愛している、と言ってもらうのが好きだ。ドイツは恥ずかしがって滅多に言ってくれないから、余計に。 すきすきすきーと何度も言って、最初は、ソファに座ってたドイツに、俺の方からのしかかっていたはずなのに、耳真っ赤にさせて照れててかーわいいとか思ってたのに、ああもう!と開き直ったドイツに押し倒されて、まっすぐ見つめられて愛しているって言われたら、もうたまらない。何度だって聞きたいから、何度も何度もする。成功することは少ないけど。 それに、やめてくれって耳赤くしてるのもかわいいし、意を決したその瞳の色は息を飲むほど綺麗。…未だに、何がきっかけで開き直るのかはさっぱりわかんない。抱きついてすぐの時もあるし、首に抱きついてキスしたってダメなときもあるし。 頬を包む大きな手。するりと顔を撫でる手はごついけど、暖かい。 大きな手の上から俺の手を重ねる。ふ、とドイツが微笑んだ。優しく、鼻の頭にキス。 「好きだ、イタリア。」 甘くて低い、大好きな声が、愛を告げる。 それだけでもう、胸がいっぱいになるくらい幸せで!その首に腕を伸ばして抱きしめる。 「俺も、」 「俺も?」 先を促すように、笑いながらドイツが言う。聞かせてくれ、イタリア。おまえの声で聞きたいんだ。耳元で囁かれる言葉。 ドイツは、なんか、よく知ってる気がする。どういう時にどう言えば、俺が一番どきどきするのか。俺は思ったこと思った瞬間に言っちゃうけど(だからいいんだ、とドイツが褒めてくれたけど)、ドイツは言葉にしないで、溜めて、それから言う。一番のタイミングで。強い言葉を。 その言葉は、もうずるいくらいの威力で俺の心を虜にしてしまう! 「、す、き…」 何とか言ったら、唇に触れるだけのキス。 「俺も」 「俺も?」 同じこと言ったら、こら、と鼻をつままれた。ふが、と言ったらおかしそうに笑う。それから、ぎゅう、と抱きしめてくれた。 「好きだ。」 耳元で囁く声は、俺と同じ言葉を紡いでいるのに、俺のよりずっとずっと強くて。 ああ、愛されてる。そう思うと胸を満たす気持ちが溢れ出しそうになってしまう。 「ドイツ、」 「ん?」 「だいすき。」 甘えた声。とけるような、甘い声。こんなの、俺が出せるなんて、ドイツと恋に落ちるまで知らなかった。 「…そんな声を出すな。まだ昼間だぞ?」 困った声。そのわりに表情は楽しそうだね?ドイツ。 瞳の色が、少し変わる。隠しきれない欲が、にじむ。ざわり、と背筋が痺れた。 「俺のせいじゃないもん、ドイツのせいだもん。」 それに今日は休日なんだから、誰も咎めたりしないよ。 笑って言って、回した手で背中を撫でると、噛み付くようにキスが降ってきた。 「覚悟しろよ、おまえが誘ったんだからな?」 「えー。ちょっとくらい手加減してよ。」 吐息が触れ合いそうな距離で言い合ってくすくす笑って、もう一度唇を重ねた。 戻る . ※人名有注意! ねえドイツ。かくれんぼしようよ。 「…かくれんぼというほど生易しいものか、これ…」 軽く了承した自分に深くため息をついた。 今日は、ハロウィン。街に賑わう、仮装した人々。 この中から仮装したイタリアを探せというのだから、なかなか難易度の高いことだ。ため息。 「…行くか。」 小さく呟いて、足を踏み出した。 人の顔を見ながら、混雑した大通りを歩いていく。…とはいっても、ペイントや被り物で元がわからない方が多いのだが…。 容貌でわからないなら行動で、とは思うけれど、この街が国境に近いからか、仮装大会をやると大々的に宣伝していたからか、あいつのとこの出身だろうなというのはすでにかなりの数見た。 …ううむ。 「…無理じゃないか?」 ぼそりとぼやく。この中から見つけだすなんて…イタリアもかなり自信があったようだし。というか、被り物とかしていたらもうわかるわけがない。 しかし、途中で投げ出すのはできないので、イタリアと約束した時間までは探そう。 一人一人顔を見るのをまた再開する。この大通りのどこかにいるという約束だから、必ずいるはずなのだけれど。 それにしてもいろんなモンスターがいるなと少々、あきれた。もちろん、普通の格好の人の方が多いけれど。仮装大会の優勝賞品がなかなからしい。 ハリウッドのようなかなり凝ったリアルなフランケンシュタイン、ミュージカルみたいに顔にペイントしまくった化け猫、日本のゲームやアニメに出てきそうな、古めかしい黒の正装のヴァンパイア、 「いたずらするぞー!」 「…っと」 すぐ横をシーツ被った子供たちが駆けていくのを避けて、きゃーとはしゃぐ後ろ姿をながめ、元気だな、と小さく頬を緩める。 そして、また歩きだそうとして。 「…ん?」 何か、が、ひっかかった。 さっき見た光景の中、で。 もう一度振り返る。 フランケンシュタイン、は家族連れだ。父親らしい。 化け猫、はどう見ても女性、で。 では。その化け猫に声をかけてあしらわれているヴァンパイア、は。 じっと見ていると、ちら、とこっちを伺う目と、視線が、あった。 「あ。」 「なっ…!!い、フェリシアーノ!」 イタリア、と思わず呼びそうになって慌てて変える。 ばれちゃったーちぇーとか言ってるのは間違いなくイタリア、だ。そのはず、だ! 「どうしたんだその髪と目!」 髪が金髪で目が蒼眼だとしても! 「えへへーどう?」 ルーイとおそろい。一回やってみたかったんだー!と笑う笑顔はいつもどおりなのに、髪と目の色が見慣れなくて。…変な感じ、だ。いや決して似合わないわけじゃない。…けれど、普段の色の方が好きだ。 微妙な感情が顔に出ていたのか、いーじゃんお祭りなんだから、今日だけ。とふてくされて言われて。 「…まあ、そうだな。」 「うん!じゃあほら、行こうよ!」 お祭りは楽しまなきゃ、という声にはいはい、とため息をついて。 「そういえば、ルーイ何でわかったの?」 俺絶対ばれない自信あったのに。と言われ、そうだな、と考える。 確かに全然わからなかった。 ただ、通り過ぎては行けないと、何かが警告して、それは。 思いついた、らしくない答えは、祭りの空気に当てられたということにしようか。笑って、見慣れない色の髪をかき上げ、その耳にそっと、囁いた。 戻る |