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イギリスが、日本と結婚した、のは、俺たちにとってみれば、ついこの間のことだ。
昔から仲がいいとは思っていた。二人とも、島国で一人だったから、気があったんだろう。…仲はいいくせに、好きだと言うまで本当に時間がかかったけど。…どうしてお互いに好きなのに言えないとか言うんだろう?不思議で不思議で仕方が無い。

それから、まあイギリスが変なことしたせいで、日本が女の子になって(いやでもあんまり変わらなかった。だってもとから女の子みたいだったし。って本人に言ったらにらまれたけど。)、イギリスと結婚して。
子供ができた、と聞いて見に行ったときは、少し、…なんて言えばいいんだろう。嫉妬?いやそれは違うんだけど。

幼い頃の、俺に対する態度より、もっとずっと優しいイギリスがいて。
こういうの、お父さんになるっていうのか、と思った。…次の会議の時にはもうすでにいつものイギリスで、つまらないと思ったけど。
日本も日本だ。前までだったら、俺が何してもだいたい笑って許してくれたのに、最近は、だめですよアメリカさん、なんて叱られることも多くて。…ママ結構厳しいわよね、と言っていたのは、エリだったっけ。

エリは、会うたびに頭をぐしゃぐしゃってしたくなる。何よやめてよー!と声を上げるのが、何かもうちっこくてかわいいのにイギリスそっくりで、わくわくするから。最近どんどんイギリスに似てきてるよなあ。話し方とか。そんなことできるわけないでしょ!って言うとことか。ヒーローにはヒロインが必要なんだぞ!って言ったら、じゃあ私がなってあげようか?って言ってた小さい頃は本当にかわいかったのに…。
ケイの方は、…たまに、何考えてるかわからない。でも、実は結構茶目っ気のある子で、よく、携帯のカメラで写真撮ってたりするとこに出くわす。秘密ですよ、って笑った顔が、日本そっくりだ!

あそこの家族は、遊びに行けばいきなり来るな迷惑だとか言いながら、それでも楽しそうに笑うから、俺は何度も連絡せずに遊びに行くんだ。サプライズがあった方が、楽しいだろ?

「イギリスー日本ー遊びに来たぞ!」
「またかよおまえは!連絡してから来いって何度言ったら…!」
そう玄関で声をかけたら、ため息ついて現れる、イギリスの姿。
「いいじゃないかイギリスー。お、ケイ!ゲームして遊ぼう!」
「いいですよ。…負けませんから。」
「俺だって特訓してきたんだから負けないぞ!」
「今度は何賭けます?」
「そうだなあ…。」
ケイと一緒に、リビングに向かえば、いらっしゃい、とグリーンティーとお菓子持った日本。
「わお!ダイフクかい?」
菓子に目を輝かせると、苦笑。
「そうですよ。こら。手を洗ってから、です。」
手を伸ばしたら叩かれた。…ちぇ。
「あれ、アメリカさんまた負けに来たの?」
日本の向こうから顔を出すのは、エリ!今度は負けない!と言い返す。
「どうだろ…今どんな感じ?」
「アメリカさんの15戦13敗2引き分け。」
「あ。無理無理。」
「ヒーローに無理なんてないのさ!さあ行こうケイ!」
「はいはい。」
ケイの手を握って走り出せば、暖かい空気に、思わず笑みがこぼれた。




カナダがフランスと結婚したのは、イギリスと日本、より少し後。
俺がカナダと会う前からずっと、ずーっと想っていたのだというから、もうちょっと早く行動すればいいのに、と何度も思った。言った。両方に。そのたび、2人とも困ったように笑うだけで。行動に移すわけでもなく。まったく…似なくていいとこまでそっくりだぞ!

そう思って何度も、2人きりにして閉じ込めたり、(物理的な意味で)背中を押して抱きつかせたりとしてきた甲斐あって、ようやくひっついた2人。
それから、イギリスのあれに巻き込まれて、結婚して、子供が生まれて。

フランスのセクハラみたいな行動が少し落ち着いたのは、いいことじゃないかと思う。迷惑だったし。けど、その代わりところ構わずカナダといちゃいちゃしだすのは、はっきり言おう、邪魔だ。
…カナダはカナダで、まだたまに僕なんか、って愛されてる自信なくしてうじうじしてるし。2人とも子供なんだよまったく!リリーとサラの方がよっぽど大人だ!

リリーとサラは、かわいい。
2人とも女の子だと思っていたら(何で教えてくれなかったんだいって聞いたらカナダは知ってると思ってた、だってさ)、リリーは男の子で。
でも、その冒険好きな性格はとても俺と気があって、たまに連れ立って山登りとか、遺跡探索とか一緒に行く。彼の観察力は本当に驚くほどだ!どうしてフランスは、彼の女の子の服着せたがるんだろう?動きやすい方が楽しいじゃないか。
サラは、もうプロのカメラマン顔負けだ。俺がヒーローとして活躍するときの写真は、全部彼女に撮ってもらうって約束なんだぞ!まかせて、かっっっこいい写真撮ってあげるから!と笑うその笑顔もキュートで。

よく子供たちを連れ出しに訪れる彼らの家は、なんだか、のんびりした時間が流れてていかにもカナダの家って感じだ。…それがちょっと居心地よくもあるんだけど。

「ハロー!リリー起きてるかい?」
「あ、おはようアメリカ。」
「おはようってカナダ…もう昼だぞ?」
相変わらず遅いなあと呆れたら、そう?と首を傾げる。
「フランスは?」
「いるよ。朝っぱらから元気だな。アメリカ。」
キッチンから聞こえる声に、おお、と寄って行く。そうすれば、ほら、とつまめる食べ物を出してくれるのは、昔から変わらない。…子供扱いみたいだけど、フランスの作る料理だけは本当においしい!
「ん!うまい!」
「そりゃよかった。…リリーなら、たぶんサラと庭だぞ。」
「わかった!」
走っていけば、庭に並んで座る二人の姿。
「あ、アメリカさん!」
「はいポーズ!」
いきなり言われて、それでもかっこよくポーズをとれるのもヒーローに大事なことなんだぞ!
かしゃ、という音に、かっこよく撮れたかい?とよっていく。
「ばっちり!」
ぐっと親指を立てるから、また送ってくれよ!と笑う。
「もちろん!それはそうとアメリカさん、こないだのあれ…」
「ああ。スタンドだろう?まかせといてくれよ。すぐ届けるから。」
「きゃあ!アメリカさん大好き!」
かわいい女の子にそう言われて、うれしくないわけがない!
「アメリカさん、準備終わりましたよ〜。」
リュックサックを背負った、ズボンにベスト、双眼鏡を首から下げたリリーに後ろから声をかけられて、よし出発!と拳を突き上げる。
「今日はどこまで行きます?」
「決まってるじゃないか!行ける限りどこまでも!」
言って、二人で笑って、玄関へと向かう。
「あんまり遅くならないようにね〜」
カナダの声にリリーと2人ではあい!と返事をした。
「いってきます!」
「いってきまーす!」
いってらっしゃい、という声に見送られながら、よしどっちが先に着くか競争だ!と走り出した。



まあ結局。みんな、ヒーローの守るべき家族だっていうことには変わりないんだぞ!!


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雪谷様からのリクエストで、「おじさんになってしまった米から見た兄夫婦家族と弟夫婦家族」でした

私の中のイメージでは、どちらの家族においても、米は大きいくせに子供っぽい長男坊です。子供たちと遊んでます。

こんな感じですが、少しでも気に入っていただけたらうれしいです。
ありがとうございました!















































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日本さんっていう国は、とてもおしとやかで清楚、いついかなるときも冷静沈着。
…いやそんないつもそうな国があるわけないということはわかってるんだけど、そういうイメージがあったんだけど…

「…まったくあの人ときたら本当にもう…。」
ぶつぶつと言いながら持参してきた日本酒をぐいぐい飲む姿は、おしとやかとも冷静沈着とも遠い姿で。赤くなった頬、潤んだ瞳。もうだいぶ飲んでいるのがちょっと心配。
「あの…日本さん、あんまり飲むと体に悪いですよ…。」
そう声をかけるのに、まったく聞いてない。…もー…何したの、イギリスさんったら…。
深く、ため息。
そう、こうなった原因は、イギリスさんだった。

玄関のベルが鳴って、はい、と出て行ったら、珍しく日本さんが一人でいて。
どうかしたんですか?そう尋ねると、きっぱりと泊めてください、とそう言ったのだ。
「へ?」
「泊めてください。」
「え、あの、どうか、したんですか…?」
そう尋ねると、いいえ、何もありませんよ、イギリスさんなんかと、とにっこり。
…怒ってる、みたい。ケンカでもしたんだろうか?
「…あー。とりあえず何か食べるか?夕食まだだろ?」
後ろからのフランスさんの声にこっくりうなずいて、現在にいたるというわけだった。

「日本、とりあえず酒はそこまでな」
ひょい、とフランスさんに取り上げられ、残念そうな声を上げたけれど飲みすぎた自覚はあるのか、差し出した水を少しずつ飲み始めて。
「で?泊めるのはいいけど、いつまでだ?」
「もちろんイギリスさんが謝るまでです。」
はっきりと即答だった。

「謝るって…何したんですか?イギリスさん。」
尋ねると、据わった目がつい、とこっちを見た。力のある眼差しに、思わず少し体を引く。
「約束を、破りました。」
「や、やくそく。」
おうむ返しに尋ねると力強いうなずき。

「次の日仕事なら無理させないとか、キスマーク見えるとこにつけないとか。そういう約束です。」
…イギリスさん守れなさそう。そう思って隣を見ると同意見だったのだろうフランスさんと目があった。
「別に、約束自体はいいんですよ、イギリスさんがどういう方かというのはわかってますし。」
いやよくはないんですよ?よくは。キスマークとか普通につけられるとほんとに困るんですから…。そう続く言葉にそうそう困るんだよね、服とか、とうなずいていると、じゃあ何にそんなに怒ってるんだよ?とフランスさんの声。

その一言に日本さんの顔が上がった。
怒りを湛えた目に、別に僕が怒られてるわけじゃないけど怖い、と体をすくめる。

「約束破っても、悪かったっていったら許してもらえると思っているところに腹が立つんです!」

だん、と握った手で机を叩いてわかります!?という日本さん。
「日本、とりあえず落ち着いて…」
フランスさんの声を聞きながら、日本さんの手を両手で握った。
「わかります。ほんとそうですよね!」
「わかっていただけますか!」
輝いた表情にこくんとうなずく。
「フランスさんもそんなんなんですよ!」
「何ですって!男の風上にもおけませんね!」
本当に!とうなずいて、隣をちら、と見やる。居心地悪そうに遠くを見るフランスさん。

「ごめんって。それでその話終わったらもうなかったことにしちゃうんですよね!」
「わかります。」
手をぎゅ、と握られて、ですよねと握り返したところで、じりりりりん、と電話が鳴ってこれ幸いとばかりにフランスさんが席を立った。

「逃げましたね」
「そうですね。」
電話に向かう後ろ姿を見つめていると、でも、そんなとこがあっても好きなんですよね?と言われた。
「それ、そっくりそのままお返ししますよ」
笑って日本さんに言えば、そうなんですよねー、何でなんでしょう。と困った顔。
困った、けれど柔らかい表情に、イギリスさん、この人手放したら絶対だめですよ、と思って。

「おーい、日本。旦那だけど。」
電話をかかげてどうする?と声をかけてくるフランスさんに、日本さんはにっこり笑って、さっさと来い、と伝えてください。と言った。



は、と息を切らしてすぐにやってきたイギリスさんの姿に、日本さんは、す、と背筋を伸ばした。
お邪魔するのも何だから、と部屋を出て、でもちょっと気になるのでこっそり、とドアの隙間からのぞく。
「日本、俺が悪かった」
謝られて、まっすぐ、日本さんはイギリスさんを見た。

「…私が何を怒ってるか。わかってます?」
淡々とした声。う、と一瞬声をつまらせ、イギリスさんは、小さく息をついた。それから、もう一度ごめん、と謝る。
「約束。…しなおしたい。今のままだとどうしても破ってしまうから。」
できない約束なんかしてすまなかった。
真剣な声。…なんだ。ちゃんとわかりあってるんだ。いいな。うらやましい。

「まったく…仕方のない人ですねぇ…。」
そう言う日本さんの声がとても優しかったから、ほんとは、もう怒ってなんていなかったんだろうな、と思った。


二人は、すぐに帰って行った。手繋いで!なんだかんだ言いながら仲いいよなぁ。お互いのことわかりあってるって感じ。
その後ろ姿を見送っていると、えーと、カナダサン、と隣から緊張したような声。

「ごめんなさい。」
「それ、どれに謝ってるんですか?」
ちら、と隣を見上げると、どれ、ってほどたくさんあるんだ?とひきつった笑顔。
「とーぜんですっ!」
ぷい、とそっぽを向いて見せて、ちょっと待って、カナダ!と久しぶりにフランスさんの焦った声を聞いてばれないように小さく笑った。


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けいり様からのリクエストで「英と喧嘩(夜の海賊紳士の無体っぷりに遂に爆発したとか)して泥酔した日が仏加に愚痴って、仏加が英と日を仲直りさせるお話」でした

仲直りさせた、という感じじゃないですが…お互い分かり合ってるから言葉にするのがついおろそかになる英日、とかそういう感じがでてるといいなと思います

こんなですが、少しでも気に入っていただけると嬉しいです
ありがとうございました!