※ロマが先天性女体化なお話ですので苦手な方はご注意ください いい天気だ。そう空を眺めて思う。 突き抜けるような青い空に白い雲。それに、鮮やかな店の屋根の色が映える。 こんな日は家にこもっているなんてもったいない。と、自分にしてはかなり早く、約束の時間5分すぎくらいには待ち合わせ場所が目の前だった。 ロマーノまだ来てへんかも。と思いながら、ゆっくり歩く。 「ロマーノ来るの遅いからなあ…。」 自分のことは棚に上げて、しゃーないなあ俺のかわいい子分は、とそう呟いて、笑う。 彼女が自分の元から離れて独立したのはもうずいぶん前のこと。 妹と一緒に、ではあるが、イタリアという国としてしっかりやっていっているのは知っているけれど、彼女はやっぱり俺の小さなかわいい子分のままだ。 言葉遣いが悪くて素直じゃなくて。けれど本当は誰より優しくて綺麗な、自慢の子分。 今日は、この間会議の時にパエリア食べたいとロマーノが言ったから、よっしゃいつでも作ったる!と、待ち合わせて買い物して家でパエリアパーティだ。こう、なんでもないときにふっと頼ってくれたりするととてもうれしい。かわいくて仕方がない。撫で回してうりうりしてぎゅーって抱きしめたい。久しぶりにスペインのパエリア食べたいな、なんて。かわええええ!と抱きついたら離れろちくしょーが!と頭突きされたが。 ロマーノはよく食べるからなあ。家の食材は一通りチェックしてきたけれど、あれもこれもといろいろ食材を買わされそうだと、一緒にくらしていたころを思い出して笑った。 そうしていると、もう待ち合わせの公園の前を通り過ぎていた。おっと、と逆方向を向いて公園の入り口をくぐる。 すると、触るなちくしょーが!と怒鳴り声。よく知る声に、あーあ、と思いながら視線を向ける。 彼女は気難しいからたまにケンカを起こす。…でもまあそこそこ強いから。無茶をしていない限り自分が手を出すことは少ない。 けれど、今日は違った。 相手は一人。…ケンカ、じゃないみたいだ。ナンパか。そりゃロマーノかわええし。声をかけられるのはよくあること。うちの家の習慣でもあるし。 違うのは、ロマーノの対応だ。 いつもならしつこくても蹴り飛ばしたりして終わりなのに、どうしてそれをしないんだろう。 ふわり、とかわいらしいチュニックが後退りするロマーノにあわせて揺れる。 とりあえず嫌がっているのだから助けなければ、と声をかける。 はっとこっちを見る視線。手を振れば、ほう、とその表情が泣きそうに緩んで。 …あれ?今。一瞬。 考えていると、ロマーノが走ってきた。はっとして歩き出す。 全速力で走ってきた彼女は、息を切らせて、少し距離の離れたところでスピードを弱めて。 ふつうに挨拶するためにおはよう、とそう笑おうとした体に、衝撃。 「…っ遅い!」 ばふ、と全身でアタックされて、目を白黒させる。 ぎゅう、と背中に回された腕に締め付けられた。胸に埋められる顔。 …あれ、あれ? 知っていたはずだ。この体が小さいことは。だってもっと、本当にちみっとしていたころから知っているし。 知っていた、はずだ。腕の細さも、華奢な体つきも。けれど、そのわりに柔らかい肌の感触、も。よく食べるのに太らんなって言って、怒られたことだって、あるのに。 知っていたはずのことが、何だか鼓動を早くする。口を開けて閉めて、なんとか名前を呼ぼうと顔を動かして、気付く、甘い香り。優しい、花のような、香水の香り。ざわり。胸が、ざわめく。 ずっと子供だと思っていたのに。 ああ、この子は、女の子なんだと。 なんだか、改めて思い知らされたような気が、した。 「…どうかした?」 何も言わない俺を不審に思ったのか、ロマーノが見上げてきた。 その少し潤んだ瞳の上目遣いに、くら、と意識が揺れる。 「…ロマーノ、」 思わず、掠れた声で呼ぶ。何、すぐに返って来る、小さな返事。柔らかい声。…不安げに揺れる声にまた、鼓動が跳ねる。 「好きや。」 ぽろ、と口から零れ落ちた言葉が、すとん、と胸に落ちた。 ああ、そうか。そうだったんだ。家族愛とごっちゃになって見えなくなっていたけれど俺は。 ロマーノが、好き、だったんだ。 そう一人納得していると、顔を一瞬で真っ赤にさせたロマーノに、何いきなり言ってんの馬鹿!と鳩尾を綺麗に捉えたストレートをお見舞いされてしまった。 私なんかずっと好きだったわよ、と素直じゃないその口から聞き出すことに成功するのは、一週間も後のこと。 戻る 砂斗様からのリクエストで「ロマ先天性♀で西がロマを初めて女の子だと意識する話」でした。 独立してからが初めてって遅いかなと思ったのですが…親分なので… こんな感じですが少しでも気に入っていただけるとうれしいです。 ありがとうございました! . 「ごめん!ごめんなさい!もうほんま謝るから!やからロマーノ〜…。」 スペインがロマーノの部屋の前でドアを叩いている。 …こんな光景、この家では日常だ。またなんか、お母さん怒らせたんでしょ、そやろなー。そう 話して、兄妹たちは巻き込まれるのはごめんだと外へ遊びにいってしまうのも。 というわけで味方なしにロマーノを説得しないといけない(自業自得)スペインは、半泣きでもう 出てきて〜、と何十回目かのお願いをした。…応答なし。これは不貞寝してしまっているのかもしれ ない。そうなると本当に出てこない。へたすると明日まで。…それは避けたい。食事中ちくちく子供 たちにいじめられるのは、あまり居心地のいいものではない。 「俺が悪かった、何でもするからお願い!」 そう言ったら、ばん、と勢いよくドアが開いた。 目の前、本当に目と鼻の先を通り過ぎていったドアに一瞬固まって、その向こうに見えた不敵な 笑みに、ぱちぱち、と瞬く。 「言ったな。」 びし、と目の前に指をつきつけられ、は、え?と声を上げる。 「言ったな、今。『何でもする』って。」 …ああ、うん。言った。 「言った。」 「男に二言はないな?」 「ない!」 勢いよくうなずくと、楽しそうな笑顔。 「よし。」 じゃあ今日一日、俺の言うこと全部聞けよ?なんて。 …そんな勝ち誇った可愛い笑顔で言われたら、そんな約束してなくたって言うこと聞くのは間違 いないのに! 一時間後、おしゃれしたロマーノと街へ出る。 …なんか買わせる気だろうか……あまり高くないものだといいなあ… ヒールの高い靴は、ちょっと心配になるからやめて欲しいのだけど、似合ってるから、まあ俺が 気をつけてあげればいいか、と何も言わないでおいた。 ふわり。春らしい色の、チュニックが揺れる。 …かわええのはほんまにかわええんやけど…。 これが悪魔、とならないことを祈りながら、ゆっくりと街を歩く。 鼻歌が聞こえてきて、ぱち、と瞬いた。…機嫌がいいようだ。とても。 「…それで?何屋さんにいきたいん?」 おそるおそる、聞いてみると、別に?と振り返らないまま返って来た。 「へ。」 「だって春ものは買ったし。夏のはイザベルと買いに行く約束してるし。…別に靴とかアクセサ リーとか欲しいわけじゃないし。」 そういいながら、ショーウィンドウをのぞきこんで、今年この色はやりかーと呟く。 首を傾げるその仕草が可愛い。 「…えっと、じゃあ…?」 俺はなんで連れ出されたん?と聞こうとしたら、ほら、おいてくぞー!といきなり走り出した。 「ちょ、ま、待ってやロマーノ!こけるから絶対!」 大慌てで追いかけて、案の定バランス崩したところを間一髪抱き寄せた。 くるくるとかき混ぜて、コーヒーを口に運ぶ。…おいしい。ここの店は初めて来たけど。ロマー ノのおすすめはハズレないよなあとしみじみ思う。 そのロマーノは、タルトを口に運んでいる。…かわええ子と甘いもんって最高の組み合わせやな あ…。 「…なんだよ。」 「へ?」 「ずっとこっち見てるだろ。」 「かわええなあって。」 「…おまえそればっかりだよな。」 ため息つかんといてや〜…本気でそう思ってるんやから…。 けど、こんな風に二人ででかけるのも久しぶりかもしれない。日常の買い物とかは、そりゃあ行 くけど、たいがい子供たちも一緒で、こんな、まるでデートみたいな。 ……デートみたいな? あれ、と思ってロマーノをみる。 楽しそうな笑顔。…別に特別なにか買ったわけでもないのに、その表情はうきうきしていて。 ……そっか、そういうこと、か。 「ロマーノ、他にどっか行きたいとこある?」 「え、…いや、別にない…。」 きょとん、とした顔に、よし!と立ち上がって。 「じゃあ、俺の行きたいとこ行っていい?」 笑って告げると、こくん、とうなずいた。 訪れたのは、海辺の公園。…最近できたところだ。 夕焼け色に染まった海が、とても綺麗で、眺めのいい新名所。 「…へえ…こんなとこあったんだな…。」 「俺もこないだ見つけてん。ええとこやろ?」 「そうだな。」 手すりから身を乗り出して、太陽色に染まった海を見つめる彼女。…こういうロマンチックなと こ好きやんなあ…そんなとこも可愛いんやけど。 「…綺麗だな。」 「デートの最後には、もってこい、やろ?」 わざとらしく言ってやると、はっとこっちを振り返った。 夕日の中でもわかる、わかりやすくトマト色に染まった顔に、ああ、やっぱりなあ、と笑う。 ロマーノは、別にウィンドウショッピングがしたかったわけではなく。…お茶を飲みたかったわ けでもなく。じゃあ、何がしたかったって。 ……ただ単に、二人きりで出かけたかっただけなのだ。俺とデート、をしたかっただけで。 ぱくぱく、と口を開け閉めするトマトみたいなロマーノに、かわええなあとによによしてしまう 。 「…っ馬鹿、こんなときだけ勘いいとか…」 「ふふん。」 「いばるな、このやろー…。」 あーもうちくしょ、予定外だ…そっぽを向いて、そんな風につぶやくロマーノを、後ろから抱き しめる。 「ロマーノ。…言うたらええやんか。したいなら、デートしたいって。」 「……言えたら苦労しねーよ、ちくしょ…。」 馬鹿、と呟かれて、笑う。そうやなあ…ロマーノが素直になる、なんて滅多にないことやけど。 その素直じゃない態度に、辟易することもよくあることだけど。 …でも。 「楽しかった?」 こくん、と小さくうなずく、彼女の可愛さがあったら、もう。…何でもしてあげたくなってしま うのだ。 「また来ような、ロマーノ。」 そう言って、可愛らしい奥さんの耳たぶに、キスをした。 戻る いちり様からのリクエストで、「ほのぼのだけどいちゃいちゃなかんじ」でした ほのぼのいちゃいちゃ…いちゃいちゃが強すぎた気もする…!でも西ロマ夫婦は基本こんなんだ と思います こんなですが、気に入っていただけるとうれしいです。 ありがとうございました! |