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お弁当作って、ドイツとおでかけ!
でもデートじゃないんだ。広い公園には、見慣れた『国』のみんなの姿。
『たまには親睦を深めるために、遠足でもしないか!』
って、アメリカが言ったから。
…でも、そのアメリカ、さっそくイギリスとケンカしてる。言い合う声が、遠いここまで響いて。

「ケンカしてるね〜。」
「…まったくあいつらは…。」
指差すと、それを見やってため息をついたドイツ。
止めに行かなくていいの?…ほっとけ。別に会議じゃないんだし。
そう言って、ドイツは別の方に歩き出した。慌てて追いかける。
途中であった日本やポーランド、リトアニア、オーストリアさんとハンガリーさんに手を振りながら、ドイツと歩く。

公園を見回すと、恋人たちや、久しぶりにあった友人たち、いつものメンバー。みんな、笑っている。笑顔でいっぱいだ。なんだか、俺まで幸せな気分になってきた!

「…楽しそうだな?」
「楽しいよ〜!」
そう笑って返事をする。
そうしたら、そうか、と返すドイツの顔も笑っていて。
ああ、いいな。笑顔が伝わっていく感じ。ほかほかと温まる心。みんなに、伝わったらいいのに。ずっと、ずっとこういうのが続いたらいいのに!

「ドイツっ!」
とりあえず、自分の気持ちをドイツに伝えようと、目の前の腕に抱きつく。
そうしたら、危ないだろ、といいながら、頭を撫でてくれた。
「どうした?」
「んと…しあわせ。」
にこにこ告げると、ドイツは、そうだな、と額にキスをくれた!


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隣に人が立つ気配に、顔を上げると、そこにはフランスさんの姿。
「やあ、カナダ。おまえも来たんだな。」
「おはようございます。来た、というか、つれてこられたんですよ、アメリカに。」

めずらしく、忘れられなかった。全員参加だぞー!と朝っぱらから突撃してきたアメリカに、引きずられるようにつれてこられた、公園。
見渡せば、国、国、国!
会議場以外の場所で、ここまで集合するのを見るのは、めったにないことだ。…それだけ、アメリカの影響力は大きいってことだろうか。

「で、その張本人は?」
「あそこでイギリスさんと恒例行事やってますよ。」
毎回毎回よく飽きませんよね。そう呟いて、言い合いをする二人を眺める。
「…ま、そのおかげで、お兄さんは障害なくカナダを独り占めできるわけだけど。」
隣に腰をおろしたフランスさんに、腰を抱かれて、かあ、と赤くなる。
ひ、人前ですよ!なんて言葉は通用しない。いいからいいから、で流されてしまう。

「誰も見てないし、見たって気にもとめないさ。…自分のことで手一杯だからな。」
周りをよく見てご覧。そういわれて、見渡す。
みんな、楽しそうに話をしていた。たまには、一人の人もいるけれど、すぐに、周りにいる人が寄って来たり、周りにいる人に寄っていったりして、わいわいと騒がしいのは、みんな一緒。

「…楽しそう、ですね。」
「そうだな。」
ま、仕事以外でこんな集まれることなんて滅多にないしな。
そう、周りを見渡すフランスさんも、お、あいつ来てるなんてめずらしいなあ、と友人の姿を見つけたようで。
「行かないんですか?」
「行かないよ。」

言ったろ?カナダを独り占めって。
ちゅ、と手の甲にキスを落とされ、青い瞳で見上げられて、つい赤くなってしまった。


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楽しそうに別の国と話すスペインの後ろ姿に、気づけ、馬鹿、と念を送る。
世界中のそれこそ文字通り世界中の国が集まった公園で。けれど、あまり仲いいやつ少ないし。
だいたいいちゃいちゃしてるし。カナダとフランスとか。日本とイギリスとか。ハンガリーとオーストリアとか。馬鹿弟とじゃがいもとか!
くそう、これなら出てこない方がよかったかもしれない。
だけど、全員集合だとアメリカが号令をかけたのだし、今日は何の予定もなかったからまあ仕方なく。
来てみたのは、いいけれど。
来て早々、スペイン見つけたのは、いいけれど。
「…気づけよちくしょー…っ!」
全然気づいてない。あの馬鹿。
しばらくして、もういいか、と背を向けたら、るぉまぁーのぉーっ!と叫び声がして後ろから思い切り抱きつかれた。
「うっわ!」
「おったー!もうめっちゃ探しとってんで〜?」
ぎゅうう、と背中にのしかかってくる特徴的な口調は、さっきまで見つめていたスペインのもの。
どこおったん、今来たとこ?なんて言われて、ずっとここにいたぞこのやろー!と怒鳴りつける。
「えっ。」
「何で気づかねーんだちくしょー!」
「何や、やったら声かけてくれたらええやんかあ。」
…だって。楽しそうに話してるから。邪魔したら悪いか、と思って。
本当は、声をかける勇気がなかっただけだ。話してる相手、あんま仲良くないやつだったし。
でも、言い訳じみたそれを呟くと、ロマーノええ子やなあ、と頭を撫でられた。
「子供扱いすんな馬鹿!」
ごす、と頭突きをくらわせながら、それでもいつものやり取りに、なんとなくほっとした。


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「イギリスさん。」
「!日本!」
声をかけると、ぱあ、と表情が輝いた。
アメリカさんと大喧嘩していたのは、遠くから見ていた。だれにも迷惑かけてないみたいだったし、もう恒例行事だからとめる必要もないか、と思ったからだ。
それで、終わったみたいだから、近づいていった。
おはようございます。と声をかける。

「おはよう、日本も来てたんだな!」
「ええ。…アメリカさんが来るのは決定事項だからな!って。」
くす、と笑うと、イギリスさんの顔が曇った。まずい。今、アメリカさんの話はタブーだったか。
「…アメリカが、呼んだら、来るのか。」
暗めの声に、んーと困って呟いて、彼を見た。
言うつもり、はなかったん、だけど、なあ。
「…だって。」
小さく呟くと、彼がこっちを見た。
けれど、そのまっすぐすぎる瞳を見て言うことなんかできなくて、少しだけ、顔をそらした。
「…アメリカさんが、イギリスさんが来るって、言うから。」
「え。」
「あーもう忘れてください!」

やっぱり言うんじゃなかった!と背を向けてすたすた歩き出す。
顔が熱い。だって、本当だ。そういう行事はちょっと、としぶった私に、アメリカさんが、イギリス来るぞ、って言ったから。会えるなら、行こうかなって、ちょっと思ってしまっただけなのだ。

「な、なあ、日本!さっきの本当か?日本!」
後ろから走ってくる足音。
少しうれしそうな声が、なんだか悔しい。
「もう、忘れてくださいってば!」
首を振って、振り返らずに足を早めた。


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「…平和ですねえ。」
「ですね。」

かちゃ、とオーストリアさんが置いたカップに、おかわりの紅茶をそそぐ。(ちなみにオーストリアさんの家からティーセット一式持参だ。)
見回す限りに、人。…いや、人ではない。国だ。
これだけ集まると、ちょっと圧巻。
というか、これだけいたんだ、という感想も、ある。
さっきまでやかましかったアメリカとイギリスのケンカは終わっている。

アメリカはカナダとフランスの二人のところへ突入しにいって、イギリスはというと、何故か、日本さんと追いかけっこをしていた。(というか、早足で逃げる日本さんをひたすらおいかけていた。)
天気は晴天。みんな楽しそうだし、アメリカもたまにはいいことするな、と小さく笑う。

「どうしました、ハンガリー?」
問われて、いいえ。なんでも。と返す。
周りがどんなにいつもと違っても、彼と私は、変わらない。
いつもと同じように紅茶を飲んで、みんなを眺める。
…そういう、変わらないものっていうのも、きっと大事だと思う。
「…ハンガリー、私のことはいいから、他の人と話してきてもいいんですよ?」
「いいんです。…迷子になったオーストリアさん、この中から探し当てるの大変でしょうし。」
しれっと言ってやると、何も言い返せなくなったらしい。黙って紅茶をのんでいた。思わずくすくす笑ってしまう。

「…それに。」
「それに?」
「こうしてるのが、幸せなんです。」
「…いつもと何も変わりませんよ?」
「はい。」
それでも。…いや、だからこそ。幸せなのだ。変わらない日々を過ごせるということが。

「…ハンガリー。」
「はい?」
おかわりをいただけますか、と紅茶を差し出され、はい。と笑顔で返事をした。

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