「おいで。」 ロマーノ。呼ばれて、ベッドに座る彼の膝の上に乗り上げる。 「よしよし、ええ子やな。素直な子は好きやでー」 「こ、子供扱いすんな!」 にらみつけても、かわええ、と笑うこいつには効果がない。 年を一つとっても、追いつかない。そんな存在であるこいつが、むかついて仕方がない。…だけど、 好き、で。 擦りよったら、お?どないしたん、甘えたさんやなあと頭を撫でられた。 「…悪いか」 「悪くない悪くない。かわええな。」 ちゅ、ちゅ、と額に頬にキス。 甘やかすようなその仕草が、くすぐったくて仕方がない。でも、甘んじて受けてやる。首に回す腕。 身をよじったら、スペインがそのまま後ろに倒れるから、うわ、とか言ってる間に、彼を押し倒すような形になっていて。 「ロマーノ積極的〜」 「おまえのせいだろーがっ!」 にやにや笑いに怒鳴ったら、冗談やんか、と楽しげな笑み。 次の瞬間には体が反転していて、その手際の良さに呆れた。 ちゅ、ちゅ、と首元にキスをしながら、楽しそうにネクタイを解く。 「ネクタイほどくのってエロいよな」 「変態」 ロマーノひどい…とか言ってるわりには、服を脱がすスピードは変わらない。 少しだけ上体を上げれば、ベッドの下に落とされるシャツとネクタイ。 「そうや、ロマーノ、脱がしてみる?」 「は?」 俺の服、と言われてなんで、と言ったら、何、できへんの?と聞かれた。 「馬鹿にすんな!」 それくらい、とまで言って、気づいた。 ひっかかった。とばかりににやと笑う彼の表情。 「…なんだよ…」 「べっつに?」 ほらほら、早よ。急かされて、手を伸ばす。 ぷつ、とボタンをはずす。現れる、褐色の肌。 「…」 「痕つけてもええよ?」 くす、と笑われて、馬鹿、と呟く。 三つ目のボタンに手を伸ばしたら、きゅ、と胸を摘まれた。 「…っ、てめ、」 「手、止まってるで?」 ふざけんなっ!にらみつけるのに、スペインの手は止まらない。突起を爪で引っかかれていやいやと首を横に振る。 「ロマーノ。」 耳元で囁かれた。熱い声。続きは?促されて、従わざる終えなくなる。…そんな声、反則だ。 シャツを掴んでいた手をゆっくり次のボタンに伸ばす。 やっぱり手は止まらない。くりくりといじられて泣きそうになる。その上、耳たぶを舐められた。水音が、響く。 「う、あ…っ」 「ほら。」 「ん、んう…」 震える指先で、ボタンをはずす。もう、ひとつ。なんとか、はずして。 「お、終わったぞ、ちくしょー…っ!」 「ん。ええ子。」 ちゅ、と頬にキスされた。そのまま、下に這っていく舌にぞくぞくしてしまう。 「ん、あ…ひゃっ」 「んー…かわえ」 そのままぴちゃぴちゃと突起を舐められて、はあん、と声を上げる。 甘噛みされて、ひゃあ、と声を出してしまう。 いつのまにかシャツを脱いだスペインが、かちゃ、とベルトに手をかけた。 「脱がすで?」 「…う、」 恥ずかしくなって身をよじったら、ん?と笑われた。 「それとも、このままシたい…?」 ズボンの上から自身を撫で上げられる。慌てて首を横に振った。さっきからの愛撫で、もう痛いくらいに立ち上がっている。これ以上焦らされるなんて、たまらない。 りょーかい、とベルトを外し、下着ごと脱がされる。ふる、と自身が震えた。ぽい、と捨てられるズボンを何となく目で追う。 「どこ見てんの。」 いつのまにか、下も脱いだスペインが覆い被さってくる。 褐色の引き締まった体は、思わず見惚れてしまうほど、綺麗で。 「ロマーノ?」 覗き込んでくる顔を見上げる。優しいオリーブの瞳と、目があった。 「…何かついてる?」 「…目と鼻と口。」 「あのなあ…。」 がっくりと肩を落とされても、見惚れてた、なんて言える訳がないし。 ふい、と視線を逸らそうとして、ふと思い出した。少し前の、スペインの言葉。 「…痕、つけて、いいのか?」 「え?…つけたい?」 聞かれて、おずおずとうなずく。いいの、なら。つけてみたい。 ええで。無防備に目前にさらされる、首元。…古傷が、少しあるのが、わかった。 唇を近づけかけて、ふと思いだす。 昔と違って、今では、あんまりそう気軽には会いに行けない。だから、会えない時間なんかすぐに過ぎる。その時間の中では、キスマーク、なんて、すぐに消えてしまって。 「…どこでもいい?」 「ええよ。」 好きなとこにつけ、と言われて、ターゲットを肩に変える。 そっと、唇を、寄せて。 がぶ。 「痛あ!」 声を上げたスペインが、びっくりした顔をしている。 「な、何、噛んだ!?今噛んだ!?」 「…悪いかちくしょー…。」 「いや…ちょっと、びっくりした…。」 触れた手の指の間から、赤い痕が見えている。見事な歯型。…ちょっと、満足。 ふふん、と思っていたら、何ー、俺吸血鬼にでもなるんー?とおろおろした声。 「馬鹿じゃねえの?」 眉をひそめて言ってやったら、ほんま口悪い子、と唇に噛み付かれた。 びく、と体が震える。 「何?ロマーノも噛み跡つけて欲しい?」 「…痛そうだから、やだ…。」 首を横に振ったら、やー、そりゃ、えー…と納得いかなそうな顔。 「…まあ、ええわ。」 その代わりキスマークだらけにしたるから覚悟しとき。 …そんなこと宣言しなくても、いっつもキスマークだらけにするじゃねえか馬鹿…。 呆れて見上げたら、とりあえずここ、と首元に吸い付かれた。ぞくん、と背筋をそらせる。 「気持ちええ?」 「べ、べつ、にっ!?」 いきなり自身を撫で上げられた。 ぞくぞくと感じてしまって、さらした首筋が、ちくちくと痛んだ。スペインが、吸い上げて、いくつもいくつもキスマークをつけているのだ。 「別に?ほんまに?」 「あ、ふあ、や…っ!」 「こんなにエロイ声出しといて?」 「〜〜っ!!お、お前のせいだこのやろー!」 怒鳴った。えー、俺のせい?なんて笑うなへらへら! だって、どう考えたってこいつのせいだ。今こんな状態にしたのも、こうやっていちいち言葉で詰ってくるのも、俺にこんな、…気持ちいいことがあるっておしえたのもみんなみんな、こいつなんだから! そうにらみつけたら、顔の隣にどんっと手が降ってきた。 びくっと身をすくめたら、ロマーノ、と低い声で呼ばれる。 「他のやつの前で、そんな風に煽ったらあかんで?」 まっすぐに、なんだかいつもより暗い光を宿した目で言われて、あ、あおって、なんか、と呟く。 「煽ってる。十分。…そうやんな。全部俺がしてんもんな。」 なあ、ロマーノ。そう言いながら、首を舐めあげられる。途中、不意に甘噛みされたりして、鼻にかかったような声が漏れる。 「これからも、ずっと俺だけにしといて?」 当たり前だ馬鹿。そう返そうとした言葉は、突然自身を上下に扱く手に、嬌声に変わった。 ああん、と声を上げて、一度快楽を認めてしまうともうだめで、弱いところを知り尽くしている手に翻弄されてしまう。 「や、スペイ、あ、あっ、はあ…!」 もうイきそう、というところまで高められて、頭が真っ白になる直前で緩められる愛撫。的確でしつこいそれに、もう気が狂いそうになってしまって。 「スペイン…っ!!」 もう無理、と首を振る。なのに、聞いてないふりして、スペインは、手は愛撫をやめず、鎖骨のあたりにちりっとした痛みを残しながらキスマークつけるだけ。 「も、やあ…っ!」 もう少しなのに。あと少し解放されるのに、勢いを緩めていく手。 耐え切れなくてもう自分で、と伸ばした自分の手は、しっかりとスペインに掴まれて頭上へ。片手で簡単に捉えられてしまうのがとても悔しい。にらみつけたら、途端に強く扱かれる。 「ひあ、や、あんっ!」 「気持ちええ?」 こくこくとうなずく。気持ちいい。でも、足りない。イきたい。それに。 さっきから頭を占めるもう一つ、に、泣きそうになる。 渇く、のだ。…後ろが。触れて欲しくて、仕方がない。 「スペイン…!」 どっちにしろ我慢なんかできなくて名前を呼んだら、どないしたん?と顔をのぞき込まれた。 「も、我慢できな…!」 訴えたら、イきたい?と聞かれた。うなずく前に、それとも、と言葉が続く。 「それとも、ここ、さわってほしい…?」 秘部の入り口あたりを撫でられて、びく、と体が震えた。 「な…なんで」 何でわかったんだ、とうろたえながら尋ねると、無意識か、って…何が? 小さく笑ったスペインが、耳元に唇を寄せてきた。まるで内緒話でもするみたいに。 「ロマーノのここ、さっきから物欲しそうにひくひくしてる。」 「…っ!」 かあっと顔が熱くなった。ほら、また、なんて、言うなよ馬鹿! じわり、と涙がにじんできた。いつのまにか離されていた手で目を覆う。 「…うう…っ」 「ロマーノ?」 「…わ、かってるなら、なんで…っ!」 触ってくれない、の。 そう言ったら、やってーと明るい声。手を取られる。頬を伝う涙を、舐め取る舌。 「ロマーノが感じてる顔もっと見てたい。」 「…っ!馬鹿!」 顔めがけて腕を振ったら、ぱし、と止められた。 そのまま肘の裏側、柔らかいところに吸い付かれる。残る、紅い痕。 「まあ、いじわるはここまでにしとこか。足、開いて。」 言われて、ゆっくり、小さく開く。途端にぐい、と片足を肩に担がれて、期待で、秘部が収縮したのが、わかった。 「ほら、ひくひくして」 「言うな!!」 怒鳴ったら、はーい、とふざけた返事。それから、先走りを絡め取るように指が動くから、ぞくぞくとしてきつく目を閉じた。 つぷ、と後ろに差し込まれる指。待ち望んだ刺激に、きゅ、と締め付けてしまって。 「あ…。」 「ロマ。これじゃ動かされへんやろ?」 たしなめるように言われて、深呼吸して力を緩める。ゆっくりと、壁をえぐるように動かされて、もどかしさに腰が揺れた。 「ロマーノが弱いのはここ?それとも、こっち。」 「あ、ん…っし、ってるくせに…!」 焦らすな、スペインのくせにっと言えば、もー…といいながら、俺の手を背中に回してしまった。そうしないと、快楽に負けた俺が手のひらに爪を立てて耐えようとするって知ってるから。 「知ってるで?ここ、やんな。」 ぐい、と強く刺激されて、甲高い声が出た。ぐいぐいと攻め立てられて、スペインの背中に爪を立てる。散々焦らされた後にこれ、は、ひどかった。すぐに背筋を駆け上がってきた快楽に、頭が真っ白になって。 「あ、ああああっ…!」 びゅく、と吐き出した。背中に立てた爪で、ぎり、と思い切り引っかいて。 「…っ、は、あ…。」 荒く息をしていたら、ちゅ、と頬にキス。 「うーん、イくときの顔がやっぱ好きやな。」 「ば…っ!」 何言ってやがる、と声を荒げたら、本心やもん、ってもっとたち悪い! 「馬鹿野郎、変態!」 「えー…。」 「お、…れじゃなかったら、」 とっくに嫌われてるぞ、馬鹿。そうつけたして視線をそらしたら、少しの間の後、ぎゅっと抱きしめられた。 「えー何何、それってつまりロマーノは俺のこと好き好き大好きって〜?」 見なくたってでれでれした声でどんな顔してるか予想できる。 「俺も大好きやで〜。」 「知るか!」 「大好きやから。…なあ、ええ?」 尋ねられて、息が詰まった。…何について聞かれているか、わかってしまったから。 答えられないでいたら、太股に押し付けられた、熱源。 「…っ!」 「ロマーノ。」 お願い、なんて言いながら、耳に吸い付かれる。…俺が耳弱いの、知ってるくせに、というか、答えなんか知ってるくせに! 秘部がくちゅ、と音を立てて収縮したのが、わかる。 「…、」 「ロマ。」 我慢できるん?なんて笑って、自分の状態棚に上げて聞いてくる馬鹿を、にらみつけて。 我慢なんてできるわけがない。だけど。ここで認めてしまうのは、むかつく。非常にむかつく。 き、とにらみあげる。この余裕づらを崩してやりたい。そう思って、背中に回した手に強く力を入れた。ぐい、と引き寄せて、さっき俺がつけた歯型から、首を通って、耳まで舌を這わせる。 「…っ!」 小さく息を飲む音を聞きながら、少し迷ってから、呟いた。 「スペイン…。」 欲しい、も、好きも、言えないから。 その感情を全部込めて、名前を。 「っ!ロマーノ!」 ぐい、とシーツに押し付けられた。ぎらぎら光る目に縫いとめられて、ぞくんと体が震えたのは、滅多に見ないその表情に対する恐怖、よりも。 「…もうあかん。」 切羽詰った声を出す、スペインへの、期待と、歓喜の方が大きい。 足を開かれる。あてがわれるそれの温度に、思わずため息をついて。 「ロマーノ…。」 「あ、あっやっ…!」 ぐぐぐ、と奥まで広げられる。それが入ってくる感覚に、必死にスペインにしがみついて。 「…っ、はい、った…。」 「あ…んう…。」 動くで。囁くように言われて、小さくうなずく。 すぐに、つながっている部分を通して、流れ込んでくる快楽。声を上げて、背中に爪を立てて、体をくねらせる。もう、こうなったら、我慢なんかできない。 「あ、や、スペイン、スペイン…っ!」 好き、愛してる、もっと、気持ちイイ。 言えない言葉全部ひっくるめて『スペイン』という言葉にして吐き出す。甘ったるい声が自分のものだなんて信じられないけれど、吐き出さないと、体の中に溜まっておかしくなってしまいそうで。 「っ、ロマーノ…っ!」 「すぺ、やあああっ!スペイン!」 伝わってるかなんて、知らない。でも、名前を呼ぶほど、動きが激しくなって、与えられる強烈な気持ちよさに、溺れてしまって。 「あ、あっ、も、もう、すぺい、」 「…俺も、限界。」 愛してる、そう低く囁かれた次の瞬間、達してしまった。少し遅れて、スペインがイったのが、わかって。 「…、…すぺ、いん…。」 キスして。そういう思いを込めて呼んだら、頬に手をあてて、深く、口付けられた。 「…おはよ、ロマーノ。」 目を覚ましたら一番最初に見えたのがスペインのバカ面で、なんだかちょっとテンションが下がった。嬉しいとか、そういうのはない。ない。 「…なんだよちくしょー…。」 「もーこの子は…朝の挨拶はそうちゃうやろ?」 「…おはよ。」 「ん。おはよう。」 ええ子やねー頭をくしゃくしゃ。いつまでも変わらない仕草。 こっそりためいきをついて、体を起こす。 何も着ていない体に、落ちていたシャツを羽織る。…しまった、これスペインのだ。すそが長い。 「…ええなあ。」 何だかによによした声が後ろから聞こえて、ちょっと嫌な予感がしたから、スペイン、と先手を打つ。 「…しゃーないな。じゃ。朝飯にしよか。」 お腹すかせたロマーノのために、と笑うから当たり前だちくしょーが。とふんと笑って言ってやった。 数分後、洗面所の鏡で、赤い虫刺されのようなそれが体を覆いつくすようにつけられていることに気づいたロマーノが大激怒して、朝食は大幅に遅れたりするのだが、それはまあ、まだ未来のこと。 戻る |