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甘くとろけるような甘いものが、好き。

「カナダ?」
優しい声が僕を呼ぶ。カナ?カーナーダ。

甘やかすようなその声が。とても好きだ。
「カナダ、起きて?」
きょうはねえ、ホットケーキだよ。メイプルシロップもたっぷりある。もちろん、ほかの甘い物も、たくさん。
彼が上げ始めたお菓子の名前に、自然と頬が緩んだ。だって、大好きなものばっかりだ!

「昼御飯も晩御飯も、ほっぺた落ちそうなくらいおいしいもの作って上げる。」
だから、カナダ、起きて?ね?
それはとっても素敵だ。起きてもいいかなーとも思うんだけど、でも。

「カーナ。」
とろけるような甘い声、に、その上、優しく頭を撫でる、その感触に。
もうちょっとだけこのままにしとこうかなあと思ってしまうのだ。

「カナダー?」
なによりその、甘い声が好きだから。
どんな顔で話してるんだろう。ちょっと気になって。
そうっと、目を開けたら、ばっちり視線があってしまった。
途端に、優しい笑顔!

「おはよう、カナダ。…誕生日おめでとう。」
おはようとおめでとうのちゅーしてもいい?

その声がとびきりに甘かったから。
ありがとうございます、と笑って、何より甘い甘いキスをしてもらうことにした。

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フォークで小さくしたケーキを口に運びながら、やっぱり変です。と声に出す。
「何が?」
「何でフランスさんの誕生日なのに、僕がもてなされてるんですか?」

そう、フランスのお祝いにきた、はずなのに。
よく来たねカナダさあおいでって、いつのまにか椅子に座らされて、出てくるケーキやクッキー。
おいしそうなそれについつい、食べてしまったけれど、やっぱり何かが変だ。
もてなされるべきなのは、フランスさんのはず。

「いいのいいの。俺は、カナがそうやって幸せそうに一緒にいてくれるのが一番うれしいから。」
そう、にこにこ。…フランスさんが幸せなら、…でもやっぱり変!
だって、お誕生日のケーキをなんで僕ばっかり食べてるんですか!

「…じゃあ、あーん」
フォークに乗せたケーキを、彼の口近くに運ぶと、きょとんとした後、それはいいねえ、とにっと笑った。ぱくり。とケーキを食べて。

「カナ、もう一口。」
「…今日だけですよ?」
「うん。あ、もうついでだからこっちおいで。」
呼ばれて、すとん、と彼の膝の上に横座りになって、あーん、をするはめになって。…ちょっと恥ずかしいけど…
なんかフランスさんが嬉々としてるからいいかなと、思った。

「誕生日だから、ですからね!」
「はあい。」
カナ、大好き。
甘い声に、ほんとに、どっちの誕生日かわかんないなあと苦笑した。
だってこれじゃあ、僕の方が幸せじゃないですか!

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「誕生日おめでとう!」
ほら、これプレゼントだぞ!
どん!と渡された大きなケーキに、ちょっと、これ大きすぎるよ〜と文句を言う。
けれど、緩んだ頬は戻らない。うれしい。ちゃんと祝ってくれて。
「はいカナダ、私からも!」
「これは俺からな。」
わいわいと集まってくるみんなに、ありがとう、とお礼を言いながらうけとる。
なんか朝からパーティーだぞ!!ってお越しにきたのは他ならぬアメリカで、それから、どんどんみんながやってきて。
誕生日おめでとうって言われるまで、何でこんなに人が一杯なのかわかんなくて、クマ三郎さんと顔を見合わせてたんだけど。
でも、こうやって笑顔で、おめでとうって言ってもらえたらとってもうれしい!
「おめでとう、カナダ!」
「ありがとう!」
このときは、一年で一番素敵な、楽しい一日になるんだって。

そう、信じてた。



いい、天気だ。
街はにぎやかで、明るい。
そりゃあ悪いニュースだって世界にゃ溢れているけれど、市場や街のにぎやかさは、…いつだって変わらない。

ノックの音。呼ばれる名前。返事をすれば、がちゃり、とドアが開いて。
「そろそろ、飛行機のお時間ですよ。」
「あー…いいや。」
「……はいい?」
あっさり言ったら、声ひっくり返ってた。はは。ごめんね、驚かせて。
でも、行かない。そう、決めたから。
「ちょっとストライキ〜ってことで。」
じゃ、お兄さんはちょっときれいなお嬢さんたちとお食事してくるから〜と言って、ふらり、と部屋を出た。


ああ、世界で一番愛しい子。君に、よい一年が訪れますように。







「あれー、カナダー?いないの?」
「ほら、急いでくる必要なかったろうが、馬鹿弟め。」
「だって〜、もう時間とっくに過ぎて…あれ、いた。」

カナダ?そう呼ばれ、ぽんぽん、と肩を叩かれる。
それでやっと意識が上昇して、声の方を見れば、きょとんと目を丸くしたイタリアさんと、その後ろに、ロマーノさんの、姿。

「え…?」
「そろそろ会議の時間…はとっくに過ぎちゃってるんだけど……どうかしたの?」
顔色、悪いよ。
言われて、瞬く。会議。イタリア、さんと。…ああ、確かにあった。それは、確か。4日の、予定、で。
そう思った途端にじわり、と視界がにじんだ。あれ?と思っていたら、わ、わわわ、とイタリアさんの慌てた声。

「か、カナダ!?ど、どしたの、何泣いてるの!?」
泣いてる…泣いてる?僕が?どうして?
だって。

だって、今日はもう、4日、だ。
1日はとっくに過ぎた。
…彼は、来なかった。連絡さえも、なくて。

「う、うえ…っ!」
「うわ、おい、どうした!?腹痛いのか!?」
「わ、わあ、ど、ドイツ〜…。」

必死になって二人に慰められて、どうしたの?って聞かれて、つい、素直に答えてしまった。
フランスさんから、連絡がひとつもないのだと。

「ヴェ、誕生日だったのに?ひとつも?」
「珍しいな…。」
そう、誰の誕生日にだって、お祝いごとには、メッセージ付きの花束なりなんなり送ってきてくれる、それがフランスさんだ。
…僕の誕生日には、毎年、絶対に来てくれていた。どうしても来れないときも、花とか、手紙とか、いろいろくれた。
なのに。

「…もしかして…バレちゃったん、でしょうか…。」
「なにが?」
イタリアさんの優しい声。それと、ロマーノさんが作ってくれた甘酸っぱいレモネードの味に引かれて、そっと、口を開く。
「…僕が…フランスさんのこと、好きだって。」
…しばしの沈黙。

「…えっと…それで何でフランス兄ちゃんがこなくなるの…?」
「むしろ喜んで来そうだぞ…。」
「だ、だって、本気とか、面倒くさかったり、とか…。」
僕が言うと、二人は、そうなの、兄ちゃん?俺に聞くなよ、ちくしょーが。と言い合っていた。


…もし本当に、それが原因なら、僕は。
絶対に言わないから。お願いです。フランスさん。
たまに会って、笑って。
それ以上なんて、望まないから。





「そういえば、フランスさん。」
日本が呼びかけると、金髪の美丈夫はなあに?デートのお誘いかい?と軽く返してくるから、違います。とはっきり答える。

「このあいだの、カナダくんの誕生日、姿を見かけませんでしたが?」
「ああ。行ってないからね。」
さらり。当たり前とばかりに言われた言葉に、またたきの間黙ると、なにかあった?と声。

「…いえ…珍しいですね。」
「ああ、うん。気が向かなかっただけだよ。」
いけない?と聞かれて、いや、そういうつもりじゃないですけど…と小さく呟いて。
「…カナダくんのことは、大事にしていらっしゃると思ってたんですが。」
「そりゃあ大事だよ。俺のかわいい子だ。」
ま、俺には、世界中にかわいい子がいるわけだけど。
ふふん、と笑う彼に、なるほど。と曖昧に笑って。

つまり、フランスさんは彼だけが特別なわけではない、と言いたいのだろう。カナダさんだけが大事、なわけではないと。
けれど、それをわざわざ言っている時点で、いや、そもそも大した用もないのにカナダくんの誕生日にいなかった、という、誰の誕生日にでもだいたい現れるフランスさんにしては珍しいことをしてしまっている時点、で。…彼が誰より大事だと告白しているようなものなのに。

…恋愛慣れ、されてると思っていたのですが。
どうやら、本命に対しては、素人になってしまうらしい。
ひょっとすると、恋愛自体がそういうものなのかもしれないけれど。

これは、一波乱あるかもしれませんねえと、当事者の兄である恋人の耳にいれておくか否かを少し、悩んだ。




…メールも、こないんです。
しょぼんと呟くカナダくんに、あの馬鹿、と眉を寄せた。

まったく、なんという馬鹿だろう、あのフランスは。
こんなにかわいらしい子をここまで落ち込ませてしまって。
そっと手を伸ばして、頭を撫でて、ぎゅ、と抱きしめる。
ふわふわした髪。触り心地のいいそれも、頼りないイメージを助長するもので。
心配そうにこちらを見てくるクマさんにウィンクひとつ。大丈夫よ。そう伝えて。

イタちゃんたちがカナダくんを心配して、会議の予定のあった私にどうにかならないかな、と相談してきたのだ。
話を聞けば、…馬鹿よね。ほんと馬鹿。フランスって本当に。

「ハンガリーさん、僕…何かしちゃったんでしょうか…。」
「違うわ。あの馬鹿が悪いんだから、カナダくんは悪くない。」
全然悪くないわよ。そう笑ってみせるけれど、でも、きっと僕が、としょぼんとしたままで。
でも絶対、あなたは悪くないのよ。
ただあいつが、勇気がないだけ。
周りから見ればこれ以上なくわかりやすいのに、どうして隠せてるって思ってるのかしらね?

「ただ…そうね。あいつの気持ちも、ちょっとはわかるかな。」
え?と見上げてくる瞳。まっすぐすぎる、瞳。
きっと幼いことから変わっていないのだろう。
それは、とても、罪悪感とか、そういう純粋に恋愛をしようとする気持ちを害するものになるんだろう。

「そうねえ…大人になったら、欲しくても手に入れるわけにはいかないものができる、ってとこかしら。」
「…欲しくても。」
「でも。」
名前を呼んで、笑う。そんなのただの屁理屈よ。欲しいものは欲しい。…それで十分なのに、余計なことまで考えるから。

「あいつに遠慮なんてしなくていいわよ。…ほしいなら、手を伸ばさないと。」
だだこねたっていいじゃない。まだ子供なんだから。
それが本当に、ほしいなら。
あのやっかいな性格のフランスを手に入れるのは、それはそれで面倒くさそうではあるけれど。それでも、あきらめきれないのなら。

「あきらめちゃ、だめよ。」
まっすぐに伝えると、彼は小さく、けれどしっかりとうなずいた。



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「フランス、てめえカナダのこと泣かしたらしいな!!」
「は?」

ドアを蹴り開けざまに怒鳴ると、何のこと?と目を丸くしたフランスに、知らないらしいな、とため息ひとつ。
まあ、知っていて黙っていたなら殴ってやろうと思っていたが。
…どうやら、日本の言ったとおり本当にカナダを避けているようだ。

「知らないのか。」
「…知らないな。何、あの子がまた泣いたって?」
そんなに気になるなら、離れるなんてしなきゃいいのに…。
「…誕生日におまえがこなかったって泣いたらしいぞ。」
「まったく…いつまでも子供だね、あの子は…。」
お兄さんに会えないくらいあで泣いちゃいけないぞ?あの甘えたさんは…
そう笑って言うけれど、気づいてるか?笑うの失敗してんの。
心配でたまらない、愛しい。…そう、目が訴えてる。

「…それを甘やかすのが、好きだったんじゃないのか?」
かつてこいつが言ったことだ。
甘やかすと素直でかわいいよねカナダは。そう、愛しいと、笑って。

「…好きだよ。大好きだ。…手放せなくなるくらいに。」
ゆる、と頬を笑みの形にして、けれど笑えていない表情をした後、両手に顔を埋めてぼそりと言われた言葉に、こいつの本心が見えた、気がした。
手放せなくなる。…それが怖くて仕方が無い。そう怯える、本心が。
まったく、この臆病者。

「でも…ダメだ。あれを巻き込むわけにはいかない。」
愛が純粋でも、まっすぐでも、それだけで済むものじゃないっていうのはイギリス、知ってたか?
顔を上げて、何かをあきらめたように笑うから。

「それでカナダが泣いてもか。」
「こんなたちの悪いのに捕まるよりはきっと、ずっとマシだよ。」
自覚があるようで何よりだ。
けれど、カナダの方見に行ったやつらからも、どうにかしなさいよイギリス、とせっつかれているし。
相手を選ぶ目がない、と嘆きたくなるが、カナダがこの野郎でないと泣きやまないのは昔からのこと、だし。

ああもう、あのいい子のカナダをこれに、とか、本当は絶対阻止したいのに!
何で俺がそんな手伝いをしなきゃいけないんだ。こいつのせいだ。この、妙なところで臆病で、変態な、この馬鹿の。

仕方が無い、この馬鹿の目を覚まさせてやるか、と、とあるところへ電話をかけた。




いきなりばん、と玄関のドアが開いた。
「行くぞカナダ!」
現れたアメリカの声と、姿に、驚いていると、ぐいぐいと腕を引かれる。
「え、は、なに、え、ちょ、何で背中押すんですかクマ三郎さん!」
「クマ二郎だろ!ほら、早く!」
まったく世話が焼けるんだからな、君たちは!
そう言われたって何だって…ん、君たちって、誰のことだろう?
そう思っていたら、ほら早く!とアメリカが容赦なく引っ張るから、ああもうちょっと待って!とあわてて足を動かした。


あっと言う間に飛行機に乗せられて、どこかについた。
(だって教えてくれないまんまアメリカ操縦のセスナなんだ!)
大きな場所に通されて、ココで待ってるんだぞ!で、ばたん。
まあ、アメリカが唐突なのは今にはじまったことじゃないけど。
…ていうか、ここ、どこ…
「ていうか、何なんだろ…。」
きょろきょろする。…ううん、調度品は珍しくない感じがする、から、アメリカのとこ…じゃないな。飛行距離的に。なら、ヨーロッパ?でも誰のとこだろう…。
「…それにこれ、どっかで見たことある気がするんだよなあ…。」
壷を眺めていると、こんこん、とドアをノックする音。

「はい?」
答えると、がちゃ、と音。
「イギリス、一体なんの用…。」
入ってきた人を見て、目を丸くした。
同時に、入ってきた彼も立ち止まって。

「…フランス、さん。」
会いたくてたまらなかった人が、目の前にいた。


「…は。やられた。」
あの野郎、とどこか自嘲して笑う彼に、なんて声をかけていいかわからなくておろおおろしていると、ドアの隣に立ったフランスさんは、ドアを指した。
「イギリスにつれてこられたんだろう?悪いな、あいつの俺への嫌がらせに付き合わせて。…空港まで送るから、帰りなさい、カナダ。」
「やです。」
顔が強ばる。何で?どうしてそんなにすぐ帰そうとするんですか?
いつもなら、うちに寄ってく?と誘ってくれるのに。
それに、どうして、こっちを見てくれないんですか?フランスさん。
僕になんて、会いたく、なかった?

「…わがまま言わないの。」
帰りなさい。冷たい声に、イヤです!と声を上げる。イヤだ。今帰ったら、絶対、遠くなる。そんな気がする。
「ねえ、フランスさん、僕なにか、しましたか?」
「…何もないよ。なんにも。」
嘘。だったらどうして、こっちも見てくれないの?
その青い瞳を、僕に向けてくれないの?
「ただ、あまり調子がよくないから。…カナダにうつすわけにはいかないからね。」
これも、嘘。だって、いつもなら、調子が悪いことなんて絶対僕には教えてくれないのに。

ねえ、フランスさん。
じっと見つめても、その瞳の色を見ることはできなくて。
悲しい。彼が僕を見てくれないのは、とても悲しい。
けれど、あきらめるわけには、いかないから。
簡単にあきらめられるものじゃ、ないから。




「…フランス、さん。」
「ん?」
「僕はあなたが好きです。」
「!!」
「だから、…だから、冷たくされるのは悲しいです。」
はっきりと告げる。言葉。…これで余計に避けられたら、悲しいけれどでも、仕方ない。
伝えられないまま離れるよりずっと、いい。
「フランスさんの好みとは、違うかもしれません。子供だし、恋愛対象外かもしれない。…けど。」
もし、いやじゃなかったら、でいい。高望みなんてしないから。
「僕のこと、避けるのだけは、やめてください。…会いたくてたまらなくて、ほかのことが手につかなくなるから。」
本当にそうだった。いろんな人に迷惑かけて、それでも、ついフランスさんのこと考えちゃって。
だから、それだけはやめてほしいと言ったら、彼はしばらく固まって、それから、深いため息をついた。

「…フランスさん?」
「……まったく…仕方ない子だな。」
その言葉に、すみません、と謝りかけて。
ぐと腕を引かれた。香る甘い匂い。顔を埋める、胸は、誰のもの?
「ふ…フランス、さん?」
「俺から離れようと思ったのに…」
ほんとに仕方ない子だ。そう言いながら、あまり声は困ってない、みたい。
うれしそうなそれに、混乱しながら上を見上げたら、そっと額に降るキス。

「好きだよ、カナダ。…俺も、君が好きだ。」
「!!う、うそ、」
「ほんと。…あーあ、手放そうと思ったのに、戻って来ちゃって。どうするの?」
もう絶対手放せないよ。どうする?囁くような声に、しばらく考えて、それ、何かダメなんですか?と尋ねる。
「そうだな…大人の恋愛は、甘いだけじゃないよ。」
つらいことだって、やめたいって思うことだってあるかもしれない。
それでも、俺はカナダを離してあげられなくなる。それでもいいの?
…難しい質問だ。うーん、と考えて、でもあんまり想像できなくて、とりあえず、少し不安げな表情をした彼に、自分の気持ちを素直に伝えることにした。

「フランスさんがそばにいてくれるなら、なんでもいいです。」
どんなにつらくったって、どんなに悲しくったって、きっと。
…このひとのいなかった、今年の誕生日よりはずっとマシだと思うから。
そう言ったら、彼は目を丸くして、ぎゅう、と抱きしめてくれた。
小さな、ごめんな、行けなくて。…行く、覚悟がなくて。という謝罪の言葉。
すごくつらそうな声と、強い力。ほんとに、悲しかったです。そう、告げて。

「だから、ずうっとそばにいてください。…離さないで。」
「…わかった。お兄さんも腹をくくるよ。…一生離さない。」
愛してる、カナダ。
甘くて低い声の告白と、優しいキスに、悲しみも、悩んでいた気持ちも、切ない恋心も、全部、とかされて。
僕も、大好きです、と小さく告げて、その腕に体を預けた。



「ところで、カナダ。」
「はい?」
「今日俺、誕生日なんだけど。」
「へ?……あっ、た、誕生日おめでとうございます!」
「ありがとう。」
「あ、あ、しまった、プレゼント…!」
「ああ、いいんだ。…欲しいもの、もう目の前にあるから。」
「……はい?」
「イタダキマス。」

にっこり笑ったフランスさんに、体までとろかされるのは、もう数分後のこと。


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