※神羅=独設定です。 「た、たんじょうび、お、おめでとう!」 ばさ。と渡された花束は、色とりどりの花がたくさん入っていて、わあ、と思わず声を上げた。 「きれい!」 「そ、そうか?」 何がいいかとかよくわからなかった、んだ…。 そう彼は言うけど、でも本当にきれい! 「もらっていいの?」 「あ、ああ。」 「ありがとう、神聖ローマ!」 大きな声でお礼を言って笑って受け取る。わあ、いいにおい! 腕をいっぱいに広げないと抱きしめられないその大きな花束に、すごいなあ神聖ローマ、とにこにこ笑って。 「…そんなに、うれしいのか。」 「うん!」 お花大好き!大きくうなずくと、彼は優しく、そうか、と微笑んだ。 かっこいいなあ。そう思いながら見て。 「そうだ、神聖ローマ。今日はね、オーストリアさんとハンガリーさんがいっぱいごちそう作ってくれるって!」 「…そうか。おまえのため、だな。」 「うん!できるまでね、外で遊んできなさいって!」 一緒に遊ぼ、神聖ローマ! 手を伸ばそう、として。 あ。花束でいっぱいだから手、空いてない…。 しょぼん。となっていると、わかった、遊びにいこう。…その花を飾ったらな、って。 視線を逸らして、花瓶探しにいかないとな。って言ってくれた。頬が赤い。照れてる。かわいい。 「ほら、行くぞ。」 「!うん!」 うなずいて、先を行くマントを、笑って追いかけた。 「誕生日おめでとう。」 そう言って、花束を差し出してくれた彼の姿に、…昔のことが、だぶって見えた。 変わらないね君は。そうやって、恥ずかしそうに視線を逸らして、手を突き出す。頬が赤い。照れてる。かわいい。 …なんて言って、お花屋さんに包んでもらったんだろう。想像したら、なんだかおかしくって。 「ありがとー!」 笑って言って、そっと受け取った。 あれから、いろんなものが変わったけれど、きっと。 変わらないものもたくさん、あると思うから。 ねえ、ドイツ。 …ねえ、神聖、ローマ。 ……大好き。 (→その花の意味を に続く) 戻る . からからと、自転車を押して歩くのはいつものこと。 …いつもと違うのは、その自転車に山のような紙袋がかけられていること。 「ごめんね、ドイツ…。」 「別に、気にするな。」 どうせみんな、俺が運ぶしと思っているから、こんなかさばるものばかり贈ってくるのだろうし。 今日はイタリアの誕生日だから。朝からおめでとー!の嵐で。 はいこれ、みんなから、これは俺らからー。こんなのもあるんだけど…。 有無を言わせない勢いでイタリアに渡されるプレゼントの山に、イタリアがドイツー…と情けない声を出して、ちょっと待ったあ!と俺が声を荒げるのは…バレンタインのときに一度繰り返したやりとり、だ。 とりあえずプレゼントを教室の後ろに積み上げて、イタリアを救出すると、喜んでいいのかでも困るし、と複雑な表情をした彼に見上げられて、仕方ないなあと、家まで運んでやるから、と声をかけるはめになったわけで。 ちなみに、教室の一番後ろに積み上げられたその山は、イタリアに開けさせ、包装や箱を畳み、食べ物系は食べてだいぶかさを減らした。 なんでこんなことに全力をそそがにゃならんのだとこっそり思いつつ、けれどかなり体力を奪われる作業だった。 馬鹿みたいにびっくり箱、なんか贈ってきて、イタリアをびっくりさせて泣かせたやつらに制裁を食らわしたりもしていたからかもしれないが。 しかしまあ。 その量を見ると、改めてイタリアの交友関係の広さを思い知る。なんか先生までプレゼント持って来てたし。他校の生徒からもプレゼントまであったみたいだし。 そう考えると、つくづく。 なんでこいつは俺と一緒にいるんだろうなあと、不思議になる。 自分で言うのもあれだが、はっきり言って一緒にいて楽しいタイプの人間ではないと思う。 なのにこいつはいつも、俺の隣でにこにこ笑っている。二人きりでも全然気にしない。 縁、はある。たしかに。一度交わったそれは切れることはないらしい。袖振り合うも、だったか。 けれど、それをわざわざ深めにくるこいつの思考回路が……いや。やめておこう。 こいつの思考回路がわからないのはいつものことだ。 「どーいーつ。」 「何だ?」 「…んとね、」 何て言えばいいのかな。そんな顔をする。 期待と、それから少しの不安を混ぜた表情。…視線がちらちらと、抱えたプレゼントにいく。…ああ。 「俺からのプレゼントは、家だ。」 「なに!?」 「ショートケーキだ。1ホール。」 「ドイツが作ったの!?」 うなずく。…わざわざ手作りしたのは、つい。凝り性のくせが出てしまったからだ。というかこいつの好みが細かいのが悪い。 「わはー!やったー!ドイツのケーキおいしいから大好き!」 「そうか?」 「うん!ねー、誕生日の歌歌ってよー」 「お、俺がか!?」 「聞きたい!」 お願いドイツ。…ああもうそんな顔をするな!弱いんだから! 帰ったらな。そう言うとやったー!とはしゃぐ声。やれやれ。…まあこいつが喜ぶなら、いいか。 「誕生日だからな。」 苦笑して、そう言うとにこにこうれしそうな笑顔。 帰ってリクエストに答えて歌ったら、イタリアが真っ赤になって硬直してしまったので、やっぱりこいつは何考えてるかわからないなあとしみじみ思った。 戻る . 誕生日。そうおうむ返しに尋ねられ、だって、聞いてなかったから。と言い返す。 「……なんでそんなん聞きたいんだよ」 ちいちゃいのに、あんまりかわいくない口調。ぶすっとした表情。 「やって、お祝いせなあかんやろ?」 「………お祝い……。」 そやでー?とニコニコ笑う。そうすると、彼は困ったように見上げて来て。 「…なんで?」 「生まれてきたことは、すばらしいことやもん。お祝いせな、な?」 「生まれて来たこと…。」 「お祝い嫌いか?」 「嫌いじゃ、ないけど。」 なんで。そう不思議そうな表情。 「…今日、だけど。」 「な!!それを早く言え!ああもう!」 用意せなあかんやろ!思わず大きな声を、出した。 そうすると彼は、びく、と肩をすくめて。 ああごめんな。そう言って、頭を撫でる。怒ってないで、と笑って。 「…でもなんで、教えてくれへんかったん?」 「…だ、って。」 「だって?」 「嫌じゃないのか?」 「何が?」 「俺なんかの、誕生日、祝うの。」 もったいないとか、思わないの。 聞かれて、しばしぱちぱち。と瞬いて。 「…よおし奮発したろ。」 「は?」 「何がええ?トマトのパスタ?ピッツァ?ああそうや、オレンジとか揃えようか。ロマーノんとこの。それから、パエリア鍋いっぱい用意したろ!」 「え。」 困った表情。どうしていいのか、わからない、みたいな。 あとはーそうやなあ、服買ったろ。綺麗な新しいの。それから、ああそうや、ケーキもいるよな、うんうん。後、靴とか、ほかは何がええ?何が欲しい? 延々言うと、彼は大きく目を、見開いて。 「…なんで。」 「なんでって、誕生日やもん。お祝いせな。いっぱいお祝いせな。」 なー?にこにこにこ。笑ってみせる。 ぱちぱち。大きな瞳がこぼれ落ちそうだ。ものすっごいびっくりしてるっぽい。 こういうとこはかわえーなあと頬杖に手を添えて、笑う。 「…なん、で…。」 「だから、嫌いやないんやろ?」 やからお祝い。…生まれて来てくれて、俺と一緒にいてくれてありがとうって。な? にこにこ。笑ってみせる。 「大好きなロマーノの、誕生日、なんやから。」 なあロマーノ。優しくそう、言ってやる。 俺なんかって、二度と言えないように。 彼は、混乱しているようで。 「よし、そうやな、今日だけじゃあかんな。よし。毎年お祝いしよ。来年も、再来年もずっと!」 俺がお祝い。してやるから。な? そう言って、ひょい、と彼を抱き上げた。 わわあ、とびっくりした、声。 「約束、な!」 「やくそく…。」 「約束!」 な?優しく。そう言って額にキス。 「な?」 なあロマーノ。そう囁いたこと。きっと。 …彼は忘れてるんだろうな。 「やれやれ…俺は絶対忘れへんのに、なあ。」 ロマーノ。 すやすや眠る彼の、目元に、泣いた痕。やれやれ。小さく呟いて。 俺にごめんって言おうとして言えへんかったんやろうなあ。かわええかわええ俺のロマーノ。 「…驚くやろーなあ…。」 にいい、と笑って、さあ準備準備、とうきうきして歩き出す。 「おっと、忘れてた。」 気付いて、誕生日おめでとう、と囁いて、その額にキスをした。 (→届くように、に続く) 戻る . 「誕生日おめでとう!」 いえーい!っておまえら…遊んでるだけだろ…! 「…どーも。」 一応お礼を言うと、にやり、とハンガリーとイギリスが笑う。…あんましいい予感はしないんだけど、なあ…思わず後退り。 「そこでうちのクラスみんなからのプレゼントなんだが。」 「いや、お気持ちだけで結構です。」 手のひらを出すのに、まあそう言わずに。とがっちり腕を捕まれて。 「はいターゲット捕獲。拘束準備!」 「こ、拘束ってなんだあああ!」 怒鳴るけれど、多勢に無勢。逃げられるわけもなく。 「ごめーん遅くなっ…あれ?」 誰もおらへん〜。その声に、ぎゃあと思った。ほんとに呼びやがったなあいつらあ…っ! 「なんやこのおっきい箱。…ん?」 がさがさ。音に、硬直。…光、が差す。うわあ、…ろまー、の? あきれた声が聞こえて、ああ、と思った。しゅる、と外される目隠し。 「っ!」 目を開けると、いきなりスペインのどアップで思わず息を飲んだ。 「大丈夫か?」 「お、う」 「どないしたん?…まさかいじめとか!」 「いや、違うと思う…」 …たぶん応援してくれてるんだと、思う。ちょっと、やり方はどうかと思うけれど。 全身リボン巻きででかいプレゼントの箱の中、で、…片想い中の先生と二人きり、って。 俺に何をしろと。 がんばれーとか楽しそうに言っていたやつらを思い出してため息。自分たちだって告白できてないくせにあいつら… 「しかしまあ…これじゃロマーノがプレゼントやんなあ。」 ロマーノがプレゼントもらわなあかんのに。くす。笑う声。みよんと引っ張られる、頭の上のリボン。 …こ、れは、いっとくべき、なのか…? いやいっとくって何を。何って決まってるじゃない。プレゼントはわ、た、しっていやいやハンガリーそれはいろいろおかしいって箱に詰められる前に交わした会話を思い出してパニック状態になっていると、しゅるしゅる、とリボンをほどかれた。 …服脱がされる前にちょっと待てさすがに待てとハンガリーを止めてくれたイギリスに感謝しとこう…。 「ん、固…よし、とれた。」 リボンを手のひらに巻きつけながら笑うスペインに、さんきゅ、と一応お礼を言って。動かせなかった体を伸ばしていると、あ、そや。と言われて見上げる。 「ロマーノ」 ぽんぽん。子供にするみたいに、頭に手を乗せて。 「誕生日おめでとう」 満面の笑み。…ああ、くそ。やっぱ、好きだ。 「…スペイン、せんせ?」 「ん?」 「あ、のな、…俺…」 「なに?」 優しい声。どないしたん。また、頭に触れる手。…自分でも嫌になるくらい面倒くさい性格した俺に、真剣に向き合ってくれた人。 「…俺…」 ずっと言いたかったんだ、好きだって。…でも、言えなくて。 でも、今、なら。 深呼吸して、見上げる。オリーブの瞳。 「俺…!」 「うわちょ、押すな!」 がらがらどさどさ。 「あ。おったー。みんなでなにやってんの?」 のんびりした声を出してスペインが隣を通りすぎるのを、顔を引くつかせて待ち、ゆっくり振り返る。 全員揃ってのぞき見なんていい趣味だなあ…っ! にらみつけると、ごめーん、とハンガリーの口が動いた。ほかのやつらも申し訳なさそうに笑ってて。ああもう…ていうかなんでフランスがいる! 「んじゃあ、全員揃ったしパーティーはじめよか!」 はーい。と返事だけは元気だ。ったく…。 目を閉じてため息をつくと、ロマーノ、と呼ばれた。 「誕生日おめでとう!」 心からの声に、ぱあん、とクラッカーが鳴って。 「…おう。」 なんとなく気恥ずかしくなって、視線をそらしたけど…とてもうれしかった。 戻る . 最初に会ったとき、なんて綺麗な子なんだろう、と思った。 その感動は、今もまだ続いているけれど。 敬語があまりに合わないから、普通に話していいのに、と思って、言ったら、 「…おまえ変なやつだな。」 そう言って、笑った顔がほんとに、かわいくて。 恋に落ちる、ってこういうことか、と、ちょっと感動した。 ロヴィーノ。甘く愛しく、名前を呼ぶ。そうすれば、何だよ、とちょっとぶっきらぼうな返事。 会えるだけで、よかった。それだけで、幸せで。 それが変わったのは、いつからだろう。…もう覚えていない。 ただ、あの子が会うのは俺だけでいいのにってそう思って。 俺だけのものになればいいのにって。…でも、あの子の職業を考えればそれは、不可能で。 ならばあの子を、身請けしてしまえばいいのかと、気付くまでに相当かかった。 そのためにはたくさんの金がいる。…あては、ある。家に戻れば、いい。家出中の、城に戻って城主に収まれば、いい。 最初は、迷った。 けれど。 ある日、会いにいったら、顔を見るなりあの子はほう、と息をついたのだ。よかった。って。 「何?」 「…いや。」 何でも無い、って言うから、何ー気になるやん教えてーってしがみついてみる。 そうしたら、あーもううるせー!とか言いながらも、教えてくれた。 うろ、と視線をうろつかせてから。 「…今日、もう来ないのかなって思った、から…。」 ちゃんと毎日きやがれこのやろー。 その少し、不安そうな瞳、に。 ああ、ダメだ。と思った。 この子を甘やかしてあげたい。こんな表情なんて二度とさせたくない。 ずっと、ずっと。 一緒にいたい。 それから、速攻で家出中だった城に戻って土下座して。 ロヴィーノの身請けの条件として出された、楼閣への立ち入り禁止に仕方が無いと諦めて。 最後、と決めて行ったその日、に。 ロヴィーノを抱いた。 あんな顔、されたらだって。断れるはずもなくて。 本気、でがんばった。さぼってた分全部取り戻して、仕事片付けて、信頼取り戻して。 で、ちゃんと城主、継いで。 約束やでローデリヒ、と口煩い彼にも、呆れながらも仕方がありませんね、と許可をもらって、やっと。 やっと、あの子を迎えに行ったんだ。 それからいろいろあった。本当にいろいろ、あった。 喧嘩したりすれ違ったり。怒鳴られたり。 でも、この子が不安そうな顔をすることは減った。…それだけでも、ちょっと前進かな。 「ロヴィーノ。」 名前を呼んで、その頭を撫でる。 んん、と擦り寄ってくる顔。すやすや幸せそうに眠るその表情に、思わず笑みがこぼれた。 「…幸せにしたる。」 絶対。離さない。だから…隣で笑っていてほしい。 ばっかじゃないのかって。心からの笑顔を、あの太陽みたいな笑顔を見せていてほしい。 そう思いながら、額にキスをした。 ずっと。彼が俺の隣で幸せでありますように。 戻る |