.

…今日は、誕生日だ。
けど。…スペインは来ない。きっと。
思って、深くため息。原因は単純明快。
…大喧嘩したからだ。一昨日。

俺は悪くないと思う。けど…既に何が原因かは、あんまり覚えてない。ただ、スペインが悪いんだって、それだけ。いつものこと、だけど。

『ロマーノが謝るまで許さへんからな!』
声を荒げていたスペインを思い出す。
…ほんとは、すぐ謝ろうと思ったんだ。でも、できなくて。昨日一日が過ぎてしまって。

…きっとこない。だって、あんなに怒ってた。
そう思って泣きそうになる。一緒に過ごさなかった誕生日なんて、俺かスペインが遠くに行ってたときくらいしか、ないのに。

ずっと、一緒にいてくれたのに。

「…う…」
あ、やばい。視界が潤んできた。シーツに顔を押しつけて、なんとか耐えて。

「こらーロマーノ、いつまで寝てんの?」
ばさあ、と布団を奪われる音と、聞こえてきた声に、は?と硬直。
誰の声だ誰の。どう聞いてもスペイン、で、だって何で。今日はきっとこないって!
「ほらロマーノ!」
ええ天気やでー?どっかお出かけする〜?

おそるおそる振り返ると、いつもどおりにこにこ笑ったスペインが、いつものようにおはよーと言って。
「…なんで、おまえがいるんだ?」
呆けてつぶやくと、やってロマーノの誕生日やん。とさらり。
それから、ああ、喧嘩してたんやっけ、と今気付きました、とばかりの表情をし。

「ごめんなさいは?」
「…ごめんなさい…」
「ん。おれもごめんな。」
これで仲直り、な?頭を撫でられて、額にキス。
「さあ!パーティの準備はできてるで?後は主役の到着を待つばかり、や!」
好きなもんたくさん用意してんから!好きなだけ食べ?
にこにこ。一昨日の鬼の形相とは打って変わって、の甘ったるい表情。…甘いというかなんというか、……甘やかされてるなあ、俺…。
こっそりと思って。

「パスタあるんだろうな?」
「もちろん!トマトたっぷりで用意してあるで!」
あと、チュロスとー、ショコラータとー、他にもいっぱい!
「…なんでそんなうれしそうなんだよ…。」
ちろ、と見やると、ロマーノがええ顔するやろうなって!と笑顔。
「ロマーノ喜んでくれるとうれしいもん!」
ロマーノおいしいもん好きやもんなあ。わくわく期待するような表情は、…昔から変わらない物だ。
それを考えると、俺すっごい…いい環境で育ってきたんだなあ。

「…単純。」
「ええやんか。」
ほら、行こう。腕を引く、まるで子供みたいに無邪気な馬鹿に、小さく苦笑して。
「…ありがと。」
小さく呟くと、なんか言った?と首をかしげるので別に、と答えた。

「そう?あ!ロマーノ!」
「んあ?」
振り返る彼が、腕を強く引いて、抱きしめてきて。
「誕生日おめでとう!」
「…おう。」
…後でもう一回、ありがとって、言ってやろう。と思う。
今度は、ちゃんと彼に届くように。


戻る










































.

お祭り好きのうちのギルド…というか、うちの街の住人達にとっては、俺と馬鹿弟の誕生日、なんて格好の騒ぎ材料らしい。
一日中騒ぎに引きずられて、目を回してきゅう、となったところでスペインに回収された。

「すっごい騒ぎやなあ…」
毎年こうなん?尋ねてくる声にまあな、と答えながら、ソファに倒れ込んだ。
あー…と声を出すと、ほら、首元緩めたら楽なるで?と伸びてくる手。
「水いる?」
「欲しい…」
言えばちょっと待ってな、と立ち上がるスペイン。…去年は、弟が一緒だったから、二人してへとへとで翌朝も立ち上がれなくて。ろくに飯も食えなくて。
それを考えると、なんて恵まれた環境なんだろうと、しみじみ思う。

「ほい。」
お待ちどーさん、と差し出されたコップをなんとか受け取り、飲み干す。ほう、と一息。
コップを返してソファに突っ伏し目を閉じる。
「寝る」
「はいはい。…あ、そやロマーノ」
忘れてたわ、と言う声になんとか顔を上げる。目の前に突き出される、…紐?

「お誕生日おめでとー」
「?おう…っ!」
受け取って、ひっくり返して気が付いた。
これ、御守の組み紐だ。糸を1本1本編み上げて作る、紐の形の、お守り。緑と、赤と、黄色、の。
「買おうかなーとも思ったんやけど、何がええか思いつかへんかったから。」
おそろいなんやけど、いい?と聞かれてがばっと顔を上げた。

「な、何?嫌?」
「い、嫌じゃない!」
首をぶんぶんと横に振って、ぎゅ、と握りしめる。
「あ。オーストリアに守護の魔法かけてもらっとるから。」
「だろうな。」
魔力でわかる。彼のものだから。体を起こし、足首にそれをつける。

「お。足首。」
「…悪いかよ?」
「全然。」

にこにこ、うれしそうな笑顔。…何だよ、ばーか。
…そうだよ、悪いかよ、おまえと一緒のとこにつけたいって思ったら!にやにやすんな!
「ロマーノ〜。」
うきうきした声を聞いてなんだかいたたまれなくなって、寝る!と宣言してごろん、とソファに顔をつっぷした。


戻る










































.

携帯を開けて、メール問い合わせ。…来てない。まったく。スーツケースを転がして、ベンチに座る。
いつものことなんだけど、さ。あいつが待ち合わせに、とか迎えに来るの、時間通りに、なんてあり得ない。最長一日の遅刻魔なんだから!(日付勘違いしてたらしい!馬鹿!さすがに二時間ちょいで帰ったけど。)

メール送ったのは一時間前。到着時間、だけ書いたやつ。そっけなさすぎるかと思ったけれど、…返信は、楽しみに待ってるで!とうれしそうなもので。…こういうメール、つい保存してしまって、受信ボックスがすぐいっぱいになってしまう。…どうにかしなければとは、思うんだけど。

ため息を一つついたら、おーい、ロヴィーノー、と遠くから声。見れば、ひらひら手を振る恋人の姿!
…に、またため息をつきそうになった。ああもう、せっかく少し早く来れたのに!ちょっとお茶飲みに行ったりしないかなぁって期待とかして気合い入れてきた自分が馬鹿みたい!
いつもどおりすぎるジャージ姿のアントーニョに、遅いわよ馬鹿!と怒鳴りつけた。


車に乗り込んで、シートベルトを締めれば、走り出す車。スペインの家まで、車で30分、くらい。
「好きな曲かけてええよ?」
「どうせいつものしかのせてないくせに。」
言ってやると、だって新しい曲わからへんねんもん、だって。もう!
ごそ、といつも聞くCDを探し出してかければ、車の中に響く、ちょっと古い、甘くて切ないラブソング。
しばらくすればほら。ちょっと音の外れた鼻歌が聞こえてくる。
それを聞きながら、シートに身を沈めると、やっとほっとできた気がした。

…アントーニョとは、幼馴染で、私が生まれた年に引っ越してきて、小さい頃は本当にずっと一緒だった。隣同士で、家族ぐるみで仲良かった。中学で、あいつんとこまた大阪に引っ越したから、それから会ってなかったんだけど、たまたま大学が一緒で。
出会ってから20年、再会してから2年で、恋人として付き合いはじめて。
でも、その後、彼が大学卒業してすぐ、姉の仕事を手伝うことになったから、と大阪へ戻ってしまって。
週末になったらこうやってスーツケース持って押しかける生活が始まって、すでに2年。
…言って欲しいなと思ってる言葉があるのに、こいつは全然気付いてくれない、まま。

「あ、そうそう、火曜日に姉ちゃん、子供生まれたんやんか。…ってメールしたっけ?」
「…あんたからじゃなくてお姉ちゃんから写メつきでもらいましたー。」
じと、とにらんでやれば、あちゃー、やっぱ忘れてたか。ごめん。って、あんまり悪いって思ってなさそうな笑顔。あーもう!
それにしても…子供、か。写メのお姉ちゃんは、本当に幸せそうで。
旦那さんとは、出会ってすぐこいつしかいない!って結婚したらしい。
……それに引き換えこいつは…

ちら、と隣を見上げる。もう2年。そう、2年も経つ、のに。
どーしてこう結婚、とかそういう話がまったく出てこないんでしょーねー…っ!!
…不安になる。どうしても。
家族ぐるみの付き合いだ。今更挨拶も何も、ないし。仕事だって順調みたいだし。
……そういう真剣な付き合いじゃないのかなって思ったり。
でもこいつの態度見てるかぎり、それは有り得ない。真剣にまっすぐに。それしかできない猪突猛進男なのは、幼い頃からの付き合いで嫌と言うほど知ってるし。

…でも。
「…ちょっと寂しいんだからね、ばか…」
「えー?何?」
何でもないわよ。そう返して。ため息をついた。



「そんでな、あいつら結婚式で〜」
…っこんのKY…っ!よりによってなんで話題がそれなのよ…!
大学時代の友人が結婚式、したのは知ってたけど。行けなかったのは私だけど!
「…でも、もうほんまに幸せそうで、ええなあって思ってん。」
…かちん、とした。幸せ、だってわかってるのになんで!
「…なんで、」
「ん?何?」
「だったら何で私になんにも言わないのよ…!」
そう怒鳴って、帰る!と叫んだ。
「え、ちょっ!」
シートベルトを外すと、待って待って待って、と車を止めた。
「何!?」
「…っ2年、よ、もう2年!ずっと、ずっと待ってたのに、あんたがなんにも言わないから…!」
何で言ってくれないの。こっちへこいとか、一緒に暮らそうとか!
こっちは覚悟決めて、ずっと待ってるのに、あんたは、何にも。

「…もう嫌なの、向こう帰って落ち込むのは!」
叫んで、顔を覆うと、強い力で抱きしめられた。
「ロヴィーノ、」
「っ嫌、離して!」
「嫌。離したら帰るんやろ?」
ぎゅう。強く抱きしめられて。
しばらくばたばたしても、決して力を緩めてくれないから。
力をゆっくり、と抜いたら、頭の上から、くく、と笑い声が聞こえてきた。
「っ!何笑って…!」
見上げると、ごめんごめん、怒らんといて、と笑顔。
「だから!」
「やって、…それでええんやあって。」
ずっと、なんて言ったらええんかなあって悩んでたから。プロポーズ。なんて言ったらうんって言ってくれるかなって。
…悩んで、たんだ。考えてたんだ。考えてくれたんだ!
ぱっと見上げると、優しい瞳。髪を撫でる手。

「じゃあ、な、ロヴィーノ。」
こっちおいで。俺と一緒に暮らしてくれへん?そう、言われた。ポケットの中から、ビロードの箱。
「!」
「なあ。あかん?」
優しい声。受け取ってくれへん?差し出された箱に、涙を流したまま、笑う。

「ばーか、それじゃ私が言ったまんまじゃないの!」
「んーやったら、」
俺の奥さんに、なってください。
まっすぐな言葉に、くる、と目を丸くして。
ばか、と呟いて、抱きついた。



大阪LOVER by DREAMS COME TRUE





戻る





































.

楽しい?と聞かれたのでわりと、って答えておいた。
ここは季節はずれにもほどがある、冬の海だ。いくら春が近いとは言え、まだまだ寒い。

誕生日プレゼント何がいい?って。金もないくせに言ってくるから、じゃあ海連れてけって言ったんだ。
海じゃなくてもよかったんだけど。…二人きりならどこでもよかったんだけど、きっとこいつは気付いていやしない。
夏になったらまたみんなで海行こうなーなんてバカ言ってるこの馬鹿は!

「ばーか。」
「えー…いきなり何ー…」
いきなりじゃないってのこのやろー!
なんでそこで『二人で』って言えないのか…
まあ言えないからこそのスペイン、なんだけど。

「…なあ、スペイン。」
「ん?」
ん。と目を閉じてみせると、ええよ、お姫様。とちょっとうれしそうな声。
唇に触れる熱。ついでに頭を撫でられた。

…『黒騎士』とのあの約束は、素直にねだれない俺にとっては、スキンシップをねだるいい言い訳になった。
満足するまでキスしろって、言った直後にそれは欲求不満だと、とかふざけんななこと言い出したからぶん殴ったんだけど。
…実際そうなのかもしれない。常に、スペイン不足。まあ、一緒にいるってだけで幸せだったりも……ああもう、馬鹿なのは俺か。まったく…妹とかじゃがいもとかのこと言えないくらいの、スペイン馬鹿!

「ロマーノ」
何考えてるん?静かな声にまさか、おまえのことだなんて言えなくて。
「ひみつ、だ。」
そう笑って、ひょい、とヘルメットをとってかぶる。

「ほら次行くぞ次。」
「次?まだどっか行くん?…まさか買い物とか、」
「当たり前だろ。」
「えっえっ!?マジで!?ちょ、ま、待った、待って待ってロマーノ!」
「いーからさっさと原チャ動かせ馬鹿!」

やから俺金ないねんてー!と叫ぶスペインの背中を押しながら小さく笑った。
買い物は買い物、でも、夕飯の用意だ。それから、スペイン家でパーティだ。そうだな、小さいケーキとか、買って。誕生日だし。

結局それは、いつもの休日と全然変わらないのだけれど、それが楽しいのだから、…それが欲しいと思ってしまうのだから、それでいいんだと思う。



戻る







































.

※ロマ高2くらいの話


誕生日の夜はパーティーだ。
それは毎年のことだから。
だから、それまでこいつと過ごそうって決めて、勝手知ったる隣の、幼なじみ兼恋人の家にやってきたわけで。
…まあ、そうは言ったって、いつもと何も変わらない。私も特別な格好なんかしてないし、こいつに至ってはジャージだし。
誕生日おめでとうって言葉は、最初にもらったけど。特別なんてそれくらい。

「ロマーノージュース取ってー」
「…ん。」
雑誌から顔も上げずに、ペットボトルを渡してやる。おおきにー。間延びした声。

会話なんてそれくらいで、でもそれが嫌じゃ、ない。
パソコンかたかた触ってるスペインの背中を背もたれにして、雑誌をぱらぱらめくる。
…あったかい体温。

する、と片手を後ろにやって、頬杖ついてた左腕を引っ張って、繋ぐ。
くすくす。笑い声。あたりまえみたいに、恋人つなぎにされてちょっとどきっとした。

指を絡めながら、ただ、時間が過ぎていくのを待つ。


「…なあロマーノ。」
「何?」
答えると、背中にかかってくる体重。おーもーいーと言うと、一度手が離れて、後ろから抱きついて来た。
「なんなの。」
重い。ともう一度言うのに、んー。と言うだけで動かない。
全体重はかけてきてないのは、わかってる。
でもやっぱり重い。
だから、また声をかけようとして。

「…いつか、ロマーノがおばーちゃんになって、俺がおじーちゃんになっても、こうして誕生日、のんびり過ごせたらええなあ…。」
はあ?声を上げる前に、ぎゅう、と抱きしめられる。
「ずっと、ずうっと、毎年。こうやってお祝いできたら、ええと思わへん?」
なあ、ロマーノ。
…ずっと、ずっと?それは、…どういう意味?
こいつは本当に予想がつかない言動をするから、わからない。ただ、思いついたから言っただけかもしれない。
…でも。

なんか、プロポーズっぽい、とか思ってしまうのは、私のうぬぼれ?

「…何よ、それ…。」
「あ、ひどい。一応これでもプロポーズのつもりやねんで?」
さらっと言われて、わ、わかりにくいわよ馬鹿!とひっくり返りそうな声を必死に押さえて怒鳴った。

プロポーズ、プロポーズ!?
っていったって私、まだ高2、だし!
「まあ、まだ結婚はできへんけどな。…今結婚してロマーノ幸せにできる自信あるかって言われたら、ないもん。…やから、約束。」
指切りしよ?そう言って、指を絡められる。目の前で。
「ロマーノが高校卒業したら、婚約しよう。ちゃんと、おじさんとおばさんにも言うて。認めてもらえるように俺も、がんばるから。…それまではまだ、約束だけ、やけど。」
指切りげんまん、って。…ねえ、もう子供じゃない、のに。

「…やるの、お父さんに娘さんを僕にくださいって。」
何言っていいかわかんなくてそう聞いたら、やらななあ。って。
「うー…嫌ですって即答されそうやねんけど…。」
おじさん厳しいもんなあって。
「でも、がんばる。…ロマーノのためやったら何だってやったるわ。」
ロマーノ。…いつだって優しい声。
私が泣いてるのに、気づいてるくせに。何も言わずに頭を撫でてくれる。

「意外とお母さんの方が難関かもよ?あとじいちゃん。」
「げっ!忘れとったー…あのじいさんほんま元気やんなー…うう、がんばろ…。」
応援してなーロマーノ。応援だけ、ね。
そう、泣き出す一歩手前の声で会話を交わして。

「やから、指切りげんまん。」
「…指切り、げんまん。嘘ついたら…責任取って結婚してもらうから!」
「あっはっは!それ罰になってへんて!」
笑い声を聞きながら、私も小さく、噴き出した。


戻る









































.

「何なんだよ、あれはー…」
馬鹿。そうぼやくと、ごめんって〜と頭を撫でる手。そんなので誤魔化されるか!
「だいたい世界一長いチュロスってそれだいたいどうなるかわかんだろーが!」
「やって〜…」
世界で一番好きやって言いたいやんかあ。

「言えばいいだろ!」
んな後片付けのめんどくさいもん作ってないで!そう怒鳴る。
子供達も疲れ果てて途中で眠ってしまった。それでもなんとか、がんばって掃除したおかげでやっと、明日の朝もなんとか使える状態にキッチンを復元できたんだ!今何時だと思ってるんだまったく!

「…ええの?」
恥ずかしがるくせに。ぎゅう。抱きしめられる。なあロマーノ。低い声に、びく、と震える。
抱きしめられる、力強い腕。ベッドが少し、軋んだ。どきん、心臓が高鳴る。
「ロマーノ」
耳元で囁くな!ああもう!んの馬鹿!…っ弱い、のに!
「好き、」
「…ん、」
「大好き、やで。」
ロマーノ。甘い声。何度も聞いた言葉なのに、頬が紅潮する。ずるい、ずるい。こんな声。甘く、甘く、優しい声。
いやいやと首を横に振るのに、逃げんといて、と頭を抱き込まれる。

「愛してる。…世界で一番大好きや。」
愛しい人。生まれて来てくれてありがとう。優しくてあったかくて、…太陽みたいな。
いつも包んでくれるその声に、ふにゃふにゃにならないわけがないのに!

「大好き。俺の愛しい、たった一人。…ずっと一緒やで?な?」
「…な?じゃない、このやろ…。」
顔から火が出なくても、蒸気は出てるんじゃないだろうか。
それくらい熱い顔をシーツに埋め込んで、ぼやく。

「いや〜?」
…答えなんてわかりきってる、とばかりの、笑いを含んだ声。ちくしょう。悔しい。…でも、嫌なわけがない!

「嫌やないよなー。ロマーノ、俺のこと大好きやもんなー。」
なーロマーノ。甘ったるくて楽しそうな声!ああもうちくしょうその通りだよこのやろー!!

ちょっとくらいは焦れ!と勢いつけて振り返り、その唇に、頭突きの勢いでキスしてやった。

戻る