映画見ようよ、とDVDを持ち込んだのはイタリアだ。 俺何回も見たんだけどきっとドイツ泣いちゃうよ、俺は耐性できてるけどって笑ったのもイタリアだ。 ドイツ泣くの見たこと無いな、見たいな。…そう簡単に泣くか。そんなやりとりをして。 ほらほらハンカチ、…いらん。そんな会話をしている間に映画は始まる。 曲が流れ出せば、二人とも黙って画面に向く。 出てくる俳優に、ああ、これは日本の家のものか、とすぐ気づいた。知らない題だということは、日本本人からイタリアに送られたものなのだろう。 そんなことを考えながらストーリーを追っていると、ひっ、と声がした。…別に驚くようなことなど何もない。 怪訝に思ってちら、と隣を見て、ぎょっとした。 「…う…」 顔をくしゃくしゃにしかめたイタリアが、ハンカチを握りしめてぼろぼろ泣いていたのだ。 …まだ始まって五分も経ってないんだが…。 「イタリア、」 「ううっ…へ、へいき…」 どこがだ。止めるか?と尋ねると首を勢いよく横に振るので、ため息をついて、机の上にあったティッシュを彼の手の届く範囲に置いた。 しばらく進むと、きゅ、と床に置いていた手を握られた。すがるようなその力と、隣から絶え間なく聞こえてくるえぐえぐとしゃくりあげる声に、ため息をついてその体を抱き寄せて背中から抱きしめた。 ぼろぼろ泣きながら、それでも視線はテレビから外さないイタリアに、見えているんだろうかと思いながらあやすように頭を撫でた。 そして、エンドロールがようやっと終わって。 「イタリア…」 DVDを止め、いい加減泣きやめ、とその頭を撫でる。 「う…うー…」 最終的に、えぐえぐとしゃくりをあげるイタリアにしがみつかれて動けなくなってしまった。 「ご、ごめ、」 「謝らなくていいから。」 確かに感動的なストーリーではあった。 日本の家のものだというそれはとても緻密で美しくて。 …けれどもう、ほぼ最初から涙をこぼしだすやつが隣にいたら泣けるものも泣けない。 あやす方に労力をとられたため、映画の方は冷静に見れた。 さすが日本、細かい描写が美しいと思いながら、終わってしばらくたったのに未だ泣き止まないイタリアに、ほら、と新しいハンカチを渡す。 「耐性、あるんじゃなかったのか」 「だ、だって、だって…!」 じわあ、とまた涙が溢れてきた。ああもう、とその涙を拭う。 「うう…ドイツ〜…」 「…おまえは何年経っても泣き虫だな。」 初対面の時からそうだった、と思い返していると、そんなことないもん、ってそんなしゃくりあげながら言われてもな…。 「説得力がない。」 「う。…でもほんと、なんだよ。俺泣かなくなったもん。…ドイツの前以外では。」 「なんだそれは…」 それではまるで俺が泣かしているようじゃないか。そうぼやけばそうじゃなくて、と首を横に振る。当たり前だ 。泣かせてるつもりはまったくない。勝手に泣き出すんだ、こいつが。 「なんかね、ドイツのそばにいると涙腺緩んじゃうの…安心するから、かなあ?」 目を真っ赤にさせて見上げてくる視線に、思わず腕を伸ばす。 「ヴェッ」 しっかり抱きしめて、後頭部に手を回して、呟く。 「…いい。」 「ふえ?」 「泣いていいから。…そのかわり。」 俺の前以外で泣くな。そう囁いて、抱き寄せる。…俺だけが見れるならそれで、いい。いつでも、付き合ってやるから。 「…夜中でも?」 「あー…服を着ることとスイスの家を横切らないことを約束できるなら。」 「……ずっと?」 「当たり前だ。」 …ありがと、ドイツ。大好き。擦り寄って言われた言葉に、小さくうなずいて、その愛しい体を抱き寄せた。 戻る うお様のリクエストで「甘々な独伊」でした。 甘く…なりましたかね?甘えた伊な感じで…個人的にキスよりハグが好きです こんな感じですが、少しでも気に入っていただけたらうれしいです。 ありがとうございました! |