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「あー!」
大声に、座ろうとしていたカナダさんが驚いて振り向いた。
「な、なんですか?」
ぱたぱたと駆け寄ってくるのはイタリアくんだ。
「キスマーク〜」
ここ、と首元を指されて、かあ、と赤くなる。
「…この馬鹿弟。そういうこといちいち言うんじゃねーよ」
呆れたようなロマーノくんの言葉に、だって気になったんだもん、と返すイタリアくん。
カナダさんは、ハンガリーさんにうながされ、赤い顔のままいすに座って。

「やっぱりフランス兄ちゃんは情熱的だね」
くっきり残ってるもん、と笑うイタリアくんに。カナダさんは首を横に振った。
「いや、あの…僕が、言ってるらしいです…つけてって。」
小さく呟かれた言葉に、らしい?と首を傾げる。

「…覚えて、なくて…」
「ヴェ、フランス兄ちゃんそんなに激しいんだ。」
「いやあの、はげしい…っていうよりは、しつこい、の方が」
「しつこい?」
「…その…僕が、み、乱れてるとこが、みたいらしくて…その…」
先に散々イかされてしまうらしい。
「だからもう…途中から全然覚えてなくて…」
耳まで真っ赤にしたカナダさんの言葉に、へえ!とイタリアくんは目を輝かせた。

「あ…も、すみませんこんな話…」
恥ずかしい、と身を縮こませるカナダに大丈夫ですよ、と思わず頭を撫でる。柔らかい髪がふわふわ当たる。


「大丈夫だよー恥ずかしくないよー。」
楽しそうにイタリアくんは言い、
「兄ちゃんなんてこんないっぱいつけてるし。」
ひょい、とロマーノくんのシャツの襟元を引っ張った。ロマーノくんの首元は、スカーフで隠されてはいるが、赤い鬱血の痕がたくさん散っているのが一目でわかる。
「!何しやがるヴェネチアーノっ!」
「うわすっごい!キスマークだらけ!」

服の下までいっぱいーというイタリアくんに、かっとロマーノくんの顔が真っ赤に染まった。
「っ、これ、は、俺が、わけわかんなくなってる間にスペインが勝手に…!」
つけてしまうのだという。…まあ、ラテン系の性なのかもしれないけれど…
「嫌なら嫌っていわなきゃだめよ?」
ハンガリーさんの声に、う。と黙ってしまった。
「…嫌じゃ、ないんですよね?」
尋ねれば、顔を赤くしたままこくん、とうなずいた。
「……そういうとき、の、スペイン、かっこ、いいし…あかん?って聞かれるけど、断りずらいし、……やじゃ、ないし…。」
「さっきもすぐそこでつけてたよね。」
さらっと言うイタリアくんの声に、さらに赤くなってしまった。
「見てるな馬鹿!」
「だってあんなとこでいちゃいちゃしてたら、って、あ!もしかして俺邪魔しちゃった?」
「っ、」
「昨日の夜も結構聞こえ」
「あーーもうっ!!!うるさい!!そういうおまえだって、」
しかえしとばかりにぐい、とイタリアくんの服の首元を引っ張って。
「わわ!に、兄ちゃ、」
「あ、ああー!てめえなんだよこれっ!!」
服の中をのぞきこんで、ロマーノくんが怒鳴った。
「ヴェ〜…」
「あんのじゃがいも本当にむっつりだな…!」

ぐい、とロマーノくんが引っ張った服の隙間からのぞくイタリアくんの肌は、見事なまでに鬱血だらけ。しかもそれが、服にぎりぎり隠れる範囲だけに散りばめられている。真面目な彼らしい、と小さく笑った。それでもきっと、つけない、という選択肢は頭の中に無かったのだろう。…独占欲の強い人だから。
「…いいじゃんか」
俺つけてもらうの好きだよ、ドイツすごい優しいし、たまに意地悪だけど、でもそれも好きだし、それに気持ちいいし、と、はっきり言えてしまうのも、イタリアくんのいいところなんだろう。…ちょっと恥ずかしいけど。



「それに…うれしいじゃない?ドイツのってしるしみたいで…ねえ、日本?」
「はい?」
いきなり話を振られ、ぱち、と瞬く。
「うれしくない?」
「いや、えと…そもそもキスマーク自体、あまりつけたりは…」

一回どうやっても隠せない位置にされて、怒ったのだ。…それからは。あまりつけたりしていない。
申し訳ないとは思うけれど、と首を傾げると、同じように首を傾げたカナダさんが、もしかして気づいてないんですか?と言った。

「はい?」
「はいこれ」
ハンガリーさんに突然渡されたのは、コンパクト。持っててくださいねと言われ、それを持っていると、鏡を持って後ろに立つ。
「見えます?首の後ろ」
「は、あ…」
見えますけど、何か?言おうとして気づいた。
「、!?えっちょっ!」
慌てて首の後ろを押さえた。…赤い、痕。明らかに、キス、マーク…!!

「み、皆さん知って…!?」
全員がうなずくのを見て、顔が一気に熱くなった。
「な、な…!」
イギリスさぁん!と今いない人に心の中で怒鳴った。後で覚えててくださいよ!もう!
「知ってるんだと思ってた〜」
「…知りませんでしたよ、もう…」
たぶん、寝てる間につけたのだろう。こっそりと。それか。
『日本…』
…この間、一緒に入ったお風呂の中で。…シた、時に…
思い出して頬から火が出そうなほど熱くなる。

本当に…油断も隙もないんですからあの人は…っ
「…でも好きなんでしょ?」
イギリスのことも、イギリスとするのもーって…そんなまっすぐ言われると、うなずきずらいですよイタリアくん…。
あいまいに笑って、それでもうなずくと、いいなあ、と言う声。
「ヴェ、ハンガリーさんキスマークつけられたことないの?」
「あると思う〜?あのオーストリアさんが…」
……納得。

「ただでさえそういうことしてくれるのも少ないのよー…」
まあ増えられても困るんだけどね?頬を染めたハンガリーさんの言葉。…どんな感じなんだろう、想像もできないけれど。
「…嫌なんですか?」
カナダさんの声にそーじゃないんだけど…と困ったように首を傾げてみせる。
「…かっこよすぎて、心臓に悪いというか…」
そうなんだ…なんとなく、わかるかもしれない。よく知ってる昼の顔とは、全然違う表情。自分しか知らない顔。…どきどきするほどかっこいい、から。

「ヴェー…じゃあさ!」
イタリアくんがいいこと思いついた!とにっこり笑った。
「こっちからつけちゃえばいいんだよ〜俺結構するよ!」
「…私が、オーストリアさん、に?」
「うん!」
待ってるだけじゃはじまらないよ〜ドイツもそうだもん。
そう言うイタリアくんに、そうねぇ、と悪戯っぽくハンガリーさんの瞳が輝きだした。
これは一波乱ありそうですねえ。ご愁傷様。思って笑い、私もやってみようかなとこっそり思った。


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くろねこ。様からのリクエストで「えっちの時の夫について皆で話す嫁たち」でした

すみません…あんまりそういう話はしてないんですが…こういうのではダメでしょうか…?

こんなですが、少しでも気に入っていただけると嬉しいです
ありがとうございました!