.

仕事にひと段落つけて、ため息一つ。やれやれ。なんとかシエスタまでには形になった。
伸びをしながら仕事部屋を出て、廊下に出る。
そして、家の中がやけに静かなのに気がついた。

「ん?ロマーノ?」
呼びかけても返事がない。
あれー?と思って、あたりを見渡す。
どっかでかけたんかなー…いやいや。やったら声かけていくやろ。一言でも。うん。庭…にも行ってない、みたいやな。麦藁帽子置きっぱなしやし。今日みたいな日差しの強い日に帽子なしで外出るような教育してへんし。うん。

「ロマーノー?」
寝室にも、おれへんし……どこやろ、と思いながら入ったリビングを見渡す。
「…おれへんよ、な?」
ここも違うか、と部屋を出かけたとき、窓際のソファの向こう側の床に、見覚えのある毛の色が覗いているのに気がついた。
もしかして、と、足音を立てないようにそろそろ、と近づく。
ソファにそっとのぼって、のぞきこんでみれば。

「あーあ…。」
日の当たるフローリングにごろりと寝転がったロマーノの姿。
閉じた目は開かない。すう、と穏やかな寝息が聞こえてくるところから見ると、ちょっと早いシエスタ中、らしい。まったく。この子は心配かけてー…。
こうなるとロマーノは何が起きたって起きない。腹減ったぞちくしょーとか、喉渇いたレモネード、とかでない限り絶対に。ベッドまで運んでやらないと。シエスタするなら寝室で、にして欲しいわ…。

「…でも、ま。」
気持ちはとてもわかる。この辺は木の隙間を通る日差しと、庭から吹き込む風でとても心地がいい。
思わずソファにもたれかかって、息を吐く。…うん。いい。まぶたがいい感じに下りてくる。


「……やば。」
俺まで寝たらだれがロマーノベッドまで運ぶねん。よし。自分に言い聞かせて、起き上がり、ロマーノを抱き上げようと、ソファを降りて窓側に回り込んで。
「……う、わ。」
思わず呟いて、口を押さえて視線をそらした。

ない、それはないでロマーノ…!
なんというかかんというか。一気に眠気なんか吹き飛んだというかええとその。
「暑いのはわかるけど…っ!」
たのむから。胸元のボタンを閉めて欲しい。きわどい。いやもうきわどいどころじゃ、ない。
んでもってかなり短いワンピースの下は素足、ってこら足開くなもー!女の子やろ今はっ!

寝返りをうつロマーノの胸元にタオルをばさりとかけて、とりあえず目をつむって抱き上げる。よし、よし…これだけ近ければ見えないから大丈夫。目を開けて歩き出す。

やってもー…ロマーノするの嫌がるから…生殺し状態やし…
はあ、とため息一つ。
「この小悪魔ー…」
呟いてみる。ん?ちょっと違うか?
思っているとするり、と腕が首に絡んできた。

「ん…」
「ロマーノ?起こしてもた?」
めずらしーなあと思いながら声をかけると、すぺいん、と小さな声が呼んだ。
「何ー?」
「…もっと、ほしい…」
甘い吐息混じりのささやきにぴしっと硬直。
「な、何を…?」
聞くが帰ってくるのはまた寝息で。
何!?これ何!?いじめられてんの俺!ああもうロマーノ…っ!

深く深くため息をついて、ばくばく言う心臓を必死になだめてとりあえずロマーノを落とさないように真剣に寝室に向かった。


戻る

鮎様からのリクエストで「ロマがふとしたときに見せる無意識の色気に気が付いてしまって親分どきどき」でした

ちょっと違いますかね…?ロマが無防備ででもがんばる親分、な感じをめざしたんですが…

こんなですが少しでも気に入っていただけるとうれしいです
ありがとうございました!






















































. 

※これはMy Lady ver.ロマーノの五日目の続きです。よかったらそちらもどうぞ



「ロマーノ、さあ」
「なんだよ。」
スペインの膝を椅子にしてくつろいでいたら、後ろから呼ばれ、振り返ると、何やら言いづらそうな表情。
「…何」
「やー…やっぱやめとく」
「何なんだよ!」
気になるだろうがちくしょーと怒鳴ると、じゃあ言うけど。となんだかむっとしたような表情。…何なんだ。

「…抱き留められた時、一瞬ドイツに見とれたやろ。」
「…っ、な、なに言って…!」
一瞬答えるのが遅れてしまった。
腰を支えて、大丈夫か、と尋ねてくる声にどきっとしてしまった、というのは…悔しくて仕方がないが、本当だ。だけど、はいそうですとも言えるわけもないし。なんとかそう言い返したけど。スペインの顔は不機嫌そのもの、に変わって。

「どもった!やっぱり図星なんやな!」
ロマーノの浮気者、ってそこまで言われないといけないことか!?だいたい、そう、だいたい!
「だいたいおまえが近くにいないのが悪いんだろーが!」
そう膝から降りて怒鳴ると、やってイタちゃんとしゃべっとったもん!ってああもう!それが余計に腹立つんだよ!

「うるせー!他の女見てんな馬鹿!俺だけ見てればいいだろ!」
「見てへんかったしロマーノしか!」
かっとなって怒鳴ったセリフに、言い返された言葉に、理解が追いつかなくては?と変な声が出た。


「ロマーノしか見てへんかった。…イタちゃんとしゃべってたのも、ロマーノのことやし。」
真剣そのものの瞳。言い聞かせるようにそう言われて、ぱち、と瞬く。俺ロマーノとのデート中に他の子見てたことなんかないで!ってえらそーに言う、顔をぽかんと眺める。

「ロマーノも、俺だけ見てて?」
「…それじゃころぶだろーが…」
よく働かない頭でそう、何か違う答えを返すと、それは俺が受け止める。と自信たっぷりに言われた。

「やからロマーノ。あんまりさきに行ったりせんといて?」
手の届く範囲にいてくれたら絶対助けるから。なんて。頬に触れながら真剣に言うな、そのまっすぐなオリーブから目が離せなくなる!

「…うるせー馬鹿…おまえが、俺についてくればいいだけだろうが、ちくしょー…」
なんとか目をそらして呟いたら、手加減はしてな〜?と頭を撫でられた。
「ロマーノ守る役、誰にも譲る気ないからな。ドイツにも、イタちゃんにだって。」だから、そばにおって。ロマーノしか見てへんけど、遠くより近くの方がやっぱええし。抱きしめてそんなことを言うから、何にも言い返せなくなった。


だから。
もうおまえしか見えてないのはこっちだって一緒だ。
っていうのは、言えないから仕方ない、ということにして、その大きな背中にそっと腕を回した。


戻る


みかん様からのリクエストで「My Ladyのver.ロマーノの5日目昼のWデートで、実は独に嫉妬してた西」でした

喧嘩して仲直り、とかの予定だったのですが思いのほか甘く…あれ…?

こんなですが、少しでも気に入っていただけると嬉しいです。

ありがとうございました!