こんにちわ〜、と、玄関から入ってきたのはスペインで、リビングに座っているドイツに気づくと、お、ドイツや、と呟いて、人懐っこい笑みを浮かべた。 「よう、ドイツ。イタちゃんのお迎え?」 「ああ。おまえは…イタリア兄の昼食要員、か?」 スペインの抱えていた、トマトのたくさん入った籠に目を留めたドイツが言うと、大正解、と笑う。 「ところで…その兄弟は?」 姿が見当たらんけど、ときょろきょろしていると、ドイツはくい、と親指をある方向に向けた。 「風呂だ。」 ドイツがイタリア宅についたとき、庭の方で大きな音と、大きな悲鳴が二人分聞こえた。 何事かと思って駆けつけてみれば、水を吐き出し続けるホースと、水浸しの庭と、びしょぬれのイタリアが二人。 何があったのか、わからないが、まあ、なんとなく予想がついて。 水を止めて、ぎゃいぎゃいうるさい(兄のみだが)兄弟を風呂場に放り込んで、庭の後始末をして、今に至る、というわけだった。 「ああ…わかるわかる、こう、ロマーノが水撒きしとって、」 「イタリアが、ホースを踏んだまま話しかけていて、ふとした拍子に足を動かしたんだろうな。」 それで、水圧の上がったホースから吹き出た水を二人とも頭からかぶった。 違っていても、遠からず、といったところだろう。 容易に想像できる二人の行動パターンに笑いながら、二人を待つ。 『うあっ!』 『あ、ごめん!』 風呂場の方から聞こえてくる声に、苦笑する。 「元気やね〜。」 「…どちらかというと、うるさい、じゃないか…?」 「ええやん。元気な証拠や。」 「…まあ、そうなんだろうが…。」 『ひゃんっ!?』 ばしゃーん! 大きな水音が響いて、ドイツは眉をしかめた。 「…あいつら、何をしてるんだ?」 「さあ…。ま、仲よくお風呂入ってるんやろ。ケンカしてる風でも…。」 ないし、と続くはずだったスペインの言葉は、 『ちょ、おまえどこ触っ…!』 風呂場からの声に、消えた。二人とも、いつのまにか風呂場から聞こえてくる声に、全神経をかたむけていて。 『え、ま、待って兄ちゃん、そこだめ!やっ…!腰、…っ!』 『おまえちょっと我慢してろ、俺先出…っ!』 『む、無理…っ…兄ちゃん…っ!』 ばっしゃーん! 『ヴェ〜…ドイツ〜…!』 『泣くな!じゃがいもの名前なんか呼ぶな!』 「…。」 「……。」 「ちょ、あの子ら何やってるん…?」 「さ、さあな…。」 「……。」 「……。」 「…俺ちょっと様子見「ダメだ!おまえが行くとか危険すぎる!」 「は、ちょ、何、人を変態みたいに!」 「…じゃあ、何が起こっていても冷静に対処できるんだな?間違いが起きないと言い切れるんだな?」 「……。」 「………やっぱり…。」 「や、やったら、ドイツの方はどうなん?」 「う…そ、それは…。」 「ほら、ほら!一緒やんか!」 ぎゃあぎゃあと言い合いをしている間に、(なんだか疲れ果てたような)兄弟が帰って来て、 途端に赤くなって黙ってしまった二人に、兄弟は怪訝な顔をしていた。 風呂で、イタリア兄と、何をしていたんだ? …なんて。 「聞けたら苦労しないんだが…。」 とりあえず、当初の予定通りイタリアを家に連れ帰って、ドイツは悶々と悩んでいた。 ちなみに、その悩みのタネは現在キッチンで歌を歌いながら料理中だ。曰く、「今日の昼ごはんはスペイン兄ちゃんにもらったトマトで冷製パスタだよ〜」らしい。 …まあ、当座の問題は風呂場での真相ではなく。 『ひゃんっ!?』 『え、ま、待って、そこだめ!やっ…!』 『む、無理…っ!』 あんな声を聞かされてしまい、すっかりその気になってしまった自分、なのだが。 深く深くため息。 だけれど、こんな真昼間から、なんて。 夜でさえ、イタリアがいつもどおり裸でベッドに入っているから、できるんであって、そうでなかったら。 もう一度、深くため息をついて、ドイツー、ご飯できたよーという声に応えて立ち上がり、平常心平常心、と呪文のように呟いた。 平常心、のはず、なのだが。 …嗚呼、だめだ。どうしても視線がいく。 パスタを食べるイタリアの口元に。 食べる、という動作は性欲をかき立てる、という話は聞いたことがあるが、体感したのは初めてだった。 緩く開いたふっくらした唇、パスタを口に運ぶ際姿を見せる白い歯、唇についたソースをなめとる赤い舌!! 「どうしたの、ドイツ?」 「い、いや…」 なんでもない、となんとか答える。 「おいしくない?」 まさか。 イタリアの作ったものがおいしくないわけがない! そう伝えると、よかった、とイタリアはにこにこ笑う。 かわいらしいな、と思う反面、ぞくり、と背筋を何かが走る。 あー。やばい、のか。これは。イタリアを直視できない。 「ドイツ?」 甘い声が、(いやイタリアはいつも通りだ。受け取る俺の方が違うだけで。)呼ぶ。 もう限界、か、と意を決してイタリア、と呼ぼうと口を開く、と。 「そうだ、ドイツ、上司の人がね、どうせドイツんち行くんならこないだの仕事進めとけって……どしたのドイツ、頭痛いの?」 「いや……何でもない。仕事、だな。」 思わずドイツは深くため息をついた。 はあ、と深いため息がもれる。 「…なんだよ、ちくしょー」 「…いやいや。何でも。」 何でもないで、と頭をなでる。眠そうに首をかくん、とさせる、ロマーノに、ちょっと泣きたくなりながら。 だってあんな声聞いて耐えられる奴おったらお目にかかりたいくらいやで! なのに、気が向いたのか、今日は俺が作る、とロマーノが、包丁を握った時点で、おあずけ決定で。(だって料理中に手出したらロマーノ会ってもくれなくなるから) 料理はもちろんおいしくて、片づけるの手伝って、抱きしめてのんびりして、そろそろいけるかな、と思っていたら、眠たくなってきたらしい。 んん、と目をこするのはかわいらしい、けれど。 うう…寝てまいそうな子襲うほど飢えてへんもん… 擦り付けられる頭に、ベッド行く?と親分モードでたずねると、こくん、とうなずくのが、ああかわいい! 「……後で覚悟しときや、ロマーノ…」 「んん…?」 思わず呟いて、うとうとしだしたロマーノを、ベッドへと運んだ。 風呂場での真相 (伊兄弟インバスタブ) 「兄ちゃん、シャワー出すよ?」 「おう。」 きゅ、とイタリアが蛇口を緩める。 途端に頭上から降ってきた人工の雨に、うあっ!とロマーノは声を上げた。 「馬鹿野郎っ!何すんだよ!冷てーっ!」 「へ、あ、ごめん!」 ぱっと見ると、ひねった蛇口は、水の方で、慌てて止め、お湯の方に手を伸ばす。 けれど、もともと危ない体勢をしていたのに、その上で手を伸ばして、その上それをしたのはイタリアで。 すべらないはずもなく。 「ひゃんっ!?」 「うおあっ!?」 ばしゃーん! バスタブの底についていた手をすべらせたイタリアに足をとられて、ロマーノまで倒れてしまった。 「ご、ごめ、兄ちゃ、」 「ちょ、おまえどこ触って!てか足ひっぱるな!」 「え、わ、ま、待って兄ちゃん、そこだめ!やっ…!腰、乗らないで痛い…っ!」 「ああもうキリがない!おまえちょっと我慢してろ、俺先出るから!」 「む、無理…っお、重いよ兄ちゃん…っ!」 ロマーノに乗られたイタリアが、痛みに体をよじり、自然、上に乗ったロマーノはバランスを崩し。 「いっ!?」 ばっしゃーん! 「っ!おまえな…っ!」 「ヴェ〜…ドイツ〜!」 「泣くな!じゃがいもの名前なんか呼ぶな!」 と、ツイスターゲーム、イン、バスタブを延々くり広げていた。 戻る 1000hit記念リクより、蓮様からのリクエストで、「独伊+西ロマで、いちゃいちゃしてる仲良し伊兄弟にムラムラする旦那達。 互いにガード堅くて据え膳喰えない笑い話」だったはずだったんですが… だいぶ違うものができあがった気がします…すみません… やっぱりオチを書くのが楽しかったです。 こんなんですが、少しでも気に入っていただけたらうれしいです。 リクエストありがとうございました! |