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※ロマが先天性女体化の現代パロです。ご注意を



『あのな、俺。』

「う、うわあああっ!」
思わず叫んで飛び起きた。目に入るのは朝日の差し込む私の部屋。夢。と、呟いて、深く、息をはく。
…なんて、悪夢。
いや、本当は。夢じゃない。あれは。
だって。

『…俺、ロマーノが好き。』

昨日、そう言って笑ったのは、二年先輩のスペイン。
いや、先輩とはいっても、幼なじみで現在も隣の家で、ちっちゃいころから一緒に遊んだりしてきたのだけれど。

だからこそ、信じられない。彼の言葉が。

好き、だって?
何の冗談?まったく…
第一あいつは。
一度、私の告白を断ってる。

一年前。
好きだとやっとのことで伝えた私に、ごめん、と、あいつはそう言った。
だから、がんばって、今までどおりでいようと、友人の、幼馴染の、その位置に戻ろうと必死で、今でも泣きそうになりながら、彼のそばに、いられるだけで十分だって、がんばったのに。

何で。今頃になって。

ぎゅ、と布団を握り締めて、歯を食いしばって涙を堪えた。
朝から、泣いたりなんかしたら、目が腫れてしまう。そんな酷い顔、あいつに見せるわけにはいかない。今日も学校だ。三年とか階が違うから、あまり会うこともないけれど。
そこまで考えて、ふと気づいた。
学校?そういえば、今なんじ………
「………うっそ。」
首をめぐらせて見た目覚まし時計は、とっくに一限の開始を告げていて。
やっばい!と大慌てでベッドを飛び出した。


で。
なんでこうなるんだろう…。
ああ神様。私何かしましたか。今日まで一生懸命(いやさぼってたこともあるけど)生活してきたつもりなんですけど。なんで。今日に限って。

ばしゃばしゃと足元で水しぶきが散るけれど、気にはならない。
だってもうすでにびしょ濡れ。
丁度授業が終わる頃から降り始めた雨は、ひどくなるいっぽうだ。走っていると、顔に当たるのが痛い。
それは、前を行く彼も同じで。

腕を引いて走るのは、見間違いようもない健康的に焼けた肌、少し茶色がかった黒髪。
(…すぺいん。)
心の中で小さく、呼んだ。


雨が降り出したって、傘なんて持ってきているような性格ではまったくなく。
「あー…。」
昇降口から空を見上げるが、まったく止む気配はない、というかその勢いはむしろ強くなりつつある。

「ヴェー雨かあ…お姉ちゃんどうする?」
同じクラスの双子の妹の声に、別にどうもしないけど。と呟く。
手段は一つ。強行突破だ。
「お前は日本でも捕まえて入れてもらえ。」
「え、ちょ、お姉ちゃん!?」
引き止める声を聞きながして、雨の中に飛び出す。

すぐに、ずぶぬれになった。服が体にはりつく感覚にげんなりしながら、それでもせめてその時間を少なくしようと、走り出す。足には自信がある。とにかく、走って。お湯をたっぷり沸かしたお風呂に入って、それから。そうだホットチョコレートを飲もう。そう決めて、よし、と走る。

ぬかるみに何度も足をとられそうになりながら、足を必死で動かしていたら、頭の上からばさりと何かがかぶせられた。

「!!」
「阿呆。」

ぼそり、と耳元で言われた言葉に、かっとして言い返そうとして、その前に、彼はぐいと手首をつかんで、走り出していた。引きずられるように、走る。
走りながら、前を見る。前にいる、その人を。
手首をしっかりつかんで離さない、その人を。

「…スペイン!」
「話は後!」
とにかく走れと、その雨の中でも温かい手は、しっかり手首をつかんだまま離さなくて。


「うはー、びしょぬれ。」
とりあえずロマーノ風呂入り、と言われて、いい、私帰るというのにいーからいーからと押し込まれた脱衣所。
「今お湯ためてるからとりあえずあったまりー。」
服持ってくるから服はとりあえず洗濯機なー。ドア越しに聞こえる声。

仕方なく、制服を脱ぎだす。
手先が凍って、うまく動かない。ボタンをはずしながら、自分の体がかなり冷えていることに気がついた。
言われたとおり、服を洗濯機に放り込んで、バスルームのドアを開ける。
勝手知ったるなんとやら。小さな頃はよくこの家で泊まったりしたものだ。
シャワーを出して、頭からかぶる。

「…温かい。」
呟いて、だいぶたまってきたお湯に、つかる。半身浴くらいには、なる。
広がる温かさに、ため息。
落ち着いてきたら、やっと頭の回転がおいついてきた。

「…何この状況。」
昨日、振ったはずの男の家で風呂はいってるって。
「…いや、いやいや。」
振ってない振ってない。だって先に振られたの私じゃない。一年前に。

「…どういう、つもりだったんだろ。」
…一年経って気が変わった?
けどだって、あの時あいつは、たぶん、一生変わらないからって。だから、ごめんなって。
あ。だめ。思い出したら、涙がにじんできた。
…好きだ。振られても、忘れられない。この気持ちは捨てられなかった。スペインが好き。どうしても、変わらなかった。変われなかった。

だから、甘い期待を抱きたくない。好き、なんて言われても。もしもそれが、期待通りではなかったら、私は。

今度こそ、私は。

深く息をついたら、ぴーとお湯がたまった音がした。


逃げんといてな。釘を差すようにそう言われて、スペインの部屋で、座って待つ。
…久しぶりだ。この部屋。
よく来ていたのは、さすがに小学校まで。
最後に来たのは…うわ。うわわ。だめだ、思い出したら。

ぶんぶんと首を振って思い出を追い払って、部屋の中を見回す。…ちょっと、変わった。当たり前か。もう何年も経ってるんだから。
ほかに座るところもなく、ベッドに腰掛けていたら、がちゃん、とドアが開いた。

びくっと顔を上げて、すぐにうつむく。
「お、ちゃんと逃げへんかったな。えらいえらい」
〜〜〜っ服くらいちゃんと着なさいよバカ!
上半身何も着ないまま歩いてきた彼の姿を直視なんかできなくて、視線を床に落とす。
と、視界に入るジーパン。

「ロマーノ、」
低く呼ばれて、胸が詰まった。
「俺な、ロマーノが、」
「っやだっ」
耳を塞いだ。聞きたくない。聞くのが怖い。期待するのが、何より怖い!
「…何で?」
「…うそ、よ、だって…」
「嘘やない!」
怒鳴られて、ぐ、と肩を押された。
思わず目を閉じ、ぼすん、とベッドに倒れ込む。

恐る恐る目を開くと、知らない顔があった。
知らない。こんな男の人の顔した、スペインなんて。
息を飲んで、ただ目をそらすこともできなくて。
まっすぐなオリーブを、見つめ返すしかなくて。
しばらくして、ぼす、と肩に顔が埋まった。

「なあ…どうしたら信じてくれる…?」
弱々しい、声。
それが、本当にへこんだときにしか出さない声だから。
というか、あんな真剣に嘘がつける奴じゃ、ない。知ってる。馬鹿が付くほど正直で、まっすぐで。

「…う」

だからこそ、好きになったんだ。

「嘘じゃない…?ほんと、に?」
「ほんま」
「だ、だって、あんたが言ったのよ、一生妹にしか思えないからって!」
「ロマーノのせいやで」
「は!?」
何にもしてないわよ私は!

「…ロマーノが告白なんかするから、そういう対象としてロマーノのこと見るようになってしもうたんやんか…」
「は、はぁ!?」
何よそれ!
「…ロマーノにとってはもう過去の話かもしれへんけど…」
お願い。もういっぺんチャンスくれへん?
そう、小さく呟く。

「ロマーノが、好き」
じわり、と胸に声が広がった。
まっすぐな声。優しい瞳。
「……け、な…」
「え?」

「過去になんか、できるわけない…っ!」

手で顔を覆った。ぼろぼろ、涙がこぼれる。
「好きなのよ、ばかぁ…っ!」
そう叫んだ。
一年経ったって、どうしようもないくらい溢れる想いを、ずっと抱えてきたんだから

がばっと顔があがった。
「ほんまに!?」
声が出せなくてうなずくと、頬を撫でられた。
見上げたら、近づいてくる顔に、目を閉じた。
触れる、唇。優しい口付け。
「ファーストキス、やんな?」

尋ねられて、口を閉じたまま、首を振った。
横に。

「え、えっえ!嘘!?どこの輩やロマーノのファーストキス奪うなんてそんな不埒な奴は!」
「あんたよ馬鹿ーっ!」
怒鳴り返したら、う、え?と驚いた表情。やっぱり覚えてなかった。この馬鹿。
小学生のころ、お正月に。お屠蘇で酔ったこいつに、キスされたのだ。ここで。
『ろまーのは、おれのおよめさんになるんやでー』
なんて完全なる酔っ払いのこいつに。それからもうここに来れなくなってしまって、その言葉は忘れられなくて大変だったのに!

「…もったいない…」
全然覚えてない…という声に、睨みつける。するとまあええわ。と笑顔!
「何がいいのよ!」
「相手が俺で。」
もしほかの男やったらどうしようと思ったけど、と明るく言われて、山のように言いたいことがあったけれどため息に乗せて霧散させる。いちいち怒鳴ってたら体力が足りない。

「それより、今は目の前のロマーノを堪能したいなぁ」
「たん、た!?」
堪能って何っ!?
真っ赤になって口をぱくぱくさせていたら、かわええ、と額や頬にキスされた。もう、本当に信じられない。甘すぎて、どきどきした。夢に何度も見たような、優しいキス。

「んっ…」
「えっろい声」
「な、何言ってんのよ馬鹿!」
おろおろしながらそう言ったら、ロマーノーと呼ばれた。のばして呼ぶのは、やっかいな頼みごとをするときだ。ひく、と頬を引きつらせる。
「な、何…」
「このまま、やらしーことしてええ?」
「…はっ!?」
「やってもー、ロマーノかわいすぎるんやもん」
なー、ロマーノ。…お願い。
…ひどい。そんな熱っぽく言われて、断れるわけがないのに!
「…わかった」
「は?」
「フランスが言ってた意味。」
「何?」
「…言わない。」
「何で〜?」
口を閉ざしたら、顔のすぐ隣に、手が降りてきた。
「まぁええわ。…聞き出したる。」
なーロマーノ。緑の瞳に、強く見つめられた。動けなく、なる。

「…嫌やったら、本気で逃げろ。」
強い、熱い声。大人の男の人の、声だ。…少し、怖い。
だけど。

「…逃げない。」
「え。」
「逃げ、ない。」

だって、嫌じゃ、ないから。
ちょっと怯えながら、でもまっすぐ見返したら、ロマーノ、と小さく呟いたスペインに、ゆっくりと唇を重ねられた。
じ、とファスナーが下りる音がする。
けど目を開けられ(るはずも)なくてぎゅ、と強く目を閉じる。
「…うわ、素肌にジャージってエロ…。」
「ば…っ!」
かっとなって怒鳴りかけた途端、ぞくん、と背中をしびれが走った。
「…っ!」
ねっとりと、胸を舐めあげられた。
「かわええな。」
何がだ、何が!
何度も何度も舐めあげられる。その感覚がなんだかむずかゆくて、でも逃げないって言った手前逃げられなくて、必死にほかの事を考えて気をそらす。

「か、かわい、って、言った。」
「言ったで?」
「…ちっさいって、こと…?」
妹よりは、小さい。というか、あいつは平均的にみても大きくて、私は、平均的に見て小さい。
だから、ちょっと気にして、はいたんだけど。
「スペイン、も、大きい方がよかった…?」
おずおずと聞いたら、えー…と、ちょっとだけ考えて、呟いた。

「ロマーノがいい。」
「え、」
「小さくても大きくてもどっちでもいいから、ロマーノがいい。…ロマーノやないと嫌や。」
やから。余計なこと考えてんと、感じて。なんて、優しい笑顔で笑うから。
「…っばか、あっ!」
「ん?こっちの方が気持ちええ?」
平然とそんなことを言ったスペインを頭をべしりとはたいてやった。


「…っ、ロマーノ…。」
低くうめいて、ぐ、と一番奥まで、スペインの、が入ったみたい。
「う、う…っ!」
痛いよな、ごめんな。そう謝られて、首を横に振る。痛いのは本当、だけど、でも。
目を開けると、涙でにじんだ視界の向こうに、スペインが見えた。オリーブの瞳が、心配そうにこっちを見ている。
「ロマーノ。」
優しい声が呼ぶ。それがとても、心地良くて。痛いのが少し薄れる、気がして。
「……って、言って。」
そうしたら、大丈夫な気がするから。
そう言ったら、お安い御用や。と小さく微笑まれた。

「好きやで、ロマーノ。」

優しい声。それだけで、ぞくん、と感じてしまって、小さく声を上げる。
「好き、愛してる。世界で一番、大好きやから。」
自身をゆっくりと動かされて、思わず彼の背中にしがみついた。痛み、よりも、強く、感じるそれを、セーブできなくて。

「す、ぺい、あ、あっ、んあっ!」
「誰より好き。愛してるから。」
俺の、ロマーノ。
最初はゆっくりだった動きを激しくされて、耳元で熱く囁かれて、本当に泣きそうになってぎゅ、と目を閉じた。





「忘れとった」
「は?」
顔を上げると、じっと見つめてくる、オリーブの瞳。
「フランスが言ってた〜って、何?」
「あ。」
まだ覚えてたか。そうぼやいた。なー何ー?と聞かれて、仕方ないなあとため息。別に言ってはいけないことではないし。
「スペインが。」
「俺が?」
そう言いながら、抱きしめられた。深く抱き込まれて、俺が、何?なんて甘い声を出すから、かあ、と体が熱くなる。
これで無自覚だなんて、もう本当に!
「…あんたは」
「ん?」
…尋ねながらどこ触ってんだこいつは…!
「悪い男だ、って!」
手の届くところにあった枕をつかんで、顔にたたきつけてやった。
「わっ!…ひどい…。」
「どっちがよ!」
一回振ったくせにとにらみつけたら、それはほんまに謝るから許して?と子犬みたいにしょげた表情。
…っもう!
こんな顔されたら、許すしかなくなるのに。それがわかってるのかわかってないのか。
「…ほんと、悪い男…。」
小さく呟いて、難儀な男に惚れたもんだとため息をついた。

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haru様のリクエストで、「西が♀ロマに告白。裏付きで、シチュは学ヘタか現代で。」でした。

とりあえず親分がタイトル通り悪いやつです…ロマを振るなんて!と思いながら楽しく書きましたすみません…そしてあまりエロくない!

こ、こんな感じでいかがでしょうか?少しでも気に入っていただけたら光栄です。

ありがとうございました!