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「負けても文句言わないでよ〜兄ちゃん!」
「そっちこそ!こてんぱんにしてやるからな!」
ボールを持って言い合いをする兄弟からボールを取り上げ、その前に準備体操!とため息をついた。
サッカーしようよサッカー、ねえドイツ〜、とイタリアが言ってくることはよくある。今回も、スペインとロマーノに先に約束取り付けてからドイツ〜と来て。
仕事もたまたま、会議が延期されてなかったし。サッカーが嫌じゃないんでしょ?と言われれば、確かに嫌いじゃない。
「じゃあいーじゃん!」
そう腕に絡みついてくるイタリアに、わかったわかった、と諦めて。

「まったく…」
「はは。ドイツはいつでも真面目やなあ。」
ええやんちょっとくらい。楽しみなんやって、2人とも。と言うスペインの声に、見れば足の筋を伸ばす彼の姿。
「…後で足が痛い腰が痛いと言い出すのはあいつらだぞ。」
うわーんドイツ〜と頼られるのは、うれしくはあるが、別に泣かせたいわけではないのだから。
「そうやな。…元気なのはええんやけど。」
ロマーノの負けたらぎゃいぎゃい言うやろうなあ。しみじみ言うのを聞きながら、2人が屈伸しているのを眺めて。
「…けどま、やるからには負ける気なんかさらさらないんやけどな!」
俺とロマーノのコンビは最強やで!楽しげに言われて、こっちだって、勝つつもりしかないんだがな、と言い返して笑った。

たん、とボールをリズミカルに蹴るロマーノに並走する。逆側にイタリア。
まだゴールまでは遠い。問題なくとれる、と思った瞬間、ふ、とボールがロマーノごと消えた。
「!?」
一瞬足を止めると、逆隣を走り抜けていく茶髪!
「な、」
「スペイン!」
誰もいない空間に、とん、と軽いパス。するとそこにぴったりあわせたようにスペインが走りこんできて。
「任しとき!」
絶好のポジションに来て、足を振り上げ、思い切り蹴る!
ボールは一直線に、ゴールへ吸い込まれて。
「うっそ…あの距離で入るんだ!?」
ロングシュートを見事に決めたスペインにイタリアがすごーい、と声を上げると、ロマーノは当たり前だろ、とまんざらでもなさそうな顔で言った。
「ロマーノー!決まったで!俺かっこええ!?」
ぶんぶんと手を振るスペイン。…自分で言ったら意味がないというか、かっこわるいと思うんだが…
「は。それくらい俺だってできるんだよ!」
調子にのんな、と言うわりにうれしそうなロマーノ。
「がんばろうね、ドイツ!」
次は絶対ボールとる!とこぶしを突き上げたイタリアが、ボールを取りに走り出した。



「ドイツ!」
呼ばれて、上げられたボールを胸でうけてドリブル。
「行かせるか!」
すかさず追ってくるロマーノに、集中していると、目の前にスペインの姿!
「もらったあ!」
「っ、」
どうするか。一瞬、ためらったが、視界の端に茶色を見た、と思った瞬間にそっちへパスを出す。
「もらいー!」
「あー!」
うまくパスを受けたイタリアが、横を走り抜けて、ゴールにシュート!
ボールは、まっすぐに、ゴールの真ん中へ。
「くそ!」
「わーい、ドイツー!」
手を出してくるイタリアに、よくやったな、と言いながら手をだす。ぱん、と手を打ち合わせるいい音がした。
「次は入れさせないからな!」
悔しそうなロマーノの顔。に、苦笑。
「ほら、だらだらしてんと再開するでー。」
ボールを取りにいったスペインがボールを投げ込めば、すぐに真剣に試合、再開。

夕日に染まった芝生に、転がったサッカーボールを拾い上げる。

「はあ…」
「つかれた〜!もう動けない!」
振り返れば、ぐったりと芝生に寝転がるイタリア兄弟。起きるのもできない、とばかりに疲れ果てた二人とは違うが、俺も息が上がっている。スペインも、膝に手をついてなんとか立っている状態で。

けれど、みんなが笑顔だった。疲れた、が、心地良い爽快さがある。スポーツをして、全力で体を動かすのは、やはりいい。

「結局、どっちが勝ったんだ?」
「えーと…あれ、忘れた!」
何回ゴール入れたっけー?覚えてろよそれくらい、馬鹿弟!えーじゃあ兄ちゃん覚えてるの?………。ほら一緒じゃんかあ!にぎやかに寝ころんだままやりとりをする二人に、小さく苦笑。

どっちが勝ったのか。…本当は覚えていたけれど。…言わない方がいいだろうな、と騒ぎながらも笑顔の二人を見る。ちら、とスペインの方を伺えば、楽しげに口の前に人差し指を立てていて。小さく頷いてみせれば、人懐っこい笑顔。

「よっしゃ!じゃあ、今日はがんばったで賞として親分がうまいもんつくったろ!」
膝をたたいて起きあがったスペインに、パスタ!と兄弟のリクエストが飛んで。
「はいはい。ドイツ、手伝ってもらってもええ?」
「ああ」
「げ、マジかよ」
「こら、兄ちゃん!」

体力は使い果たしたはずなのにまだまだ元気な二人に、今日は寝るまで騒がしいな。と思って、それが意外と嫌に思っていない自分に気づいて、笑った。



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レイン様からのリクエストで「独伊+西ロマで、二人チームに別れてサッカーする話」でした

こんなかんじでしょうか…4人ともサッカーはマジになってやってそうです。結局どっちが勝ったのかは、想像にお任せします

こんなですがすこしでも気に入っていただけるとうれしいです
ありがとうございました!