ぼすん、と。
本当は、頭をなでたり、ぎゅ、と抱きしめたりしたかったんだけど、小さな体ではそんなことはできなくて、どうしよう、と思ったときに、フランスさんがカナダを抱きしめてるとすごく落ち着く、と言っていたのを思い出して、座りに行ったのが、きっかけ。

座ると、彼はちょっとだけ何もしなくて、それから、ぎゅうう、と苦しいくらいに抱きしめて。
「カナダ。」
いつもより柔らかい声で、名前を呼ぶのだ。
それから、僕の頭に顔をうずめて、甘い匂いがする、と笑って、しばらく黙って。
その間、ちゃんとじっとしていたら、何か作ろうか。何がいい?とにっこり笑ってくれるのだ。


なんとなく、それを思い出した。
ぐったりとソファにもたれかかって、深いため息をついて、天井を眺めているフランスさんに声をかけるか迷っているときに思い出した、習慣。
覚えているかな、フランスさんは。

思いながら、フランスさんに近づく。気配に気づいたのか、フランスさんがこっちを見て、いつもの笑顔を浮かべる。
「カナ。どうかしたのか?」
答えないで、ただ近づいて、カナ?と首をかしげたフランスさんの前でくる、と後ろを向いて、ぼす、とその膝に座った。

小さいころと同じ習慣。ちょっと緊張してしまうのも、昔と同じで。

ふ、と、耳元にかかる息。フランスさんが笑ったみたいだ。そして、腰に腕が回った。
「カナダ。」
柔らかい声と、肩にすり寄せられる顔。
昔と同じなのに、首に触れるひげがちくちくするのがくすぐったい。
「フランスさん、くすぐったいよ。」
「ん〜?」
余計にじょりじょりとすりつけられて、笑いながらいやいやと首を振る。
少し身じろぎするのも苦しいくらい、抱きしめてくる腕は、昔と一緒だ。
「カナダ。」
呼ばれて、返事の代わりに腰に回った手に、自分の手を重ねて、ぎゅっと力を入れる。
ありがとうな。そう、いつもより穏やかな、小さな声が告げるのは、聞こえないふり。

「…何か作ろうか。何がいい?」
しばらくした後、フランスさんが言う言葉が、あまりに昔と同じだから、思わず笑ってしまった。
何?と驚いた表情をするフランスさんに、ホットケーキ、と簡単なおやつをオーダーする。
昔から、これを作るときだけは、カナダも手伝うか?とキッチンに入れてくれるから、少しでも一緒にいたいときは、いつもこれを頼んだ。
「カナは好きだよな、それ。」
じゃあ作るか。そう、言うフランスさんが、腕を解いてくれたから、立ち上がって、先にキッチンに向かう。
と、カナダ、と呼び止められて。

振り向いたら、唇に決して軽くないキス。

「…ふ、フランスさん、」
真っ赤になって口を押さえると、お礼、とフランスさんは、明るくウインクしてみせた。


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1000hit記念リクエストより、ソラ様から、「仏加で、兄ちゃんがカナダをひげでじょりじょりする話(幼少→現代)」
だったんですが、い、いつのまにか落ち込んだ兄ちゃんをカナがなぐさめる話に…あ、あれ…?

こ、こんな感じですが、気に入っていただけるとうれしいです。
リクエストありがとうございました!










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ドイツー、と抱きつくと、はいはい、と諦め気味のため息。
でも、ちゃんと抱きしめてくれるドイツの優しさを、俺は知ってる。
それは、今が仕事中じゃないからだけど。仕事中は、頭なでて、もう少し待ってろ、と言ってくれる。ちゃんと、終わったかな、というタイミングを見計らって、抱きついたら、大当たりだ。

「ドイツ。」
「何だ?」
なんでもない、と答えて、暑いからか、黒いタンクトップ一枚のドイツの肩に顔をすりよせる。
「そうか。」

それだけ答えて、棚からとった本に目を落としたドイツの整った顔をすぐ近くからじいいと見上げる。金髪が、しっかりと後ろになでつけられている。崩したいな、とちょっと思う。
崩してる方が、仕事モードじゃない感じがして、好き。もちろん、仕事モードのときもかっこいいんだけど。

「…本が読みづらいんだが。」
ちら、とこっちを見た蒼い瞳にそういわれて、はあい、とちょっと下に目線を移す。
無防備な、俺なんかより太い首。
す、と筋にそってなでると、くっきりと浮き出た鎖骨にたどりついた。
ドイツは、何やってるんだ、と尋ねてはくるものの、やめさせようともなんともしないので、んーと曖昧な答えを返す。まだ、本に意識が向いているようだ。

目の前に広がる白い肌。俺より北にすんでいるから、だろうか。俺より白くて、綺麗な肌に、手を伸ばす。
黒い服との境界を、そっとなでてみる。

「…っ、おい、イタリア…?」
「なあに?」
「どうした。」
「どうもしないよ?変なドイツ。」

返す間も、何故かその肌から目を離せなくて、じっと見つめる。…赤、が、映えそうだな。白い肌に、赤い、痕。きっとすごく綺麗。そう思って。

鎖骨のあたりに、ちゅ、と吸い付いてみた。

「!!い、イタリア!?」
「んー…うまくつかない…。」
「おい、こら、ちょっ…っ!」

何だか焦ったような声がするな、と他人事のように思いながら、何度も吸い付いてみる。
…やっぱりうまくつかない。それが残念で、ちょっとだけ、と噛み付いてみた。
びく、と肩が震えたのに気づいたけれど、もう少しだけ力を入れて、離れて見る。
今度は、うまくついた。白い肌に赤い痕が綺麗で、満足。
でもちょっと痛そうだったので、ごめんね、と言う代わりに噛んだ場所を舐める。
それから、もうちょっとつけたいな、と思って、今度は首の付け根に噛み付いて。

「…っ!イタリア!」
そしたら、ぐい、と体をはがされて、がくがくと肩を揺すられた。
「おまえ、一体どうしたんだ!」
近くで怒鳴られて、まるで頭を殴られたみたいにぐわん、とした。思わず、口元に手を当てる。
「ど、どいつ、」
「何だ!」
「気持ち悪い…。」
「はっ?」

くた、とドイツの体にもたれかかると、ドイツの手が額に当てられて、おまえかなり熱あるじゃないか!と、怒られた。

その後、薬苦い嫌だ、とわめくイタリアと、苦しいのもいやなんだろうがすぐ治るから飲め!と怒鳴るドイツの攻防が繰り広げられ、根負けしたドイツが、かなりの数のイタリアのおねだりを聞く羽目になるのは、また別のお話。



おまけ

「やだー!苦いのやだー!」
「ええいうるさい!」

おまえは本当に風邪引きか!というほど、イタリアはうるさかった。
けれど、うるさいのも一瞬で、すぐに自分の発した大声に、うう気持ちが悪い目が回る、ときゅう、となって。
やれやれ、と思いながら、イタリア、飲まないと楽にならないぞ?とあやしつける。

「…うう、やだ〜…。」
「…イタリア…。」
はあ、とため息をついて、早く治したいだろう?と尋ねる。
「…苦しいのやだ。」
「だったら、」
「でもドイツがずっと一緒にいてくれるんだったらこのままでいい…。」
布団に半分くらい顔を隠した涙目のイタリアの言葉に、ちょっとぐらっときてしまって…いやいや、そんな場合じゃない。

「治っても一緒にいてやるから。」
「…だって、いっつも仕事って。」
「…ちゃんと治ったら、明日一日ずっと一緒にいてやる。」
約束だ、と頭をなでる。…まだ熱い。ぬるくなってきたタオルを取って、氷水で冷やす。
「…ずっと?」
「ずっとだ。」
「ハグとキスいっぱいしてくれる?」
…まあ、それくらいなら。
「ああ。」
「ジェラートおごってくれる?」
「ああ。」
「俺と一緒にシエスタしてくれる?」
「ああ。」

それから、細かい注文が山のように続くので、ああもう、何でもいうこと聞いてやるから、と言うと、イタリアはきらきらと目を輝かせた。

何だか嫌な予感が、する。

「じゃあ、人前でハグとかちゅーとかしてくれる?あとあと、好きっていっぱい言ってくれる?それからえーと、えっちし」
そこで口を塞いだ。聞いていられない。わかった、わかったから!とコップと薬を手渡す。
やっと素直に受け取って、なのに飲もうとしないイタリアに、眉を寄せると、ドイツー、と呼ばれた。
「何だ。」
「…口移し、して…?」


……仕方が無いな、と引き受けてしまうあたり、俺はイタリアにかなり弱いんだろう、と思った。


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1000hit記念リクエストより、もみじ様のリクエストで、「甘く、優しく、熱くのイタリアver.」でした。
こ、こんな感じでいかがでしょうか?あんまりドイツがどきどきしてる感がでてない気がしますが…はらはら

少しでも気に入っていただけたらうれしいです。
リクエストありがとうございました!