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朝から天気がぐずついていて、ハンガリーさんに用事を頼まれたとき、傘持っていったほうがいいわよって言われた。けど、すぐそこだし、急げば大丈夫ですって答えて、そのままでてきて。

「…ヴェー…傘持ってくればよかった…!」
降りだしてしまった雨の中を走る。シャツがぐっしょり濡れてはりついてくる。やだな、と思って、とりあえず雨宿りしよう、とぱっと目についた家の軒先に飛び込んだ。
「うへー…びしょ濡れだよ…。」
呟いて、膝に手を付いてはああ、とため息。
「…よかったら、使え。」
そう声をかけられて、初めて気付いた。…先客がいたのだ。差し出されたハンカチに、グラッツェ、とその顔を見上げて。


青い瞳と、目があった。


俺は知らない。その瞳の持ち主を、他に。その、綺麗な青は。
「…し、んせい、ローマ…?」
思わず、その名前を呼んだ。

「……イタリア、か?」
目を丸くして呼ばれて、衝動のままに抱きついた。
「うわ!」
「神聖ローマ!」
抱きしめたら、涙が溢れてきた。だって、会えるなんて全然思ってなかった。…神聖ローマだ。間違いなく神聖ローマだ、夢じゃない!
「会いたかったよう…神聖ローマ…っ!!」
ぎゅうう、と抱きしめたら、っわかった、わかったからイタリア!と呼ばれた。
「ヴェ。」
「とりあえず、中に入ろう。…ここは濡れる。」
こくん、とうなずいて、その家の中に入った。
腕を握り締めた手は、離さないまま。


今は使われていない、倉庫のようなそこは、とりあえず雨がしのげればいい、と神聖ローマが言うとおりだったから、気にせずに入った。ちょっとだけ物をどかさせてもらって、使えそうな毛布を引っ張り出してくる。

「…それで、ええと。イタリア。」
聞きたいことがあるんだが。そう言われて、首をかしげる。
「なあに?」
「おまえ……男、なのか?」
おそるおそる、と尋ねられて、うん、そだよ?とこっくりうなずく。
「…はああああ…」
深い、ため息。ど、どうしたの?と首を傾げる。
「…いや…なんでもない…気にするな…」
「?そうなの?」
うなずかれて、そっかぁ、と呟いた。

その腕に抱きついて、抱きしめて、離さないようにしがみつく。
「…イタリア。」
「離さないから。」
だって、離したくない。…離し、たら。…また。
「…ダメ?」
迷惑かなと尋ねたら、いや、と苦笑してくれた。そのままで、いい。声に、泣きそうになる。
…神聖ローマ、だ。だって、ずっと、会いたかった。ずっと、待ってた。もう一回会えるって、信じて、それで…!

ぐず、と鼻をすすったら、泣くな、とそう言われた。
「おまえに泣かれると、どうしていいかわからなくなる…。」
だから、笑ってくれ。…その方が、似合う。
言われて、うれしくて、涙を拭って笑った。少し困ったような笑顔が、そこには、あって。



「そうか…2人とも、元気なんだな。」
「うん!オーストリアさんも、ハンガリーさんも。」
それでね、この間、と話を続けようとして、一瞬息がつまった。
「イタリア?」
「…っくしゅっ」
ぶる、と体を震わせる。…寒い。雨に濡れた服が、冷たくはりついてきて。

「うー…。」
体をさすったら、腕を引き抜こうとするから、ダメ!としがみつく。
「行っちゃやだ!」
「ああいや、そうじゃなくて…イタリア、服を脱げ。」
「ヴェっ!?」
びっくりして見上げると、いや!だから別にやましい意味じゃなくて!濡れた服着てるから体温が下がるんだからとかなんとかかんとか。あ、そっか、シャツが冷たいなら脱げばいいのか、と一端手を離して、シャツの前を解く。

「びっくりしたよ〜、神聖ローマには服着ろ!って怒られたことしかなかったから〜。」
そう素直に言ったら、それはおまえが…とか言ってたけど、よく聞こえなかった。
とりあえず、びっしょびしょのシャツを脱ぐ。
…冷たいのはなくなったけど、寒いのは変わらないなあ…。
くしゅん、ともう一度くしゃみ。
そうしたら、ぐい、と腕を引かれた。
「わわ。」
ぶつかったのは、温かいなにか。…神聖ローマの体だ、とはっと気付く。俺と同じように上を脱いだ体は、俺よりがっしりしてて。

「…ほら。これで、だいぶましだろう?」
「うん!…神聖ローマの体あったかい…。」
擦り寄ったら、体の上から、神聖ローマが脱いだ上着をかけてくれた。その上から毛布をかけ、くるまる。…あったかい。
ぎゅう、と体に抱きつく。本当にあったかい。

それに、どくん、どくん、って、神聖ローマの鼓動が聞こえて、なんだか少しほっとした。
生きてるんだって、そう感じることができるから。
頬を擦り寄せて、その鼓動を感じる。…ちょっと早い?かも。神聖ローマ緊張してるのかな?
顔を上げると、じっとこっちを見下ろす彼と目があった。

どきん、と心臓が、高鳴る。
…神聖ローマ、こんなに綺麗な顔、してたんだ…。

「…イタリア。」
俺と一緒で声変わりした、後の声。低めのそれに、名前を呼ばれると胸がきゅうっとして。
頬を撫でられる。近づいてくる顔に、そうするのが自然に思えて、目を閉じた。




重なる、吐息。唇が、触れて、それでももっと近づいて、頭の後ろに手が回って、探るように唇の中を舐めあげられた。
思わず体を震わすと、一瞬動きが止まったけど、それでも、ゆっくりと入ってくる。
「ん…、ふ、んん…!」
歯の裏側とか、舐められるともうどうしていいかわからなくて、神聖ローマの胸にすがりつく。時折、自分ではどうしようもなく体が震えた。

「…は、あ…。」
唇を離したときにはもう息が上がってて、体に力が全然入らなかった。神聖ローマに完全に預けた体。腰に手を当てて、ゆっくりと押し倒されて、とろん、と彼を見上げた。
「…いい、か?」
…そう、言われても、今から何するかわからない。
「…わかん、ない。けど。でも。」
でも。
神聖ローマだったら、全部、いいよ。
そう囁くと、彼はびっくりした顔をした。
それから、そっと優しく、笑って。
「好きだ、イタリア…」
本当に愛おしそうなその声がうれしくて、僕も好き、と笑った。

ゆっくり、神聖ローマの手が体を撫でていく。…白い、手だ。マシュマロみたいな色。触れるか触れないかを撫でられると、なんだか背中と腰がざわざわした。くすぐったい、のとは少し違う、感覚。
「は、あん…」
息を吐いたら変な声が出た。
それが何かもう自分の声とは思えなくて、色っぽい、大人な、何だか聞いてはいけない感じがして思わず赤面する。
「どうした?」
「ぁ…なんか、変な声、でちゃ…あっ!」
胸の突起を指がかすめたとき、声が跳ね上がった。思わず口を自分でふさぐ。
どきどき、してきた。体が熱い。
「ここ?」
きゅ、とつままれると、体が勝手に跳ねる。
「んん!」
漏れる声が女の子みたいで、口に手を当てたままやだやだと首を横に振る。
「…聞きたい、聞かせて」
「で、も…んっへん…!」
「変じゃないから…」
ゆっくり手を掴まれて、口から離された。俺につかまってて、と言われて、首に手を回してしがみつく。
そうすると、ふ、と湿った息が、胸に当たった。続いて、ぬる、と湿ったざらついたものが突起に触れた。舐められた。そう気づくのに時間はいらなかった。
ぺろぺろと舐められてびくびく体が震える。
「あ、…はっん!し、んせ、ローマ…っ!」
初めての感覚が怖くて呼んだ。大丈夫。優しい声に、でも、と泣きそうに返して。
「腰が…」
「腰が?」
「なんか、変なの…!」
「痛い?」
首を横に振ると、ちょっと腰、上げて、と言われた。そのとおりにしたら、脱がすよ、と言われて、うん、と言ったらズボンを下着ごとずらされて。
「…たってる」
「……!!」
真っ赤になってどうしたらいいのかとおろおろしていたら、ゆる、と掴まれた。
「あっ…!!」
きゅう、としがみつく。自分ではしたことあるけど、それとは全然違ってて!
頭に直接響いてくる刺激に、待ってやだ、と腕をつかんだ。ぼろり、と涙が落ちる。


「どっどうした?」
「こ、こわい…」
焦った声にそう言ったら、少し困った顔をして、それから。少しの間の後、手を、そっと掴んで。
「!」
「…俺も、同じだ。」
触れたそれは、熱くて、ちょっと濡れてて。
「ヴェ、」
「だから、怖くない。」
そう言われて、見上げる。…赤くなった顔。けれど、心配そうに見下ろされて。
こくん、とうなずいた。小さく、笑ってみせる。
それだけで、ほっとした表情になって。

「…触って、いいか?」
うなずいたら、そっと手で触れられた。
「あっ!」
触れるか触れないか、くらいの弱い力ですりあげられて、もっと、強くてだいじょぶ、とねだる。
「そ、うか。」
ぐ、と強めに掴まれて、思わず背筋が反り返る。
痛い?聞かれて、首を横に振る。
「もっと…。」
吐息に乗せてそう言うと、ごく、と唾を飲む音が、聞こえた。
名前を呼ぼうとして、ぐ、と強く扱かれて、頭が真っ白になった。

「や、あああっ!あ、あっ、し、んせ、ろーま、た、すけ…っ!」
しがみついて、いやいやと額を肩にすりつける。
そんなことをしても、飲み込んでくる快楽の波からは逃れられなくて、やあ!と声を上げたら、大丈夫だ、とそう言われた。
ふる、と自身に熱いそれが当たった。びくん、と体を震わせると、彼がは、と息を吐いたのがわかって。
「…っ、一緒、だから。」
一掴みに掴まれて、あ、と声が甲高く上がる。
「イタリア、」
「…いっしょ、なら、平気。」
神聖ローマ、そう呼んで、首を抱き寄せる。重なる、唇。

ゆっくりと、動き出す手に、絡まる舌に、くらくらする。頭で何も考えられなくなる。
「ん、んんんっ!んあ、あ、ダメ、ひあ、んああっ!」
「っ、いた、りあ…っ!」
頬に当たる吐息が熱い。触れ合って擦られる自身が熱い。体が熱い。
「あ、あああっ、し、んせい、ろーま…っ!」
「く…っ!」
激しくなる手の動きに、力の入らない手を、添える。自分で触ると、熱いのが、彼なのか自分なのかわからなくなる。くらくらする。その手ごと、掴む。離さないように。

「ひああっ!あ、や、だめ、も…っ!」
「っ愛してる…!」
声が、聞こえた。
それと同時に、自分と、それから彼が、震えて、熱いものを吐き出したのを感じたのを最後に、気が遠くなった。



「…ヴェ…?」
「あっ!イタちゃん、気がついた?」
その声に、顔を上げると、ハンガリーさんの心配そうな顔が見えた。
声を上げようとすると、それより先に、けほけほ、と咳が出て。
「大丈夫?…風邪だって。しっかり休んで治しなさいってオーストリアさんが。」
そう言われて、うなずく。それより聞きたいことがあった。

ねえ、神聖ローマは?
なのに、声は出てくれなくて。
代わりに出る咳に、おしゃべりは、また後でにしましょう?とそう言われた。

「ずっと寝てたから寝づらいかもしれないけど…。」
…ずっと?じゃあ、あれは。あの神聖ローマは。
そう考えようとするのに、それより先に落ちてくるまぶたが邪魔をする。ああもう、やだよ、ちゃんと、あの子のこと…。手を握ってくれた、感覚が、手のひらに、残ってるのに。なのに…。

「…おやすみ、イタちゃん。」
願わくは、彼が幸せな夢を、見ますように。


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ちょこ様からのリクエストで「少し成長神羅と伊の再会話で初々しい初H」でした

すみません初々し…くないですね…
えっと、夢だったのかどうかは…好きなようにとっていただければ…


こんな話ですが、少しでも気に入っていただけたらうれしいです。
ありがとうございました!