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ふわ、と抱き寄せられた。
「カナダ、許して?」
笑った声。いつもそうだ!いつもそうやって、誤魔化して。
腕を振りほどいて、涙のにじんだ目で見上げて、こないだ日本に教えてもらった言葉を、まだへら、と笑っているフランスさんに言ってやった。

「実家に帰らせていただきます!」

さっきそう言ったのに、まだフランスさんの腕の中にいるのは、言った途端に焦った表情になったフランスさんにがっちりと腰をホールドされてしまったから。
「ちょっと待てそれお兄さん死ぬ!イギリスに殺される!」
「もー知りませんー!」
「カナダ〜。」
「もう、僕じゃなくてあの人でも頼ったらいいじゃないですか!住所聞いたんでしょ!」

怒鳴ってしまってから、しまった、と思った。
こんなことを言うつもりじゃなかった。
もしそれで、そうする、なんて言われたら立ち直れないくらい落ち込むのは自分のくせに。
けれど、口から出てしまった言葉はどうにもできなくて、でも、フランスさんの前にいたくなくて、離して、とじたばたすると、カナダ、と呼ばれた。

もう一度。それから、抱き寄せられる。肩にうずめられる顔。何度も、繰り返し呼ばれる名前。
その声は、さっきまでの、いつもの自信に満ちた声と全然違って、不安げで。
「ごめんなさい。」
反省してます。だから、許して。
滅多に聞けない落ち込んだ声。ちら、と顔を見上げると、本当に落ち込んだ表情をしていて。
カナダ。また呼ばれた。請うような声。だ、騙されないぞ、と最初は思ったけど、どうやら、本心、みたいで。
「…本当に、反省、してます?」
尋ねると、小さくうなずかれた。反省してる、だから。
「…じゃあ、」
もう二度と、僕の前でナンパなんてしないでくださいね。
にらみつけるように言うと、わかってるよ。と、額にキスをされた。

その後で、小さくぼそっと、あれ、道聞かれたから答えてただけなんだけど…なんてフランスさんが言うから、…え、えっえ!?と慌てていたら、でもカナダを傷つけたのは、事実だから、ごめん、とまっすぐ見つめられて謝られて、もう勘違いで恥ずかしいやらでもその言葉はちょっとうれしいやらでどうしていいかわからなくなった。

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6500hitキリリクで、「仏加でやきもちを焼く加」でした。
…やきもちといえるかわかりませんが、勘違いでも何でも、加を傷つけたことは重罪だと思ってる仏兄ちゃんが、書けてるのかな?書けてたらいいな、そんな感じです。

こ、こんなのでいかがでしょうか…?(おろおろ)少しでも気に入っていただけたらうれしいです。
ありがとうございました!



















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フランスさんは、よく僕にキスをする。
指先で触れるかわりに、耳に、額に、首に、肩に、手に。
あまりに何度もするので、それと、そのときのフランスさんの表情がとてもうれしそうだから、何か意味はあるんですか、と聞いてみた。
「んー…意味がないとしちゃいけない?」
「いえ、そんなことはないんですけど。」

答えると、ほら。また、額にされるキス。
キスしやすいように、だろうか。こうやって、膝の上に座らされることも多い。
もぞもぞと心地いい位置を探していると、フランスさんが、話を続けた。
「まあ、カナダがいるから、っていうのが一番正解に近いと思うよ。」
「?僕、ですか?」
そう、とまた。今度は頬。
「だって、カナダ以外に、こんなにキスしたいっていう気持ちにならないから。…だから、カナダのせい。」
「僕のせいって…。」

なんか僕が悪いことしたみたい。と少しだけ不機嫌になると、ああ、ごめん、そうじゃないよ、とまたキス。頬の上。…それだけで、許してしまうのは、フランスさんが大好きだから、仕方がないことなんだろう。きっと。
その肩に手を伸ばして、今度はこっちから、キスをしてみる。
頬に2回、額に1回。今、フランスさんにされたのと同じ数。

「なあに?カナダ。」
こつん、と額をあてて、くすくす笑われる。

「したくなりました。」
つられて笑いながら、いけませんでした?と尋ねると、彼はいいや、と首を横に振った。
「いけないわけがない。…ただ、」
「ただ?」
聞き返すと、にこ、と笑って、どうせしてくれるならここがいいな、と唇を指差された。
それに、ちょっとだけ考えて、くす、と笑って見せた。

「眼鏡が邪魔なんですけど、取ってもらえますか?」
手がふさがってるんです。あなたに抱きつくので忙しくて。

一瞬驚いた表情になったフランスさんだけれど、すぐに苦笑して、お安い御用だ。と眼鏡をとってくれた。
その手を追いかけるように顔を近づけて、そっとキスをした。
軽く、つけて、離す。本当に触れるだけの、小鳥のようなキス。
でも、吐息が混ざりあうような近さで少しだけ待って、青い目を存分に見つめてから、またキスをした。
今度は、深く、強く。舌を絡めて、口の中を撫でて、口の端から唾液がこぼれて。
すっかり息があがったころ、離すと、また、触れるだけのキスをされた。
「…カナダ。」
「フランスさん…。」

名前を呼ぶと、何だか愛しい、という気持ちがあふれてきて、それが勝手にこぼれていかないように、また唇を重ねた。

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12021hitリクエスト 蒼継様で、「ひたすらいちゃいちゃしている仏加」でした。
こ、こんな感じですか?仏兄ちゃんは、キス魔な気がします。そして、加も、兄ちゃんにしかけるの嫌いじゃなさそうです。というわけで、こんなになりました。

少しでも気に入っていただけるとうれしいです。
リクエストありがとうございました!