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ふとパーティー会場を見回して、バルコニーに一人でいるイタリア兄の姿に気がついた。
一人でいるのは、別に珍しくはない。ほかにも、一人で酒飲んでたりするやつらはたくさんいる。
それでも気になったのはおそらく、その顔色が優れない様に見えたからだろう。

「どうかしたのか?」
声をかけると、何か用か、ジャガイモ野郎と不機嫌な声。
けれど、それ以外に何も続かない(手とか足とか暴言とか)から、やはり変だ、と顔をのぞき込む。
イタリアより少し焼けた色のはずの肌が、白っぽく見える。
「何だよ!」
「どこか具合でも悪いのか?」
蒼白だぞ、と言えば、何故かより不機嫌そうな顔。
「ほっとけ」
ぷい、とそっぽを向いてしまう彼にため息一つ。

「あのな…知り合いが具合悪そうにしているのを放っておけるわけがないだろう」
水を取ってきてやろうと足を踏み出すと、別に大したこと、ねーよ、と小さな声。
「ただの…寝不足だ。」
ぶすっとして、それでも返ってきた返事にそうか。と呟く。
「水は?」
「いらね。」
「なら、部屋に行くか?抜け出しても問題ないだろう。」
もうパーティーも終盤。そそくさと部屋に退却したのもいるはずだ。
ロマーノが小さくうなずいたのを見て、口を開こうとしたら、背中に衝撃!

「うわ!?」
「ダメー!ドイツも兄ちゃんも大好きだけどそれはダメー!」
うわーん!と泣きながらぎゅうぎゅうとしがみついてくるのは他でもないイタリアで、何だ、何事だ、と瞬く。

「何だイタリア!」
「ドイツが兄ちゃん口説いてた!浮気だ〜!」
「はあ!?」
何がどうなったらそうなるんだ、一体。

「だって、部屋に行こうって〜」
「それはこいつが具合悪そうにしてたからで…」
「何やロマーノ。やっぱりしんどくなったん?」
突然割って入ってきた声に、振り返る。
やから部屋居ときって言うたやろ?そう言いながら寄ってきたスペインがロマーノの頭を撫でた。
「っうるせー!元はといえばおまえのせいだろーがっ!」
ぎゃあ!と怒鳴って、ロマーノはスペインに頭突き!

「痛っ!」
…本気で痛そうだ。けれど、された後でふらついたロマーノを支えられるあたりは、さすがというかなんというか。
「っ、お、おまえがさっさと終わらせてりゃあ…」
「やって久しぶりやから、つい」
「ついじゃねー!」
怒鳴って、自分の頭に響いたらしい。眉をしかめたロマーノを、スペインが抱き上げる。

「じゃあ、とりあえずこの子部屋に寝かせて来るわ〜」
「兄ちゃん大丈夫?」
「大したことない。」
イタリアの言葉にそう返事をしたロマーノは、それでもかなりつらかったらしい。抱き上げられていることには何も言わず、そのままスペインに運ばれていった。


「…で?」
見下ろすと、ぎく、とイタリアの体が震えた。
「誰が、浮気だって?」
「え、えへへ?」
笑って誤魔化そうとしたって、そうはいかないぞ、イタリア?


さあ、どうやって思い知らせてやろうと考えながら、逃げようとした彼を捕まえ、片手で担ぎ上げた。



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菓子様からのリクエストで「独に優しくされて悔しいロマとそれをみてしまう西と伊」でした

リクエストからだいぶ離れてしまったような気がしてます…すみません…でも伊に浮気だって言わせるのが楽しかったです


こんなですが、少しでも気に入っていただけると嬉しいです
ありがとうございました!

























































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「盗聴。」
ぼそりと呟いたドイツの声。
じゃあお前気になんないのかよとひそひそ言い返されると、う。と黙る。
結局は気になるらしい。
廊下の先、会議場の待合室で楽しげに話をしているのは、…かわいらしい恋人達。
そして、その会話の内容は。

「ね、恋人の行動とか態度で、苦手なこととか、ないの?」
……気にならないはずもなく。

フランス、スペイン、あたりはまあいいとして、オーストリアまでいるのはどうかと思うが。
「イギリス、ちょっとつめろ、見えない。」
…一緒にいる俺も同罪か。





「…ハグ、ですね。」
「ええっ!日本ハグ嫌いなの!?」
イタリアの声。そ、そうなのか?と知らなかった自分にショックを受ける。
「嫌いというか、なんというか…。くすぐったい、です。」
「ん?」
くすぐったい…?
「たぶん慢性肩こりのせいだと思うんですけど。」

神経がびりびりしているせいか、触られるとくすぐったくて仕方が無いのだという。
だから、彼に腰を抱かれたり、肩に手を回されるのが苦手だと。
「嫌なの?」
「嫌、じゃないんですが、ずっとそうしてられるのがちょっと…。」

そう困ったように言う彼の姿をこっそり。覗いてしまったから。



日本の隣を歩くのは、とても。楽しいことではあるんだけど。さて。
肩や腰に手を、回さないで恋人らしく、ってどうするべきなんだろう?
うーん。と考え込んでいると、ちら、とこっちをうかがう目に気づいた。
不安げなそれが、何かあったんでしょうか、でも、聞いてもし違ったら、といろいろと悩んでいるものだというのはすぐにわかって。

…恋人を不安にさせちゃいけないな。うん。思って、けど、肩とかに手回しちゃいけないんだろ?
あとは往来の真ん中でキスっていうのも…ないな。うん。怒られそうだ。
ちょっと怒った日本は見てみたい気がしたけれど、デートのときに怒らせたいわけじゃ、ないし。
さてどうしたものか。思っていると。
こん、と手が、触れた。

あ。
気づいて、その手を握る。ぎゅ、と指を絡めるように。
「!」
「…嫌か?」
ぽん、と赤くなった日本に尋ねると、あ、だとかう。だとかしばらく呟いてから、首を横に振ってくれた。
ほっとして、その手をしっかりと握る。
そうすると、きゅ、と握り返された。その力は恥ずかしそうによわよわしくて、でもとても、甘美なもの、で。

「…イギリスさん。」
「ん、ん?」
「…家まで、ずっと。」

このままでお願いします。なんて小声でのお願いも聞けてしまったので、大満足だった。



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問:恋人の苦手なところはどこですか?



「苦手…って言っていいのかわかんないけど。」
頬を引っ掻いて話しだしたのは、イタリアだ。
思わず身を乗り出すとこらばか、ばれる、と引き戻された。

「んー…あの、ね。…怒るのが、さ。」
「へ?」
「料理中とかに、棚の上からもの取ろうとしたりしたら、怒るんだ。」
訓練のときみたいに。そう言う声に、つつ、とその場にいたフランスやらスペインやらの視線が集まってくる。
「何それ!恋人に?」
「や、あの、前に同じことして、棚の上のもの全部ひっくり返したことあったから、心配してくれてるのはわかってるんだけど。」

そう、あのとき。
倒れたイタリアのすぐ横に重い鍋が落ちているのを見たときは本当に、心臓が止まるかと思ったんだ。
「だから、心配してくれてるのはわかる、んだけど。」
やっぱ怖いんだよねーと。言うイタリアの声が沈んでいるのに、気づいてしまったから。




「…ドイツ?」
「なんだ。」
「えっと、まだ時間かかるけど。」
「…ああ。」
「…?」

首を傾げながらも、イタリアは料理に戻る。
じっとその後ろ姿を見ながら、ただ立っていた。
怒るのがダメなら、手伝ってやればいい。
今日はジャガイモとベーコンのパスタらしい。ならきっと、ザルやボールを取ろうとするだろう。
予想し、方法を考え、戦略を練る。そうすれば、きっと彼より早く、動けるはず。
そう思っていたらやっぱり予想通り、上に手を伸ばした彼より先に、それらを取った。

「これか?」
尋ねると、まんまるの目がこっちを見ていて。
「……ありがと。」
「いや。」
それだけ会話をかわして、また、後ろからながめて、待つ。次に手を伸ばすのは食器だろうな。そう思いながら。
「…ドイツ。」
「ん?」
振り返ったイタリアは、少し困ったようにんー。と言ってから、笑った。

「あのさ、そこにいてないで、さ。一緒に料理、しようよ。」
棚から物出してほしいときは言うからさ。ね?
その言葉にちょっとだけ考えてからああ。と呟いて、彼の隣に立つ。
「何する?」
「じゃあホウレンソウ切っておいて、スープにするから。」
わかった、と答えて、刻んでいくと、くすくすと楽しそうに笑う声。

「かあわいい。」
「ん?何か言ったか?」
「なんでもない。あ。ドイツ、お皿取って、青いの。」
「わかった。」
答えて、これで彼を守れると思いながら、手を伸ばした。




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問:恋人の苦手なところはどこですか?


「あー…料理中に抱きついてくる、かな。」
「うわあ危ない!」
イタちゃんの声。そりゃ危ないな。重なるフランスの声。
まあ、俺も自分が料理してるときやったら危ないなーと思って止めるかも(そんなことはありえへんけど。)

「目離すとすぐつまみ食いするし。」
「ロマーノくんの料理おいしいからねえ。」
うんうん。それにつまみ食いっていうのがええんやって。何であんなにおいしく感じるんやろ?
「それに、怖いんだよ。」
怖い?何が?
「怖い、ですか?」
「…あいつにだと、遠慮なしに暴れちまうから。」
…ほんまに遠慮ないよなあ…。
「普段、だったら…そんな効果ないの、わかってるけど、包丁持ったまんまだと、さ。」
かっとなったときが怖いのだと。彼はそう言って。
自分を心底心配してくれてるのは、よくわかったから。




じい、と見つめる。
先には、あざやかな手並みで料理を仕上げていくロマーノの姿。
楽しいことをしているときが一番、きらきらしているから。
だからこうぎゅーっと、全身全霊でぎゅーっと抱きしめたいほどにかわいいのだけれど、我慢我慢。

その代わりに、その動きを一つも見逃すことのないようにじっと、見つめる。
あっちへこっちへと動くのに合わせて、揺れる髪。
真剣に食材を見つめる、美しい瞳。
今日はきっと、できがいい。楽しげに笑んだ口元。
健康的に焼けた肌が包丁を、鍋を操り、めちゃくちゃおいしそうなにおいをさせて。

「…かーええなあ…。」
テーブルに突っ伏して、それでもロマーノを絶対見逃さないように目は逸らさない。
今度はその指が動いているのが、何でこんな綺麗で細い指なのに、重そうな鍋を操れるんだろう、不思議やなあと考えて。
と。


どん!と目の前に置かれる、大皿。
「お、ま、え、は…!」
「あれ?」
目の前にロマーノの姿。手しか見てなかったから、近づいてきてるのも気づかなかった。…なんだか、怒ってるっぽい。
「ん?できた?」
「まだだよちくしょー!おまえ見るな!」
「へ?」
「穴空きそうなんだよお前の目!」
すっごい気になって料理に集中できないんだよこのやろー!…らしい。
「えー…。邪魔してへんやん…。」
邪魔しないようにって。ただ見てただけ、なのに。
いややー。そう言ったら、かちんときたのか大きく息を吸い込んで。

「エロい目線で見てんなって言ってんだよちくしょー!」
…ふーん。
つまりエロい気分になっちゃった、と。
そう判断して、にんまり笑って、はっと口を抑えたその手をつかんで、その唇がまた悪態をつき始める前にキスをした!



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問:恋人の苦手なところはどこですか?


「うーん…朝。ですかね?」
朝?朝、ねえ…。
「え。もしかしてしつこくねちっこくとか。」
「ちちち違いますよ!」
おお。違うんだ。寝起きのカナってかわいくって仕方ないから、よくしちゃうんだけど。
「…その…。」
「何ですか?」
「…朝、起きたらいないことがある、のが…。」
思わず、息を飲んだ。

「え、それって、」
「や、あの。急に仕事が入ったときとか、なかなか起きなくて、買い物行くときとか、…理由は、わかってるんですけど…。」
どうしても。ダメ、で。
そう言うカナダが、泣きそうな顔をなんとか笑顔にしているのが、わかってしまって。




「って言っても、なあ…。」
起こすの、は忍びないんだけど…。
すやすや眠るカナダ。昨日も無理をさせたから、このまま寝かせておいてやりたい。
なら出て行かなければいいんだけれど、今日の来訪は急だったから、それができるほど冷蔵庫に余裕がない。
それに、恋人には旬でおいしくて新鮮なものを食べさせてあげたいし!
そう思うと、やはり。ここを出て行くしかないわけで。

彼が起きるまでに戻ってこれたらいい。…けれど、それを確約できるわけじゃ、ない。
朝いないのが苦手だと。
その一言は、…俺のせいで出た言葉だ。
置いていかれた。それはきっとまだ。…ずっと、彼の心の中に強く根付いているようで。
取り除けない不安。…それを消し去るには、まだまだ時間がかかるだろう。
息をついて、その髪を撫でる。金色。とても綺麗な、彼の大好きな上質のメープルシロップの色だ。

すう。と穏やかな寝息を立てるカナダ。…起こ、すのかあ…?
そう思うととても、できそうになくて。ため息。
その頭を撫でて、すりよってくる彼にああもうかわいいなあと思いながら、おいしいもの食べさせたいなあとも。思って。
つまりは彼のことが好きで好きで仕方が無いのだけれど。さあ、どうしよう?

「…ん…。」
おいしいものでも食べる夢でも見ているのか、赤い舌がちろ、と出て唇を舐めた。ああ、いいな。キスしたい。…お。

「…ふむ。」
キスで起こすのはありか。うん。だってキスしたいし。
よし、とうきうきと彼の寝顔に顔を寄せ、そのかわいらしい唇を塞いだ。
あー。でもちょっと我慢できないかも。と思いながら、眉を寄せたカナダを抱き寄せて。


…余談だが、この日結局カナダが起きたのは、太陽がかなり高くなってからだったという。



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問:恋人の苦手なところはどこですか?


「んー…ない、けど、なあ……。」
その一言を聞いたときに嘘だとすぐに気づいた。彼女は隠すのが上手だから。

そして、隠したその、苦手、がなんなのかとても気になって。
「…ハンガリーさん。」
「素直になってよ〜。ね?」
日本とイタリアの言葉に、んー。と困ったように笑って。

「…そうだな、強いて、言うなら。」
「はい。」
「…デートのときくらい、私だけ見ててくれたらいいのになって。…苦手、じゃないか。」
その言葉に、周りにいた全員の視線がこっちを見るのがわかる。けれど…私にも、言葉の真意がわからない。
彼女以外の女性を見ていたことなんて一度もないのに…

「オーストリアさんが?」
「そう。私なんかよりずっと夢中なんだもの。」
「……他の女性に?」
怪訝そうなロマーノの言葉にんー。ある意味。と答えるハンガリー。

「どういう意味ですか?」
「ずうっと昔からだけど…"音楽"って恋人に夢中なの。」
そう言われてようやく。彼女の指す意味を、知って。




「あれ。オーストリアさん。」
「何ですか?」
「寄らないんですか?」
彼女が指すのは、楽器店。

「楽譜。とか…。」
いつもなら必ず寄る、けれど。
「…いえ。今日は。」
気になるものは、あるけれど、でも。
「あなたと一緒にいたいので。」
その手をそっと握って、そう笑えば、彼女は目をまん丸にして。
それから、はにかんだように笑うのがとても。かわいらしくて。
ああ。いいな。そう思うのはきっと、彼女がとても好きだから。

「…じゃあ」
ぐい。とつないだ手を引かれ、つまづきかけながらついて行くと、ハンガリーが手をかけるのは楽器店のドア。
「ハンガリー?」
「私が行きたいので、ついてきてください。」

私が好きなのは、音楽好きなとこも含めたオーストリアさん全部、なんですから!

恥ずかしそうに頬を染めて、けれど晴れ晴れと笑ってみせる彼女に。
また、惚れ直した自分を自覚して、深くため息をついて、笑った。



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鈴野様からのリクエストで「受けずの対談で、攻めの苦手なところ話。」でした

主役が完全にいれかわってしまいましたが…ラブラブな感じがでてるのいいなと思っています


こんなですが、少しでも気に入っていただけたらうれしくです
ありがとうございました!