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「わ!日本、本気かい!?」
いきなり声をかけられて、はい?と顔を上げた。目を丸くしたアメリカさんの姿。
「イギリスのスコーン食べるなんて!」
言われて、目の前に並んだスコーンと、紅茶入れてるイギリスさんを眺めて、ああ。と思った。
「レシピ聞いて私が作ったんですけど…」
このスコーン。と言えば、安堵のため息。
「なんだそうか…じゃあ安心だな。俺ももらおーっと」
「アメリカ…てめぇ…」
頬をひくつかせるイギリスさんの言葉に、だってイギリスのスコーンまずいじゃないか!と言いながら、アメリカさんはがたがた椅子を引き寄せて座った。
「いただきまーす。…んん!うまいけどもうちょっと甘い方がおいしいぞ、日本!」
「…それで十分ですよ…」
「おまえは甘くしすぎなんだよ」
「ふぁんふぁほう!」
「食うかしゃべるかどっちかにしろ!」
いつもどおりのにぎやかな様子に思わず笑ってしまった。

そんなに広くない休憩室でこれだけやかましくしていれば、みなさんが集まってくるのもまあ当たり前で。机の周りに増えていく椅子。立つ人垣。
「なになにー?日本の作ったお菓子?食べるー」
「はぁ…なんで作る奴が違うだけでここまで味が違うんだか…ああ、イギリスだから、か?おまえに細かい味の違いがわかるわけないもんなぁ」
「なんだとフランス表に出ろ!」

「まあまあ…あ、僕コーヒー入れてきますね」
「…ふむ。うまいな」
「ありがとうございます。」
ドイツさんの言葉に返しながら、たくさん作ってきて良かった、とこっそり思う。


…本当は、イギリスさんと二人の予定だったんだけれど。…世界会議の合間だし、のんびりできるところなんて休憩室くらいしかないし。ま、こうなることも予想できていた。…ちょっと、残念だけど。

そっと、イギリスさんに入れてもらった紅茶を飲む。…おいしい。ほんとに、この味が出せる人がどうして料理はあんなに…なのだろう。ほう、とため息をついて、自分で作ったスコーンに手を伸ばす。…ふむ。はじめてにしてはそこそこな気がする。

「…あ、日本!口についてるよ」
「えっ」
指摘されて指で拭うのに、そこじゃなくて、とひょい、とイタリアくんが手を伸ばしてきて。
それが届く前に、ぐ、と顔の向きを変えられた。
え、と思っていたら、口元に暖かいものが触れた。
すぐ近くに、鮮やかなエメラルドグリーン。

…舐めとられた、と頭が理解するまで、時間がかかった。

「…っ!」
「!す、すまない!」
顔を真っ赤にしたイギリスさんが飛び退く。がたん、と椅子が倒れる音がした。あまりの出来事に、動けなくなった。ああ顔が熱い!
「…あーあ、ごちそうさまー」
「イタリア、行くぞ」
「はぁい」
「やれやれ見せつけてくれちゃってまぁ…」
がたがたと、みなさんが離れていって、いつのまにやら二人きりにされてしまって。

しん、と静まりかえる部屋の中。
「…あの、」
なんと言っていいかわからなくて、とりあえず口に出したら、もう一度近づいてきた真っ赤なままのイギリスさんに、そっとキスされた。



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74000hit、鈴様からのリクエストで「みんなの前でちゅーの英日編」でした

…ちゅー、ではない、気がしますが…
英は無意識にやりました。無意識って怖い!笑

こんなですが、少しでも気に入っていただけたらうれしいです。
ありがとうございました!

























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フランスさんと、たまに、するケンカ。だいたい、フランスさんが悪い、と思う。覚えてるかぎり。ケンカっていうより、僕が機嫌損ねて、それをフランスさんが直そうと必死な感じ?今回も、そうで。
ぷい、とそっぽを向いて怒ってるんだぞ、と主張する。本当はもう原因さえどうでもいいくらいのことなんだけど。

「…カナダ。」
だいぶへこんだ声。滅多に聞けないそれを聞いて、ばれないように笑って、仕方ないなあとため息をついてみせる。
「仕方ないから許してあげます。」
今回が最後ですよ。そう付け足すのもいつものことだ。
「カナ、」
「その代わり。」
ここは、いつもと違うこと。だって、今回は百パーセントフランスさんが悪いんだもの。にこっと笑って見上げると、何?とフランスさんが首を傾げて。
「罰として、今日一日、僕のわがまま全部聞いてくださいね?」


甘い甘いタルトやミルフィーユ、マドレーヌにブリオッシュ!極めつけにメープルコーヒー!
目の前に並んだ、プロのパティシエ顔負けのお菓子の数々に、うわあ!と歓声を上げる。
「ご希望のものはお揃いですか?姫。」
苦笑してこっちを見てくるフランスさんに、くるしゅうない、なんて返してくすくす笑って、フォークを手に取る。
きらきらして宝石みたいで、壊したくないけど、でもその甘い香りに誘われて、さく、とフォークを入れて、口に運ぶ。広がる甘さに、ばたばたと足をばたつかせて。
「おいしい!」
「それはなによりだ。」
「全部食べていいんですよね!」
「お姫様のリクエストですから。」
どうぞ。と手を広げられて、きゃあ!と声を上げた。


子供の頃は、よくしてもらった。会いにきてくれなくて、不機嫌になってぐずったら、よくこうやってお菓子攻撃されたものだ。甘い甘いお菓子を食べていたら、もう自分が怒っていたことなんかどうでもよくなって。

ぱくぱくと口に運ぶ。…甘い。おいしい。どれだけでも食べられそう!
うれしくてにこにこ笑いながら、食べて。
ふと視線を動かすと、楽しそうに見ているフランスさんと目が合った。
「…楽しそうですね?」
「楽しいよ?自分の作ったものをそれだけうれしそうに食べてもらえたら。」
作った甲斐があるってもんだ。そう、フランスさんは微笑んで。

「…フランスさん。あーん。」
「カナダが全部食べていいんだぞ?」
「味見ですほら。」
「今?」
おかしそうに笑いながら、それでも口を開いたフランスさんにフォークを近づけたら、ぱく、と食べられた。
「甘い。」
「お菓子ですもん。」
くすくす、笑いあって。

「ほら、今度はカナの番。」
ひょい、とフォークを奪われて、え、と言っていたら、ほら、どれがいい?と言われて。
「じゃあ…ムース!」
「はいはい。…あーん。」
口をあけたら、食べさせてくれる。甘い味が、とろけるように広がって。
「次は?」
「えーと、」
それから後は、雛鳥よろしくずっと食べさせてもらった。


「満足したか?」
「はい!」
もう本当においしかった!全部食べきって、もう大満足!
今は、フランスさんの膝の上に座っている。頭を撫でる手が、気持ちいい。

「フランスさん。」
「なに?」
なんでもないです、と返事をして、すりよる。抱きかかえるように回される、腕。
「えへへ。」
「ん〜?」
どうした?そう囁かれて、もぞもぞ動いて、フランスさんと向き合うように座りなおす。
「カナ?」
「キス、して?」
言ったら、喜んで、と頬や鼻に降ってくるキス。でも、本当に欲しいとこじゃ、なくて。

「そこだけ?」
すねたような声を出したら、ごめん、と唇にキス。触れるだけのキスを繰り返して、こつん、と額をあわせる。
「…なんか。」
「はい?」
「罰っていうより、ご褒美みたい。」
カナダのわがままは、俺にはあのお菓子より甘いご褒美だよ、なんて囁かれた。
「…じゃあ、ほんとのご褒美いらないですか?」
そうからかうように尋ねる。
「え、何々?」

わくわくしたような瞳になるフランスさんの首に手を回して、口付けた。舌をもぐりこませて、深く。
すぐに主導権なんか奪われてしまうけど、それでいい。
くちゅり、と音を立てて離れる唇。
「…『ご褒美』?」
これが、と尋ねられて、彼の手をとって、自分の心臓の上に重ねる。
「カナダ?」
「僕が、って言ったら、どうします?」
そうしたら、目を丸くして、それから。
「大歓迎。」
そういって、ひょい、と抱き上げられた。

「わわ。」
「行き先はベッドでいいかな?お姫様。」
「他にないんじゃないですか?」
「俺は他でもいいけど?お風呂とか。キッチンとか。もちろんここでも。」
によによ笑ってそんなことを言うから、もう!と背中を叩いて、ベッドがいいです、と擦り寄った。

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77777hit、うちゃうちゃ様からのリクエストで「仏に甘えまくる加」でした。
甘ったるく、と思っていたらお菓子がでてくるという単純思考です。

こんなかんじですが、少しでも気に入っていただけたらうれしいです。
ありがとうございました!





















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※ファミリア!設定ですのでご注意ください


「はーい!ここが京都でーす!」
わあ!と上がった歓声に小さく笑った。

考えてみれば、日本とのつきあいも長い。
「ここも結構来たよね〜」
「そうだな。」
日本を交えて、また、慣れてきたら日本に内緒で、とか。よくしたものだ。
今回は、明日から日本の家で泊まりで仕事だ。
そのまえに、日本を旅行したことのない子供達と京都旅行、ということになったのだ。
欧州とはちがう、景色や雰囲気に、目をきらきらさせる子供達に、苦笑。
「よーし、今日中にいろいろ回るぞー!」
おー!と上がった声に、これは夕方には疲れ果ててるな、と体力温存しておこう、と決めた。


「わあ!金色〜!」
「…本物、じゃないよね?」
「いや。金箔らしいぞ」
「へえ!」
金閣寺、と名前の通り金色の建物を眺める。
「日本ちって地味なの好きな割にこういうとこ派手だよね。」
「そうだな。」
「日本も、ハレギ、っていうんだっけ?ああいう派手な着物も似合うのに〜」
めったに着ないよねぇ、もったいない。と言われて、まあ人の好みだからな、と返す。
「ママはカラフルなの好きだよね!」
「うん好き!」
「私も!」
怪しくなりそうな雲行きに、あまりかさばるもねは買わないからな。荷物になる。とくぎを差す。
「えー、着物は?」
二人重なった声に、ため息。
「明日日本の家まで移動だろう…」
「…むー。」
「…かぶと。」
小さく聞こえた声に、見ればふい、とガブリエルが目をそらして。
…めずらしい。ガブリエルが欲しい、と主張するなんて。しゃがみこんで、目線を合わせる。
「…日本に言って送ってもらうか」
「あっずるーい!」
「ガヴィだけずるいー!」
後ろから飛びかかってくる二人に、わかったわかった!と返す。
「やったー!」
いえーい!とハイタッチする二人に苦笑い。


着物を何枚か買って、ほくほく、とうれしそうな二人に、ため息一つ。
それが隣からのとかぶって、隣を見る。

「…疲れたか?」
「…ちょっと」
女の人は買い物長いね、と苦笑して、少し疲れた顔をする彼を、抱き上げる。
「え、あ、だ、大丈夫だけど…」
「遠慮しなくていいから。」
な。とくしゃくしゃと頭をなでる。小さく、ごめん、と呟く息子の体を、抱きかかえなおして。
「カブトは明日買いに行こうな。」
「ん…」
こくんとうなずいて、あくびをひとつ。

「満足ー!」
「まんぞくー!」
笑顔で土産をたくさん抱えてきた二人に、もういいか?と尋ねる。
「あれ、ガヴィねむい?」
「…ねむくない。」
とはいうものの、目元をこするガブリエルに、そろそろ限界だな、と呟いて。
「ホテル帰る?」
「帰ろう。」
歩き出せば、さっきまで元気だったマリアさえ、ふらふらと歩いていて。

「…イタリア、ガブリエルを。」
「ん」
うとうとと船をこぎだしたガブリエルをイタリアに預けて、かわりに荷物を受け取り、マリア、と声をかけて抱き上げる。
「ふえ?パパぁ?」
「寝ていいから。」
「んー…でも…」
苦笑して頭をなでる。それだけで、うとうとしだして。
「…俺も眠い…」
「……がんばれ」
さすがにお前まで抱えられないんだが。と隣を歩くイタリアに言う。
「わかってるよ〜頑張る〜…」
ふにゃふにゃな声に、笑って。
「明日はードイツと日本とーあ、イギリスもー、みんなとかぶと買いに行くのー」
「そうだな」
「それからー、日本に晴れ着着せてーしゃしん…」
ふらふらしてきた体を肩で支えて。
「明日は騒がしくなりそうだな」
すまない、日本。心の中で、友人に謝った。


え、ちょ、それはさすがに派手すぎます…!と逃げ回る日本をイタリアとマリアとエリが着て!と追いかける騒がしい明日は、目の前。


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78000hit錐螺様からのリクエストで「独伊家族で日本旅行」でした〜
あ、あんまり旅行っぽくない気が…でも旅行といえばお土産じゃないですか…?

こんな感じですが、少しでも気に入っていただけたらうれしいです
ありがとうございました!