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ぎゅむ、と後ろから抱きつかれて動けなくなった。肩に押しつけられる頭の感触。
「へ。」
「…かな、だは。」
いつも。イギリスの前であんな顔、するの。
…そうたずねられても。
「あんな顔って、どんな顔ですか?」
無言。
ただ、抱きしめる力が強くなって。

「フランスさん?」
どうしたんですか?尋ねる前に、フランスさんが小さくカナダは、と呟いた。
「イギリス、と。…仲、いいよな」
「…そりゃあ、家族ですから…」
アメリカとイギリスさんと。ずっと一緒だった。家族、だから。あたりまえのことだ。
なのに、どうしてこの人は、そうだよな、なんて落ち込んだ声を出すの?
振り返りたい。けれど、振り返れない。腰に回った手の力が強くて、逃げ出せない。

「それがどうか、したんですか?」
「……ごめん」
かすかな声。嫉妬、した。弱気な声でそう告げる。
「しっと?」
「おまえが、見たことない顔であいつに笑うから…ちょっと。」
家族に向ける笑顔さえ、独り占めしてたいと思ってしまうんだ。囁かれて瞬く。

「…フランス、さん…」
「…情けないな。こんな小さなことでくよくよしてるなんて…」
小さく笑う声が耳に入って。
…嬉しかった。この人はいつも余裕だから。こんな弱い姿を見せてくれると、胸がドキドキしてしまう。僕だけ、に見せてくれる、から。
「顔、見せてください。」
そういって振り向こうとするのにやだ。という声。腕の力が強くなる。
「何でですか?」
「情けない顔してるから」
うわあそれはますます見たい。

見せて、やだ、としばらくじたばたして、やっと諦めてくれたフランスさんが腕の力を緩めてくれて、振り返る。
少し泣きそうな、子供のような表情。
きゅん、としてしまって、抱きしめる。
「カナダ…」
「…好き。」
そう囁いた。好きだ。大好きだ。世界で一番大好き。だから、心配しなくていいの。あなたがいないと、生きていけないくらいに。僕はあなたに夢中なんだから!

「…カナダ。」
少し真剣な声で呼ばれた。顔を上げる。まっすぐに、見つめてくる、青。世界で一番、他に敵うものなんかまったくないくらいに好きな色。
「はい。」
「家族に、なろうか。」
今度は、弟とか子供じゃなくて。生涯添い遂げる、パートナーとして。
そう、告げられて。
ぽろ、と涙があふれた。


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81800hit蒼継様からのリクエストで、「加に焼き餅やく仏」でした〜

ど、どうでしょう。焼き餅、って感じじゃない気もするんですが…

こんな感じですが、少しでも気に入っていただけたらうれしいです。
ありがとうございました!

























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好き、なんて言わない。ロマーノは。滅多に言わない。言っても、かすれた声で。恥ずかしげに。ぶっきらぼうに。
なのに。

「日本!大好きだ!」
がばあ、と、そ、そんな喜ばれるとは、とおろおろしてる日本に抱きつくロマーノに、ぴし、と固まった。
…あんなロマーノ、みたことない。
「よかったら、もう少し持って帰ります?」
「いいのか!?」
「構いませんよ。」
…楽しそうな声。…滅多に聞けない、くらいの。

「…。」
何も言えずに眺めていたら、日本がこっちに気づいて、会釈。
それに、ロマーノが振り向いて。
目があった途端に逸らされる瞳に、かっとなって。
「ロマーノ!」
呼んで、走り寄る。
「な、なんだよ…」
不機嫌そうな顔。いら、としてしまう。笑って欲しい。好きって言って欲しい。…俺だけに。ざわり、と心の中に溢れる想い。
がっと腕をつかんで、走り出す。
「お、おい、スペイン!」
いいから。とそう引っ張る。走らせて、それで。手近なドアをがちゃんと開いて、ロマーノを引きずり込む。
ばたん、と閉じたドアに、ロマーノの体を押しつける。
「っ!…す、スペイン…?」
おびえた目。…見たい表情じゃなくて。髪を手に取る。
チョコレート色の髪に、キスを落とすと、瞬いた。大きな瞳が見え隠れするのが、綺麗で。
「…なあ、ロマーノ。」
どないしたら、ロマーノは笑ってくれる?
そう尋ねると、彼はは?と首をかしげる。


「わら…?何言ってんだ、おまえ?」
「笑って?ロマーノ」
なあ、とそう囁く。
「スペイン…」
「ロマーノ。」
額にキス。抱きしめて、何度も。
「ど、どうしたんだよ?」
「…好き。」
「え。」
なあ、世界で一番好きやで。そう囁いて、唇にキスをしたら、ぐい、と肩をつかまれた。

「スペイン…どうしたんだよ?」
困惑した瞳。綺麗、だな。そう眺める。まぶたを舐める。
「っ!だーかーらー!」
「……だって、ロマーノが。あんな楽しそうな顔するから。…日本に。」
「は?」
大きく目が見開かれた。
それから、ゆっくりと、細められて。

…あ。笑った。

「何だよ、妬いたのか?」
楽しげな声に、混じる笑い声。
さっきまでどうしようもないくらいだった感情の高ぶりが、落ち着いていくのを感じる。
「笑い事ちゃうって〜…」
力を抜いて、肩に頭をすり付ける。と、余計にロマーノは笑う。
「俺が楽しそうだっただけで?心が狭いんだよ。」
あはは、と笑うと、肩が揺れる。
「…ちゃうで。俺の心は、基本広いけど、ほぼロマーノに埋められてるから、許容範囲が狭いだけやで。」
そう言ったら、揺れていた肩がぴたり、と止まった。
ロマーノ?と見上げると、真っ赤になって固まったロマーノの姿。…トマトみたい。
熟れておいしそう、と頬にキスしたら、へ、変なこと言うなちくしょー!と頭突きされた。


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84700hitのキリ番リクエストで、『西ロマで親分の嫉妬』でした。
ちなみにロマは、日が、前に欲しいなと言ってたものをくれたので喜んで好きって言っただけです。もちろん、友愛の意味で。

こんな感じですが、少しでも気に入っていただけたらうれしいです
ありがとうございました!